第五話
「……イテテ……知らない天井だ」
そう、ありきたりな事を呟いてみる。身体の状態を確認しながら、周りを観察する。
身体は都合よく治癒してたりはしないらしい、情けなく倒れた時のまま、ボロボロで汚い。しかし森の中で生きてきた証だ。
「整理されてるというか、質素だな…というか俺ベッドじゃなくて床に転がされてたのか…」
この空間は日本でいうところで、恐らく十畳程の広さだろうか、ベッドに机。本当に必要最低限といった装いだ。
「あの子……銀髪の女の子はどこだ?状況からして助けてくれたのか」
もしそうなら五体投地での醜態をさらした心優しき人である。
(とにかく人もいないし外に出てみるか)
そう思い立ち上がろうとしたが、相棒の杖がない…周りを見回すが、無い。仕方なく己の力で立ち上がり、あまり出来の良くない木の扉を押し開けて外にでる。
外にでた瞬間に全身に光を浴びる。森の中では陰鬱な空気ばかり吸っていたからか、体が日光で喜んでいるのがわかる。家の周りは簡素だが、木の柵で囲われていて、小さな畑と焚き火をする場所があるのが伺える。それに玄関まで二本の線が続いている。
(あぁきっと引きずってここまで連れてきてくれたのか…だから床に…)
ふと振り返ると、家というにはお粗末な四角い形の木造小屋があった。
「ボロボロだな、ちょうどプレハブぐらいか?」
少し失礼な物言いかもしれないが、事実ボロボロである。雨風を防ぐ最低限の強度はありそうだ。木の上に比べればマシだろう。
「畑でも見て待ってようかな」
焚き火後ではなく、畑に足が伸びるのは食欲のせいだろうか。
「昴昴◎莨!」
家の裏手からそう驚きのような強い語気の言葉が聞こえてきた。振り返るとそこには銀髪のあの子が立っていた。150cm辺りだろうか?その容姿は己より20cm程低く、華奢な手足はスラっと伸びている。髪は光を反射するほど美しい銀髪で、その陶器の様な白い肌も相まって、幻想的な美しさである。
(まつ毛も長いし、目もぱっちりで完璧とはこういう事を言うんだろうな。胸は巨乳ではないけど、片手からはこぼれる程の大きさの美乳だ)
そんな感想を抱きつつも、最初にかける言葉は決めていた。
「た、助けてくれてありがとう。俺の名前は『滝沢 蓮』本当に感謝してる。」
そういって深々と頭を下げた。彼女から返答はないが矢継ぎ早に質問をする。
「ここはどこだ?……あぁそうだその前に君の名前は?」
数秒待ってみたが、返答はなくこちらを上から下まで観察するようにみているだけだ。
(沈黙がつらい……)
そんなに警戒…するか。そりゃ喪服でボロボロの不審者だもんな。ただ彼女も容姿に見合わない格好の様に見える。麻だろうか、やや濃い目の茶色いワンピースを薄汚れた白いエプロンでくくっている。ボロボロの家には合っている服装だろうが、彼女の容姿からはかけ離れすぎて違和感を覚える。
(彼女が何も返事をしてくれないから、お互い観察タイムだ…)
そうして二分ほど時間が過ぎたころ、彼女が意を決した顔で声をかけた。
「昴◎昴A莨※」
(…やっぱりわかんねぇ!聞いたことない言語だ。やっぱり異世界なのか?!)
彼女の声は透き通っていて、耳に優しく入ってくる耳心地のいい音だった。しかしながら、その言語はこれから困難であることを確定させたものでもあった。




