016-『エリス』
部屋の中にエリスを招き入れると、ミカが何か批判的な視線でこちらを見てくる。
「また女の子ですか?」
「”また”とは何だ」
「前も女の子助けてたじゃないですか」
前?
いつの事だ?
俺がそう思うより前に、エリスが声を発した。
「タマキ殿! 私は聞きたい事がある」
「何だ?」
「タマキ殿は医者と聞いた! 死人を蘇らせたとも!」
「あいつら.....」
口が軽いのか、信頼している相手だから言ったのか。
この語り口でロクな事になる気はしないが.....
「....どこでそれを学んだのだ?」
「答えるとでも思うか?」
「私は戦士として戦う事は出来るが、傷ついた者たちを癒してやることは出来ん」
「ならば戦え、怪我人は専門家に任せろ」
「だが、お主は長くは留まらんのだろう。....旅の魔術師も、前はここを守ってくれたが、居なくなってしまった....私が守らねば、皆死んでしまう」
「そうか」
だが、特に同情はしない。
していたらキリがないからだ。
俺の態度で取り付く島が無い事を察したのか、エリスは質問を変えた。
「タマキ殿は、昨日魔物を全滅させたと聞いた。.....魔術師なのか?」
「ああ」
「なら、魔法を使えるように出来ないか....?」
「無理だな」
こればかりはモノクルを通さなくても分かる。
彼女に魔法の素養はない。
ミカですら無いのだから、俺が魔法を使えるのは相当特殊な事例だ。
本来なら魔法職でなければ魔法を扱う事は不可能と言っていい。
「........タマキ殿は、どうしてそんなに余裕でいられるのだ....?」
「事実、余裕だからな」
涙目になって威圧してくるエリスだが、俺は余裕綽々と言った様子を隠さない。
ミカはビビって顔面蒼白になっているが。
「お前が怒って技を使ったところで、家が消し飛ぶだけだ」
あと俺の魔力がちょっと減る。
結界だけは大得意だ。
......攻撃と強化系は、専門外だが。
「それより、俺が招いた理由は質問を聞くためではなく、謝罪するためだ」
「.....謝罪?」
「昨日魔物の襲撃があったが、俺が殲滅しなければお前の功績になったはずだ。すまない」
「あ! だ、大丈夫だ。私は守りたくてやっているだけで、褒められるためにやっている訳ではない!」
「そうか。.....高潔なのは立派な事だ」
俺は高潔には振舞えない。
だから、そこは少しだけ敬意を向けておこう。
そろそろミカが何か言いたそうにしているな。
「ミカ、どうした?」
「何でもないです!」
まあ、とにかくだ。
「人々を守ってくれてありがとう、それは本来、俺の友たちがするべき事だった」
「あ....ああ! 当然だ!」
ここに、俺のかつてのクラスメイト達がいれば。
魔物など一瞬で蹴散らされただろう。
それくらい勇者は格が違う。
王国が百年かけて少しずつ進退を繰り返していた魔王軍との戦いを、たった二年で終わらせた。
勇者だけでなく、他のメンツも格が違う。
所詮俺は、回復役.....プリーストだからな。
剣を持ったところで、その辺の剣士職を持つ子供にも勝てない俺は、少しだけエリスを羨ましく思ったのだった。
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