027-『大魔術-星降る夜に』
上昇していくドクターアークを見ながら、俺は飛行魔法で空に浮く。
今夜はいい夜だ。
下の惨劇を無視した、綺麗な夜空だと俺は思う。
眼下に広がる無数の魔物を、綺麗に殲滅するために俺がする事はただ一つ。
「宣誓する」
俺がその言葉を口にすると共に、周囲の空気が停滞する。
魔力を乗せて紡がれた言葉は、大きな力を持つ。
「ここに、大魔術を使う」
たった二言。
しかし、これが無ければ魔力は集められない。
逆に言えば、魔術師とはたった二言で、世界の魔力を好きにできる存在という事でもある。
詠唱次第で、何からでも魔力は集められる。
しかし、そこには一つのルールがある。
「零を借りれば役には立たず、一を借りれば目溢され、二つを借りれば怒りを買う」
概念から魔力を借りるためには、その抵抗を理解しなければならない。
少しばかり取り寄せる分には構わないが、上限を超えるとその抵抗は高まり、取り出す出力の高さに比例して時間も伸びていく。
今はそんな暇などない。
「俺は医者なんだけどな.....」
医者でもあり、回復術師でもあり、蘇生の可能な奇跡を扱う者でもある。
だが、この場においては世界の命運を背負う、センチメンタルな主人公という体で行かせてもらおう。
「〈医師の杖〉」
俺は木の枝のような杖をその手に掴む。
そして、その先端で綺麗な円を描く。
術式を組むのは簡単だ。
俺が、それに同意するかというだけの話だからな。
「無銘の魔術師よ、その奇跡を借りるぞ」
俺はそう言って、師匠を脳裏に浮かべる。
この魔術は俺の物ではない。
師匠から受け継いだ、完全ではないものだ。
「世界よ、我が名を知れ。我が名は、タマキ・カナハル!」
叫んだ途端に、全身に痛みが走る。
こういうものだと思いつつも、慣れない感覚だ。
そして、慣れてはいけないものだ。
「我は、理を知るものなり。そして、過去と未来を繋げるものなり」
魔術の術式が完成する。
あとは詠唱が終われば発動するな。
「満天の星空。輝く双子月。地の裏にて輝く太陽。その輝きは決して永遠ではなく、しかし、強く、美しい」
空が光を増す。
俺が何をしようとしているのか、普通の魔術師ならばすぐに看破するだろう。
「星々よ――――一を借りる」
魔術が完成する。
俺の視界に映る数千万、いや数億の星全てから、その星を司る概念全てから、俺は魔力を「1」だけ借りた。
だが、この場にはおぞましい程の魔力が集っている。
その様はまるで、地上に顕現した太陽。
夜中の夜明け。
これらを無駄に――――する。
限りなく無駄にして、俺は攻撃を行う。
「星魔術、其の....拾。〈星の雨〉」
魔術は完成した。
十字の星を模した魔弾が数百数千と一瞬で生み出され、地上へと落ちていく。
それらは、俺が生み出したものだ。
考える力があり、結界は避け、木々を避け、地面に刺さるしかないのであればただ刺さり。
獲物がいれば決して逃さず。
鏖殺する。
「俺は医師だが、同時に魔術師でもある。.....そして、これは俺が使える最大最強の切り札だ」
これでも本職の魔術師には負けるだろう。
バカバカしく、脳筋な魔術の使い方だ。
何とも無駄で、冒涜的な魔力の使い方だ。
余った分は雲散霧消するなどと言ったら、本職は卒倒する事だろう。
それでいいんだ。
俺は何もかも中途半端――――それは今も昔も、変わる事がない事実だからな。
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