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クラス丸ごと一緒に異世界転移して二年後、世界は滅びた〜世界蘇生術師の復興旅〜  作者: 黴男
第一章-大穀倉地帯・ハルシバル

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029-『医者の領分』

俺は村長に、全員を集めるように言った。

そして、集まった面々の前で言う。


「皆、エリスを助けるために血が要る。だが、異なる血は受け入れにくい。似た血を持つ者を判別する手段を俺は持っている、どうかエリスのために血を頂けるか?」


我ながら唐突で、怪しく、そしてどうしようもなく無茶な願いだった。

俺は語彙の乏しさを呪った。

彼女を救うものは誰もいないだろう、そう思っていたのだが。

手が、挙がった。


「お...おいらで良ければ...!」

「ず、ずるいマネしやがって、俺も!」

「俺だって!」

「あたしも!」

「わしではいかんのかね!?」


村人の殆どが、手を挙げた。

そればかりではなく。


「他所から集めるべきか、お医者殿!?」

「待て...何故、そこまで協力的になってくれる? 俺は余所者で....」


正直、無理だと思った。

俺は何てコミュニケーション能力のない人間で、こういう時焦りに引っ張られる愚かな人間だと。


「当然だとも。俺たちは、ぜってえに恩は忘れないだ」

「エリス様は、何度も村の危機を救ってくれた!」

「お医者様も、俺の妻を蘇らせてくれた! 二度と会えないと思ってたのに!」


どの村人も、エリスか俺に恩を受けていた。

だからこそ信じると言ってくれた。


「......感謝する!」


俺は複数の村人から血を貰い、それを魔力管を通して輸血した。

この際多少の細菌の侵入は看過しなくてはならなかったが。

彼女の自己免疫に期待する。

素早く腕を治癒し、結界を張り、煮沸消毒したメスを入れて開腹する。

血を回復魔法の応用で止め、異常魔力の源だった器官を発見する。

硬化して、まるで宝石の様に煌めいている。

おぞましいな。


「切除する」


これを切ってどうなるかは、俺も分からない。

何故なら、死体の解剖ではこんな臓器を一度も見たことが無いからだ。

手早くそれを取り除き、縫合を回復魔法で代用した。


「.....治療は済んだ」

「おおおおおお!!」

「流石、お医者殿!!」


結界を消した俺は、村人たちに迎えられた。

その後、宴に巻き込まれる。

飲めや歌えやの大狂乱で、仲間たちも加わって楽しい時間を過ごした。

――――そして、目を覚ましたエリスに俺はこう言った。


「エリス、まだ料理は残っているぞ」

「...........何故、生かした?」

「原因は取り除いた。それでどうにかなるかは分からないが」

「......理由を聞いている」


彼女は強情だ。

だから俺は言ってやった。


「お前の馬鹿馬鹿しい夢を叶えるんだろう、死んでもらっては困る」

「――あ」


彼女自身、忘れていたのかもしれないな。

その目から涙が溢れ出すのを、俺はただ見ていた。

ただ見ていたわけではない。

目頭が熱くなり、嗚咽を漏らすことを我慢していただけだ。

そして、彼女を中心に光が輝いていく。


「ありがとう、タマキ殿.....私が掴みたかった未来が、遠くに見える」

「エリス......」

「....またね」


夢の終わりか。

だが、それは夢の崩壊ではない。

目覚める時が来た。

世界が、移り変わっていく。




夜明けが来ると同時に、俺たちは稲穂が靡く中の畦道に立っていた。

ここが、現代か。

やはり、過去だったんだな。


「あ、環さん! 風景が全部移り変わって.....泣いてるんですか?」

「泣いてなどいない」

「声が震えて....」

「病気かもしれないな」


俺はあえて気丈に振舞い、その場を後にした。

あの時飲み食いしたものは、胃の中から消えていなかった。

夢は夢で終わらなかったのだ。


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