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妖刀 四重奏(カルテット)  作者: 幻魔 狂死郎
追憶編
62/66

第六十二話 鳥になるなら

その頃...お花は誰もいない部屋の天井を見つめながらこう呟いた。

「お兄ちゃんまだかな?」

静まり返った部屋に響き渡る小さな揺れを感じてお花は言った。

「地震?お兄ちゃん大丈夫かな?」

微かな揺れを感じて少し不安そうな顔をしていた。

一方その頃桜華と狂死郎たちは...

おそらく力量も経験値も相手のほうが上...

そんな二人の相手に勇敢に立ち向かうやつなんてほとんどいないだろう。

それでも彼らは立ち向かっていた。

見ず知らずの人を守り抜くために...

逃げ遅れた一般人に向かって桜華は大きな声で叫んだ。

「早く逃げろ〜!」

一般人が逃げていくのを見届けている間に男は走り出し桜華に襲いかかってきた。

「よそ見は禁物だぜ!お坊ちゃん。」

「よそ見なんてしてねぇよ!」

刀身と刀身がぶつかる。

相手の隙のない攻撃が繰り出されていく。

それを必死に防ぎながら凌いだ。

「やるじゃねぇの?お前、普通に人を殺したことはあるか?」

「あぁ?何の話だ?」

「何、単純な話さ!人を自分の手で殺したことはあるかって話だよ!」

相手の攻撃を防ぎ、距離を取った。

相手は自身の持つ刀を桜華に向けて投げたと同時に桜華へ走り出した。

桜華はそれを上へと弾いた。

相手が桜華の懐へ飛び込んだ瞬間、刀を横へ振るったがそれを避けて上へ弾かれた刀を跳んで取った。

「まさか、このために...」

上から刀を振り下ろした瞬間、ギリギリでそれを防いだ。

圧倒的に相手の方が力は上だ。

それでも、この状況をきり抜けないと下手をしたら死ぬ...

「防いだか...ならこれならどうだ?」

刀に手をかざしこう呟いた。

「水天」

無数の泡のようなシャボン玉が霊璽と桜華の周りの宙に浮いていた。

「これは妖刀の能力(ちから)か?いや、それ以前にコイツから一切妖力の気配も感じられない。本来なら妖刀を所持してる時点で分かるものもあれば、妖刀を抜いた瞬間に分かるものもあるはずなのに...コイツが使うと妖力を感じなくなる。何が起きている?」

男は刀を肩に当てこう呟いた。

「何言ってやがる?妖力が感じないって話か?そりゃ、妖力そのものの気配を消しているからな!それに、妖刀を使うもんが妖力だだ漏れのまま歩いていたら他の妖刀使いにバレるだろうが?で、お前は妖刀の能力(ちから)を解放しなくていいのか?」

