第六十一話 襲撃
ーーー桜華の家ーーー
いつものように妹の世話をしていると戸を叩く音が聞こえた。
戸を開けるとそこには見覚えのある男が立っていた。
「久しぶりっす!桜華さん!」
「お前は、楠木...だったか?」
楠木は膝から崩れ落ちてこう呟いた。
「楠木で合ってますよ!妹さんは元気にしてますか?」
「相変わらずな!てか、お前確か日本1週の旅は終わったのかよ?」
「あぁ、ようやく先日終わりました!そうそう、そしてこれがお土産として買ってきましたよ〜!」
そこには沢山の食べ物のお土産や郷土名物品の品々があった。
「よっぽど暇かよ!で?何のようだ?」
嬉しそうにお土産を紹介する仕草を止め、桜華にこう伝えた。
「実は最近、政府直属の者たちがあなたと妹さんを狙っているって情報が入ったので急いで戻ってきただけですよ!あと、そいつらの目的はたぶん...」
「どうせ、妖刀の秘密情報を知る奴らを始末してぇんだろう?わかってるよ!何せ、噂じゃ。この日ノ本を脅かす奴らが目覚めたって話だろ?」
「どうやら私がお伝えしなくても良さそうですね!」
「あぁ、わかってる。何なら、最近妙な視線を感じることが増えたからな!」
「くれぐれも注意してくださいね!さもなければきっと奴らはあなた方を襲うでしょうから!」
「ご忠告どうも!」
「では、私はこの辺で!また生きていたら会いましょう!桜華さん!」
「あぁ、またな!」
男はその場を立ち去った。
そして、それから数日間の間は何も起こらなかったはずだった。
ーーー数日後ーーー
いつものと同じことの繰り返しをしている時だった。
妹の面倒を見ていると戸を叩く音が聞こえた。
戸を開けるとそこには狂死郎が立っていた。
「桜華!少しだけいいかい?」
近くの橋の上へと移動し狂死郎はこう呟いた。
「今度、三人で少しばかり宿がある温泉に行かないかい?」
「何だよ!急にお前らしくないな!」
「たまにはいいじゃないか?気分転換にはいいだろう?」
「あぁ、いいけどな!」
「今度というより、できれば明日とかでもいいかい?」
「明日か!何か事情でもあるのか?」
「あぁ、ちょっとね。」
橋の上で話をした後、家に戻りお花にもこのことを話すとお花はこう呟いた。
「うん!私も行きたい!」
お花もいい返事をしそして、明日に備えて早く寝た。
ーーー翌日ーーー
まだ、人が起きるには早いくらいの時間帯だった。
狂死郎が来る直前までに準備を済ませ家を出た。
橋の上でお花をおぶって待っていると少ししてから狂死郎と鹿洲と門下生たちがこっちに向かって走っていた。
「遅くなってごめん!」
「いや、いいよ!で?なんでお前がいるんだ?」
「俺も誘われたからだろうが!」
桜華は嫌そうな顔をしながら鹿洲を見つめていた。
その状況を見て狂死郎はこう呟いた。
「まぁ、まぁ...桜華もそんな嫌がらなくても...」
宿がある温泉まで歩いていく中、お花は色々なものを見て驚いていた。
その表情を見ながら俺たちは笑いあっていた。
「もうすぐ、着くぞ!」
「案外、近いんだな!」
「まぁ、お花ちゃんの体のこともあるだろうしそんな遠くまで行けないと思ってね!」
「狂死郎!ありがとう!」
狂死郎は照れくさそうに笑顔で答えた。
「うん!」
外の日が暮れる頃合いだった。
温泉と宿がある場所だったから良かったのかもしれない。
一泊し、今晩は泊まって明日には戻ることにしていたときだった。
どこからかかすかな妖力が感じられた。
「ん?」
「桜華も感じるかい?」
「やっぱりお前もか?」
刀を握り、階段を下っていく。
そんな中、どこからか悲鳴が聞こえた。
その方向へ向かっていく途中、誰かが狂死郎の足を掴みこう言っていた。
「たすけ...て...」
「おっと、逃げんなよ!まだ、終わってねぇだろ?話が...」
足を掴んだ女性の上半身と下半身が真っ二つに斬り裂かれていた。
そこには、刀を鞘に納めて笠を被った男がいた。
ーーー数十分前ーーー
門下生たちが風呂に向かっているとき、一人の男が宿に入ってきた。
「いらっしゃい!一人で良かったかい?」
女将が聞いた瞬間、女将の体が倒れた。
その体には首がなかった。
その光景を見ていた他の客人は悲鳴を上げた。
客人が逃げ惑う中、男は刀を目にも留まらぬ速さで抜き納めた。
まるで、一瞬の間に物が移動しているかのように...
