024-『少女のふるさと』
生まれた時には既に、剣を握っていたと思う。
思えば、私は空っぽな人間だったとも思う。
....私の名前は、エリス。
旅人に読んでもらった札だけが、私の全てだった。
物心つく前に誰かいたかもしれないが、思い出せない。
「この剣はお嬢ちゃんにやろう、どうせあの世には持って行けん」
自分は誰なのかを探す旅。
その途中で、私は色々なものを受け取った。
それは知識であったり、道具であったり、武器であったり。
知識を身につけていくうちに、私は捨て子なのだと分かった。
道具の使い方を知るうち、獣を狩って暮らすのも苦にならなくなった。
武器を受け取ってからは、自分がその武器で楽々と戦えるようになった。
だけれども、私にはあるモノが無かった。
見つけられなかったもの、故郷が。
「お嬢ちゃんが魔物をやっつけてくれたのかい....?」
「エリスというのか、上がって、ゆっくりしていくといい」
だけれども。
私はそれを見つけたのだと思う。
だいぶ前に買った手袋がきつくなって、捨てた次の日だったと思う。
剣を振るって助けた村の人たちが、私を家に上げてくれた。
今まで会ったみんなは、私を怖がって追い出そうとしたというのに。
何だか悪くなって、私はその村を出た。
次の村でも、私は歓迎された。
どうして?
どうしてだろうか。
だけれども、答えは出たような気もする。
村人たちは私の強さを買ってくれた。
だから私は、今までで初めて受けたこのもてなしの礼をしないといけない。
そう思ったのだ。
「エリスさん、聞いたよ。この辺の村を巡って、魔物を倒してくれてるんだろ?」
「少ないけど、持っておいき」
そして、私はこの場所に留まる事にした。
全部で十二あった集落を順に巡って、魔物がいれば倒して。
村に寄れば三日ほど泊めてもらい、何か野営で食べられるものを受け取ったりもして。
私にとっては理想の生活だったのだ。
だけれども。
「なんだ....これは....」
ある日、いつも通り私が村を訪れると。
そこには人の気配がなかった。
崩れた家の中で、私は死体に蛆が湧いているのを見た。
人が死ぬ。
知らなかったことだった。
村は襲われて、魔物に食い荒らされていた。
そんな事が何回も起きた。
十二あった集落は、五まで減った。
私は滞在時間を一日、もしくは日が暮れるまでとして、村を頑張って守った。
だけれども。
「がああっ!!」
口の中に広がる、慣れた血の味。
私は何度目かも分からず立ち上がって、剣を振るう。
今回の相手は多すぎた。
私だけでは、到底無理だった。
「ディバイド.....スラッシュ....!」
どうすればいいかは、考えなくても分かる。
そういうものらしい。
斬撃で魔物を片付けた私は、横から狼に襲い掛かられる。
腸を食いちぎられる前に投げ飛ばして、持ち上げた剣で叩き切る。
「はぁ、はぁ......」
本当は、分かっていた。
急に魔物の襲撃が増えた理由を。
疑われたこともあった。
皆、本当は気付いて居て言わないだけなのかもしれない。
....私がいるから。
私がいるから、魔物どもは徒党を組んでここへやって来る。
だけれども。
私がいなくて、誰が守るのだ?
ああ。
「羨ま、しい.....」
私にも仲間がいれば。
あの医者と名乗る男のように、頼もしそうな仲間がいれば。
素晴らしき魔法があれば。
そう願っても、あの男は旅立ってしまった。
もう、傍には――――
「....っ!?」
私は背後から何か熱いものを浴びたように感じた。
襲い掛かろうとしていた魔物も、動きを止めていた。
何が起きたのだろう、そう思う前に、声が聞こえた。
「地よ、岩の板よ、世界樹の枝葉よ、しなりて我が命に応えよ」
「......まさか」
「形を変え、敵を貫け――――〈アーススパイク〉」
その言葉が終わると、地面が赤く光った。
私が目を閉じて、開けると。
沢山いた魔物は全て、死んでいた。
地面から生えた、黒い棘に身を貫かれて。
「.....タマキ殿か」
私は呟く。
私は情けない。
戦士として情けない。
助力をしてもらったというのに、もう戦えない。
「タマキ殿、私は――――」
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




