第二話
「寝た気がしない…」
そういってスマホで手早く時間を確認した。もう正午である。
「今日は……水を探さないと死んでしまう…」
体力を消耗するとわかっていても、独り言が自分を保ってくれる。
寝床から降りる前に、しっかりと足元を確認して降りる
「イテテ、靴擦れか、そうか葬儀の後だもんな」
革靴で何時間も森の中を歩き回ったのだ、きっとアキレス健あたりはひどい有様だろう。歩くたびにひどく痛むが、それよりも水が最優先だ。こちらは痛みどころではない、生死がかかっている。
道中では相棒を杖替わりにして、水辺を探すことにする。疲れで自然と視線が下がるおかげか、先日同様木の実は集める事ができた。
ポケットの中はそこそこ充実している。食べられるかは不明だが。
「早く水を飲みたい…寝たい…」
生存に必要なものが言葉として滲みでたその時。
――カサカサ、ピチャピチャピチャ
何かが動いた音がした。自然としゃがみ込み最大限に息を殺して、景色と同化するように努力する。
必死に耳を傾けるが、心臓の音が邪魔をして何も聞こえない。
「ハッ…ハッ…ハッ…」
極限の緊張と疲労で、呼吸すらまともにできない。しかし耳を澄ませるのは続ける。
「?!」
かすかにだが、水の音がする。
(飲みたい飲みたい飲みたい!)
その思いが恐怖を上回ったのだろう。少しずつ、けれども最大限慎重に音のする方へ進む。
(ゆっくりだ、もっとゆっくり!)
そう自分に言い聞かせ、ようやく目的の場所が見える場所まで移動してきた。
そこには川というにはあまりに小さいが、終わりの方には確かに水が溜まっている。おそらくここは川の最下流で、海につながっていないことを考えると、川の支流なのだろう。
「ゴクっ」
思わず喉が鳴る。しかし問題はここからだ、生き物らしき音がしたから、これだけ慎重に来たのだ。そうしてゆっくりと視線を泳がせる。
水たまりの端に四足歩行の動物だ。イノシシに似ていると思う。しかし明らかに違う部分がある。角、それは立派な白い角が、額の中央から伸びている。
体長は1mほどで、角は50cmか?体格の半分ほどの角を有していた。
(あれイノシシじゃないよな?あれに突進されたら確実にお陀仏だ)
水への欲求が薄まるほどに、未知であった。
しばらくすると、そのイノシシもどきは満足したのか、森の中へと姿を消していった。
「すぅーはぁー」
久しぶりに深呼吸をした。靴擦れの痛みも今更やってきやがった。
そんなことより水だ。恐怖はまだあるが、イノシシもどきは消えた。あたりを見渡しつつ、慎重に近づく。
イノシシもどきは端にいたから、支流と水たまりの付け根に移動しよう。少しでも安全を担保して行動だ。
「…水だ!」
そういってチロチロと流れてくる水に直接口を近づけて水分補給をした。細菌?ばい菌?ウイルス?そんなの考えが一瞬頭の中によぎったが、すぐ水に流されて消えた。さらば。
「うまい!うまい!今までの水で一番うまい!」
水の流れが少ないせいで、五分ほどしゃがみこんでいた。
水分補給しただけで、状況は良くなっていないが、世界が輝いて見える。調子いいな俺
――グウゥ
「安心したら腹も減ってきたな、もう水でリスクはとった、空腹で死ぬなら、食って死のう」
もうヤケクソだ。自暴自棄だ。日本でも環境のせいかそういう悪癖があった。どうにでもなーれー。
木の実らしくカリッとした歯ごたえがある。味は…うん青臭い、そして土の味、最後に少しの油分を感じる。美味しいか?美味しくないか?
「美味い!体に染み渡る!水と木の実最高だ!」
そういってポケットに入っていた木の実は食べきってしまった。
「もうご馳走様か~早かったな。もっと食べたい、白いご飯……」
久しぶりに胃に食べ物を入れたからか、安心してその場で仰向けに転がった
「何やってんだろ…何をしたらいい…?」
現実が辛すぎて涙がこぼれる。情けない。ここはどこだ、明日は生きれるのか、そんな不安が一気に押し寄せてきた。
「もう木の上に帰って寝よう」
そういって帰路についた。スマホはまだ15時だ。




