021-『奥底に眠る者』
遺跡は地下五階まであるようだった。
ガーゴイルや住み着いた魔物と戦いつつ、俺たちは最奥部へと辿り着く。
「さて、あれが魔力の正体か」
「あの.....地脈の夢って、人間以外でもそうなるんですか.....?」
「さあな」
最奥部に鎮座していたのは、ガーゴイルの親玉のような魔物だった。
全身が岩で出来ているように見えるが、脈動している。
クリスタルも生えている。
まあ、今までの旅で一度も見た覚えはないな。
「どうする?」
「行くよっ、みんなは援護!」
「ええっ!?」
真っ先に突撃して行くマリアベル。
隣を見ると、もうベナの姿もない。
仕方なく、俺は詠唱を開始する。
ミカはやる事がないので、今回は見物だな。
「万物を縛る理よ、我が命をもって槌となれ。...グラビティアンカー」
「え、攻撃魔法使えるんですか?」
「攻撃じゃないぞ」
あの魔物自体に魔法をかけて、自重を二倍近くにまで引き上げた。
こうすればまともに動くことはできない。
マリアベルは魔物まで走っていて、ベナは魔力と気配を消してどこかに居る。
この状況で俺がやるべきことは、攻撃に気付いた魔物を誘導することだ。
「小さき太陽よ、流星の如く飛び、燐光の如く軌跡を残せ。...〈照明弾〉」
放った照明弾は、魔物の頭部らしき場所をすり抜けてその周囲を180度回転、その場に留まる。
「彼の者は我が眷属、我が一部、魔の源よ、彼に集え。〈魔素偽装〉」
「何やってるんですか...?」
「光学的、魔力学的にあの光弾が近付くものに見えるように偽装している。...ここは城砦なり、不落なる砦なり、鋼で出来た楼閣である、魔力よ集いて城壁となれ、〈籠城結界〉」
話をしながら、俺は自分たちを守る結界を張る。
ここで大っぴらに魔力を使うと位置がバレるが、あの光弾が魔物の気を引いていればそれで大丈夫だ。
「タマキ、あいつの魔導石の場所、わかったよ」
「助かる、どこだ?」
「腹の下!」
ベナが戻って来る。
彼女は盗賊でもあるので、偵察には長けている。
それなら大丈夫か。
「風よ、広く長く、我が囁きを届けよ。〈ウィスパー〉...聞こえるか、今からやつを打ち上げる、魔導石の位置は腹の下だ」
返答は返ってこないが、走っているマリアベルがメイスを持っていない手でグッドサインを出す。
聞こえたようだな。
「何というか...環さんって本当に魔法使いなんですね」
「ああ」
医者がヤブな分、魔法はガチだ。
魔術師としては微妙だが...
「リグ・べトラ・シュディム! 見えぬ鎖よ、縛り上げ、打ち上げよ! 〈グラビティ・アッパー〉!」
三段階強化を使い、魔法の出力を引き上げる。
流石に無強化のグラビティ・アッパーではあの質量を打ち上げる事はできないからな。
まだグラビティアンカーの効果が続いているので、尚更だ。
「どりゃーーーーッ!」
大地を蹴って加速するマリアベルが、メイスをハンマーに変形させ、全力で振り切った。
あの感じ、風の女神サマンテの加護を使っているな。
ハンマーを振りながら空中で加速しているからな。
鋭い破砕音が響き渡り、戦闘が始まると同時に輝いていた魔物のクリスタルが光を失った。
自重で身体全体にヒビが入り、重力に従って落ちて行く。
マリアベルは急いでその下から逃げて行った。
「やたっ、素材回収!」
「しても無駄だろう」
「...確かに」
「よくやったな、ベナ」
「ね、ねえ! 私、役に立ったよね?」
「休憩ならしないぞ。このまま最奥へ向かう」
俺はベナを称賛する。
ベナは何かそれ以外の要求があったようで、しきりに自分をアピールしていたが...俺が興味を持たなかったので、しばらく物欲しそうに俺を見ていたが、諦めたらしく顔を逸らした。
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