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妖刀 四重奏(カルテット)  作者: 幻魔 狂死郎
追憶編
63/66

第六十三話 人と妖魔

無数の燕が満月の空を舞う景色が広がっている。

宿の半分以上崩れかけている。

狂死郎はお花が無事かどうかに気をとらわれていると赤葉はこう呟いた。

「どうした?志波竝のやつらが気になるか?」

「あぁ、君には関係ない話さ!」

妖刀から具現化されたそれはどこか本物の燕と似て非なるものだった。

確かに燕と同じだった形だけを見れば、でもよくよく見るとそれは妖力で誤魔化しているだけの虚像に見えた。

赤葉の攻撃を受けるギリギリを避けて、追撃してくる燕を刀で受け流した。

「どれだけ足掻いても無駄だ!その燕からは逃れられない。」

燕が上空から狂死郎に襲いかかると同時に目の前から赤葉が襲いかかった。

やられたと誰もが思った瞬間、砂埃(すなぼこり)の中から声が聞こえた。

「あと、もう少しずれていたら確実に殺されていたかもね...」

「あれをギリギリで避けるとはやるじゃねぇか?お前さんところで名はなんだっけ?」

「名前言ってなかったっけ?僕の名前は...」

名前を伝えようとした瞬間、相手がそれを狙っていたかのように斬り掛かった。

「名前、聞かなくてもいいってことで良かったかい?」

「わりぃ、手が滑ってしまった。」

赤葉は続けてこう呟いた。

「ここまで楽しませてくれたお礼だ!お前に面白いもんを見せてやるよ!」

赤葉は何やら周辺を探し始めた。

すると、微かな声で助けを呼ぶ声が聞こえる。

そこには、逃げ遅れた一般人が瓦礫に埋もれていた。

その一般人の腕を掴み引きずり出した。

一般人はお礼をいいその場をあとにしようとした瞬間、一般人の胴体が真っ二つに斬り裂かれた。

「何をしている?」

「まぁ、見てなって!」

赤葉はその斬り裂かれた死体を見つめながら不敵な笑みを浮かべこう呟いた。

「そろそろ始まったぞ!」

その死体からは黒い靄のようなものが出てきていた。

その靄に死体を包み込むように蝕んでいった。

数分もしないうちにそこにあった死体はいつの間にか消えていた。

「これは?」

「驚いたか?妖魔は人を喰い、喰った人の数だけ妖力を得る。あれが妖魔ができるまでの工程ってやつさ!そして、次にまた別の人間を求め彷徨う。まるで幽霊のようにな!」

その光景を見た時、胸の中にある何がざわついた気がした。

「だとしても、それでも僕は妖魔を狩る!」

「人間ね...お前も見ただろ?人間を守るために妖魔を殺す。確かにそれもありだがこうは思わねぇか?妖魔を撲滅するために人間を手当たり次第殺しまくる。」

「なぜ?そんなことを平気で?」

「決まっているだろう。そうすれば、妖魔は生まれない。それだけの話だ。それに...お前一人が戦っていても妖魔は今よりも何倍にも膨れ上がるだけだぜ!不死原さんよ!」

刃と刃がぶつかり合う中、続けてこう呟いた。

「じゃあ、一つだけ聞いてやるよ!もしお前の目の前で大事にしていた人が死んだらお前はどうする?この世を呪うか?それともその場にいた全員を斬り殺すか?」

「そうはしないさ!それに死なせもしない!」

「世迷い言を吐かすか。ならここでお前を殺すだけだ!」

赤葉の刀をはじき返した瞬間、相手が投げた小刀で咎音も手からはじき返された。

お互いの刀が自身がいる位置より離れた場所に飛ばされている中、両者相手の出方を見つめながら刀がある方向へ走り出した。

両者同じタイミングで刀を拾い、相手に向かって走り出した。

狂死郎は相手が走り出した瞬間に同じく赤葉に向かって走り出した。

赤葉と狂死郎がもう少しですれ違う瞬間、すでに勝敗はついていた。

狂死郎が地面に跪いた。

赤葉は振り返ろうとした瞬間、口から血を吐いたと同時に地面に倒れ込んだ。

ふらふらな状態で立ち上がって狂死郎は赤葉に向かってこう呟いた。

「安心しろ...深傷にならない程度の切り傷だ!少し手当てすれば治ってくるはずだ!」

「やるじゃねぇか...不死原...」

「あんたほどじゃないよ!強かったよ!君は...」

体が傷だらけの中、ひたすら桜華の方へと歩いていくと途中でお花の後ろ姿が見えた気がした。

追いかけていくとそこには傷だらけの桜華が立っていた。

「桜華...」

「ん?なんだお前か...一人は倒したのか?」

「あぁ、何とかね!そういう君は?」

桜華は嫌そうな顔をしながらこう答えた。

「まぁ、見てればわかる。」

「おいおい!まだやり合ってる途中だろう?志波竝の生き残りよ!」

「っるせぇ〜な!いくら倒してもきりがねぇよ!まったく...」

「さぁ、続きをしようぜ!」

「はぁ...乗り気じゃねぇけど!やるしかないか...」

水天の能力で無数のシャボン玉が浮かび上がる。

桜華が霊璽の方へ向かって走り出した。

あとわずかで霊璽に近づいた時、桜華の足元が揺れ始めた。

「なんだ?」

地面から大きな鮫が大きな口を開いたまま襲いかかってきた。

「水天(はぜ) 鯊波(なみ)」

何の一切の抵抗もできずに桜華が鮫に食べられてしまったように見えた。

「桜華!?」

無音だった数分間のあと、鮫が突如と苦しみだしながら口を開けた瞬間鮫が真っ二つに斬り裂かれた。

「ふぅ、危ねぇ危ねぇ!」

「ちっ、しぶてぇやつだな!お前も...」

「お前ほどでもねぇだろう?」

「そうかもな!」

刀を逆手に持ち、桜華の顔めがけて斬り掛かったギリギリを桜華は避けた。

それを狙っていたかのように桜華の背後に回って喉に刃を突き立てて差し掛かろうとしたがまたしてもギリギリで避けられた。

桜華と霊璽がやり合っている間に、お花は桜華たちを探しに宿を出て橋の上へと向かっていた。

橋の上へ這いつくばりながらも向かっている途中、突如と笠を被った男が現れてこう呟いた。

「お嬢ちゃん、おとなしく今日は帰りな!」

「いや、まだ帰らない!お兄ちゃんと狂ちゃんを見つけるまでは...」

その振り向きざまに見せた顔がさきと重なって見えた。

「お嬢ちゃん、悪いな!おっちゃんがお兄ちゃんのところにおぶって連れて行ってやる!」

お花をおぶり桜華と狂死郎の元へと向かっていたはずだった。

狂死郎は桜華からこう言われていた。

「もしかしたらお花が外へ出たかもし)ない。俺は何とか霊璽(アイツ)を倒し次第向かう。だから先に行ってくれ!」「あぁ、分かった。」

お花が向かった場所を周り最終的には橋上に到達した瞬間、視界が黒ずんでいた。

到着した時にすでに赤葉がお花をおぶっていた。

「なんでお前がいる?」

刀に手を当てる素振りを見せると赤葉はこう答えた。

「おいおい、ちょっと待てよ!何もしてないってお話相手になってただけだ。」

「そうか...それならいいが...」

その日は雨が酷い夜明け前の時間だった気がした。



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