「また、つまらねぇもんを斬り伏せちまった!」
床には、多くの血痕と大勢の首のない遺体が転がっていた。
その状況の中、一人ひたすら逃げていく男は周りにある物を男に投げ捨て、こう呟いた。
「来るな!こっちに来んなよ!」
「悪く思うな!ここの宿に泊まっている奴らは一般人か関係なしに殺す。大丈夫!行くところは皆、同じさ。」
静まり返った廊下を歩いていく。
廊下を歩き続けた先には門下生たちが入っている風呂場があった。
風呂場の扉を斬り裂く。
そこにはまだ体を洗っている男たちが驚いた表情をしてこっちを見つめていた。
「お前は...」
門下生たちはその男をみた瞬間、こう呟いた。
「燈馬!あいつらは俺達でどうにかするその間にお前は、桜華さんたちにこのことを伝えてくれ!」
燈馬は頷いた。
刀を鞘から抜いたタイミングで鞘に納めた。
それと同時に男達の首が飛んだ。
その男はすでに門下生たちの目の前に迫っていた。
門下生の一人がそこら辺に置いてある木の箒を取り、男に襲いかかった。
「今だ!早く、行け!」
少年はふんどしをしてそのまま階段を駆け上がって行った。
少年が桜華の方へ向かっている道中、赤く染まった床をみて吐きそうになりながらもこう呟いた。
「早く、桜華さんに伝えないと...」
門下生の一人が階段を急ぎ足で駆け上がろうとした瞬間、背後から水が垂れるような音が聞こえた。
きっと、その男は背後に徐々に迫ってきているのだろう。
駆け足で階段を上がり2階の廊下を走っていると向こうに桜華と何かを見つめている狂死郎の姿を見つけた。
門下生は大きな声で叫んだ。
「桜華さん!たすけ...て...」
門下生の背後には笠を被った盲目の剣客が立っていた。
「人が一人、また一人死んでいくのを見る度お前はどういう気分になる?」
桜華はその男を見つめ、こう呟いた。
「いい気分になれるわけねぇだろう?」
「まぁ、そうだろうな!だが俺としては実に愉快な気分だ!」
襖を壊し、女を刺殺した男が出てきて盲目男にこう伝えた。
「まったく、打ち合わせをしずに何やってると思ったら案の定。賞金首を単独で襲撃するなんてありえねぇな!」
「お前もようやく、来たか!いいじゃねぇか?たまには無計画なやり方をしてもよ〜!」
「仕方ない。こうなったら金のために頑張るとするか!」
男達が話している間に桜華と狂死郎は顔を見合わせて頷いた。
赤葉と霊璽が話している最中に、2人同時に斬り掛かった。
「おっとっと危ねぇ〜!」
「チッ!」
「人がせっかく話しているときに斬りにかかろうなんて恐ろしいことをしてくれるじゃないの!」
相手の刀と自身の刀が交わる。
おそらく相手のほうが俺よりも経験値も力量も上だろう。
でも、なぜか...その男からは恐怖を感じ取れなかった...
その日はどこか静けさを感じる夜だった。




