第七話
「アリス、焚き火用の枝を拾ってきた、部屋の隅に置いておくよ」
「…レン…ありがとう」
なし崩し的に、アリスとの共同生活が始まってしばらくが経ったが、少しだけ生活の質が上がった。ヒモをやっていただけではない。単純な肉体労働をして一応貢献している。まぁ家事手伝いだ。それにカタコト異世界語も簡単な単語での会話が成立する様になってきた。
生活の質がなぜ上がったかというと、俺が枝拾いと水汲み、畑への水やりを任せてもらったからだ。枝拾いは森の近くまで行かないといけないし、水汲みがとにかく大変だ。桶を二つ持って行ってはいるが、水やり用と生活用水を確保するには二往復は必須だ。
(にしても器用に刺繍するもんだな…多才というか、身分が違うというか…)
アリスは肉体労働を俺に任せたことで、刺繍入りのハンカチを作っている。今はハンカチの角に小さい花を刺繍している。ワンポイントの刺繍を施したハンカチを、近くの村なのか、街なのかで販売しているようだ。
ある日当然居なくなって驚いていたら、銀貨を握りしめて帰ってきたのだ、思考がヒモのそれだが、捨てられたかと思って落胆したのも記憶に新しい。その日に貨幣の順位を教えてもらった。言葉が通じないので確実…ではないが、かなりの確度であっていると思う。
小銅貨が十枚で銅貨、それが十枚で大銅貨になるらしい。ちなみにその上は銀貨、金貨とありこれも十枚ずつ上がっていくみたいだ。小中大と十枚ずつだから覚えやすくて感動した。ちなみにハンカチを指指して価値を聞いたところ、銀貨一枚程の価値があるみたいだ。その他のモノの価値はまだわからない。この前俺も一緒についていきたいとジェスチャーで伝えたところ『ダメ』と一蹴されてしまった。まぁ不審な恰好に言葉も変だから怪しいよな。
(直近の目標はアリスに同行することだな、外も見てみたいし、なにより帰る方法を知りたい)
アリスに色々聞きたい事があるのだが、いかんせん言葉が通じなくて何をどう伝えればいいか分からない。言葉が分かるまで耐えるしかなさそうだ。幸いな事にアリスは時間が空いたら俺に構ってくれる。可愛いアリスは優しさまで備えているのだ。
「アリス、そろそろご飯にしないか?スープとパン温めてくるよ」
もう、お昼時で作業も効率が落ちてくるだろう、『うん』と返事が返ってきたので、悪い提案ではなかったのだろう。俺は一旦外に行き、熾火にさらしていたスープを取りに行った。そうそう、お皿とスプーン、それに椅子も作ったんだ。やはりというかあの家にはアリス一人分の家具しかなかった。こんな場所で一人なんてハードモードだと思う。聞いてみたいが、聞く術がない。
(まずは意思疎通だよなぁ。単語から教えてもらうしかないか。)
そう思いながら、二人分のスープとパンを持って帰路についた。アリスは既に食べる準備は完了しましたと言わんばかりの顔でスタンバイしている。お互い少し慣れてきたのか色んな表情がみれて嬉しい。
「レン、ありがとう」
「どういたしまして、さ、食べよう。いただきます。」
そうだ、最後に俺、若返っているみたいなんだよね。水汲みにいった時に桶に反射した自分の顔で分かった。なぜかは分からないが十五歳くらいまで若くなっている気がする。重労働に耐える体になったことはありがたい。なぜ?どうして?と思わなくもないが、正直今はやる事が多くて若返った事に関しての優先度はかなり低い。今やることは、アリスと一緒にご飯を食べて、この後も頑張る事だ。




