028-『死にゆく少女と、生かす医者』
戦いは終わった。
ドクターアークの方も、ケリがついたらしい。
馬鹿の一つ覚えのように上昇をしていたのは、距離を稼ぐためだった。
ゴードンとマリアベルが同時に飛び出して行って、竜の頭蓋を粉砕したのが見えた。
あれで生きていたら、怪物では済まないだろうな。
「....生きているか?」
「ああ....」
無数の魔物が織り成す屍肉のカーペット。
その中で、砕けた剣を携えた彼女が蹲っていた。
見れば、右腕がない。
引き千切られたようで、血が溢れ出て居る。
「待っていろ、すぐに治す」
「.....ダメだ....それは.....」
「何故だ?」
このままでは死んでしまう。
患者を見過ごすことは、院長の教えに反する。
俺は医者としては、決してそれを見過ごすことはできない。
「私が.....この場所に魔物を引き寄せて......だから....死ねば....よい....」
「成程な」
モノクルを取り出さなくても、よく分かる。
彼女こそが、魔力線の正体だろう。
彼女の魔力パルスのような何かを感じ、魔物はここに引き寄せられてくる。
それは、彼女の人生でも変わらなかったんだろう。
思えば村人も言っていたな、昔はそうではなかったと。
「私は....死ぬべき者だった.....」
「何故だ?」
「戦いのさなかで、気付いた。....私は捨てられたのではなく、私が親を殺した....」
「そうか」
俺は淡々と答える。
生きる希望を抱かせる糸口を見つけるために。
死なせてくれと願う者に死を与えるのは、英雄の役割だ。
俺は医者で、英雄ではない。
だから、死なせはしない。
例え余計なお世話だと罵られようともな。
「きっと、この体質のせいだ....魔物を呼び寄せてしまった....」
「体質?」
俺は引っかかる言葉を覚え、彼女の体に触れる。
それをエリスは、感傷だと勘違いしたらしい。
俺の手を握ってきた。
「私を救っても、タマキ殿が不幸に...なら、いっそ.....」
「(やはりか)」
彼女には失礼かもしれないが、俺はやはり諦める事は出来なかった。
彼女の体に診断のために魔力を走らせ、反応を見る。
その結果は明らかだった。
「喜べ」
「何....が....?」
「まだ働けるぞ」
我ながら、最低の事を言っていると思う。
だが、事実であるから仕方がない。
「お前のそれは体質ではなく、病気だ。そして俺はそれを治す力を、持っている」
「本当.....なのか......?」
「ああ」
だが、一つだけ要素が足りない。
それは、血だ。
血液型を判断する限りではB型だが、あまりに足りなさ過ぎる。
既に腕を失って相当量の血を流している。
このままでは開腹手術に耐えられない。
俺は素早く彼女の傷を塞ぐと、抱き上げた。
「なにを....汚れて....」
「構わん。何とかする」
俺は彼女を抱いたまま、村の中央へ向かった。
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