桜華はこう呟いた。

「なら、俺も少し本気で行かせてもらうぜ!舞い散れ!夜桜!!」

夜桜の能力は自身の刃を1.5cmほどに細かくすること、すなわち桜の花びら自身が刃と化す。

「へぇ、それが噂の認識識別固有妖刀って類いの妖刀ねぇ〜!なら少しばかりは楽しめそうだ!」

ーーー宿泊場 一階 客間ーーー

階段の2階から転げ落ちていく。

受け身の体制を取り少し痛む程度で何とかなっているが妖刀の能力(ちから)を使わないでこの力は人ではないと言えるだろう。

「あぁ、また血だらけの場所に降りてきちまった。それで?まだ、戦いたいか?坊主!」

「まったく、ついていないね!今日はだが...」

懐から竹筒を取り出し竹筒を地面に投げた。

竹筒から妖魔が飛び出してきた。

「へぇ〜!妖魔を飼い慣らしていたのか?」

襲いかかってくる妖魔を一刀両断していった。

妖魔の血が噴水のように飛び散る。

襖を閉め、男の足音が徐々に客間へと迫っていた。

襖の前に立ち止まり男はこう呟いた。

「逃げても無駄だ!」

襖越しに双方の刃が襖ごと相手を斬り裂いた。

襖を蹴飛ばし、客間に飾られている仏の方を見て男はこう呟いた。

「天国も地獄もあるとは限らねぇが俺はきっと地獄(あっち)側だろう」

相手に向けて刀を振りかざす瞬間、赤葉はそれを読んでいたかのように受け流した。

「チッ...受け流したか。」

「そんなもんか...ガッカリだ!」

刀を鞘に納め、狂死郎の元へと踏み出した。

狂死郎は刀を抜き、こう呟いた。

「朽ちろ!咎音!!」

刀身が禍々しい光を放つ。

双方の刀と刀が触れ合うギリギリのタイミングで躱して狂死郎の耳を刃がかすった。

「グッ...」

刀を瞬時に納め、赤葉はこう呟いた。

「どうだ?痛むか?」

「あぁ、おかげさまでな!」

「なら、少しお前に昔話をしてやろう。」

「今は、そんな場合じゃないだろう?」

「いや、そうか?ならかかってこい!相手しながら話してやる。」


刃と刃がぶつかり合う。

その衝撃のおかけで地面が揺れた。

地面が揺れる中、赤葉は語り始めた。

そう、これはある男が若い時だった。

その男は生まれつき、目が見えなく不自由な生活を送っていた。

外をあるけば人にぶつかり、中でゆっくりしていても立つのさえもやっとの思いで立ち上がれた。

それくらい酷かった。

そんな男の人生はきっと一人きりで孤独に終わるんだろうと思っていた矢先、一人の女との出会いが彼を変えた。

嵐の夜だった。いつものように静けさ漂う、風が強い豪雨の中ひたすらすがるものさえない状態でひたすら歩いていく。

肌には冷たいほどの雨粒が流れていくのが分かる。

そんな中、男はこう呟いた。

「俺はどうせここでくたばるんだろう...」

そうつぶやき地面に倒れ込んだ。

そんな中、ふと誰かの声が聞こえる。

その声はどこか優しく、暖かな声だった。

「大丈夫ですか?」

目が見えない俺の手を取ってくれている。

その手の温もりはどこか心地が良かった。

「こんなところにいると風邪引いちゃいますよ!」

女に手を引っ張られてそのまま、どこかへ連れて行かれた。

「ここは、お前さんは?」

女は少し笑いこう呟いた。

「大丈夫!ここは私の家ですよ!あっ!名前、まだ言ってませんでしたね!私はさきと申します!」

「さき...いい名前だな!俺は赤葉 誠一郎だ!」

「誠一郎...ならせいちゃんって呼んでいい?」

「せいちゃん...」

それが俺とあの娘との出会いだった。

その娘との毎日は何だかんだ悪くはなかった。

あの日が来るまでは...

その日もいつもと同じように薪を割って風呂の準備をしている時だった。

突如、役人どもが彼女の家に押しかけてきた。

「邪魔させていただく、私は警察官の鶯(うぐいす)と申します!さきさんはお見えですか?」

「はい!さきは私です!」

「唐突で申し訳ないのですが一緒に、ご同行の方をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「あっ、はい!?」

さきの姿を見たのはきっとその前日が最後だっのだろう。


さきが連れて行かれたことを聞き、急いで役所へ出向くと役所の人間が言いにくそうな顔をしてこう呟いた。

「実は...」

「は?死刑はこのあと、執行される?」

「はい!何せ、お偉いさんを数人殺した罪だとか言ってましたね!」

「お偉いさんを殺した...それって冤罪じゃねぇのかよ?」

「さぁ、そこまでは知りません。」


役所をあとにしてその場を離れ急ぎ処刑場へ向かって走っていった。

処刑場へたどり着くとそこには大勢の野次馬と数十人の役人が立っていた。

「この者は数人のお偉いさんを殺した罪に掛けられておる。それ故、総理大臣の命によりこやつを斬首と処す。」

さきの方へ走り出し大きな声で叫んだ。

「おい!さき!これは一体どういうことだ?説明してくれよ!」

「せいちゃん...ごめん...私、本当はせいちゃんともっと...」

さきは振り返り涙を流しながらそうつぶやいていた。

処刑の合図がなると同時にさきはそのまま座らせられ首を前に出した瞬間、首が刎ねられた。

嫌な音が今でも聞こえてくる。

その音がしたと同時に彼はその場に役人、一般人を一人残らず斬り伏せた。

赤い血で地面が染まる。

周りには血だらけの遺体が転がっていた。

無力だったあの頃とは違う。

今も聞こえてくるあの声が...

きっと今も見ていてくれているだろう。

「すまねぇ...でも、またもしお前と会えるなら俺はもう一度お前と一緒にこの空を飛びたい...」

さきの声がどこからか聞こえた気がした。

「きっと...また飛べるよ!でしょ?せいちゃん!」

そうだな...

「飛べ!時宗(ときむね)!!」

「何だ?あれは?鴉(からす)いや、違うあれは...燕?」

無数の黒い燕が飛ぶ景色が広がっていた。



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