第五十九話 共闘
雨が止んだタイミングで、空を見上げる。
桜華は不死原にこう言った。
「俺はそろそろ帰るけど、お前はどうする?来るか?」
「君のお邪魔にならないなら行くとするよ!」
神社の階段を下っていき、桜華は不死原を連れて自宅へと戻って行った。
ーーー夜桜町下町にてーーー
桜華の跡をついていくとそこは、人が住んでいるとは思えないほどの場所だった。
「貧民窟か?」
「まぁな!元々は、俺の家はここらを統治する家だったが明治政府に追い出されてしまったからな。」
戸を開けて、中へと入る。
桜華はこう呟いた。
「ただいま!」
すると、布団に横たわっていた一人の少女が静かな声でこう言った。
「お帰り!お兄ちゃん!」
その少女を見ていると桜華はポツリと呟いた。
「悪いな!そこで少し待っててくれるか?」
桜華は草鞋を脱ぎ、棚の上から薬を取り出し湯呑に水を入れ薬と一緒に少女に飲ませていた。
薬を飲ませて楽にしている少女を見ている時に狂死郎は桜華にこう言った。
「桜華ちょっといいかい?」
少女がいる家から一次的に離れた橋の近くへ移動し狂死郎は桜華にこう呟いた。
「あの子は君の妹か身内かい?」
「あぁ、俺の妹だ。名前はお花!アイツは産まれた時からあんな感じだった。」
「そうか。君も大変な思いをしてきたんだね。」
桜華は少し笑いながらこう答えた。
「そんなことねぇよ!むしろ、この生活を苦に感じたことすらない。」
桜華は不死原に続けてこう呟いた。
「お前も家族はいるだろう?」
狂死郎はうつむきながらこう呟いた。
「あぁ、いるよ!でも僕は家出した身だからね!帰る場所なんてないよ。」
桜華は笑いながらこう答えた。
「いるならたまに帰って顔ぐらい見せてやれよ!」
「気が向いたらそうするよ。」
二人が話している間に妙な気配が感じられた。
それは、どことなく妖力を纏っている者と似た気配だった。
それに気づいた桜華と狂死郎は素早く家を出た。
家を後にし、鹿洲がいる道場へ向かって行った。
剣道場に到着すると数人の門下生たちが倒れていた。
「おい!大丈夫か?」
気絶しかけている門下生に呼びかけていると狂死郎がこう叫んだ。
「桜華!こっちの門下生の子は息をしているようだ!」
門下生の元へ駆け寄ると門下生はぽつりぽつりと話し始めた。
「・・・桜華さん」
「どうした?幸芽!何があった?」
「来てくれたんですね...道場破りが現れたんです。それも、二人!その二人は妙な刀を持っていたんです。私たちが立ち向かっても歯が立ちませんでした。」
「ありがとな!少し休んでいろ!あとは、俺達でなんとかする!」
「いえいえ...」
道場の中に入るとそこには禍々しい妖力が溢れていた。
「志波竝桜華っていうガキはここにいるか?」
「お前ら誰だ?俺のところの門下生じゃねぇだろ?」
「こっちが質問しているんだがな!」
門下生の一人をこっちに投げ出した。
その門下生の顔と体には複数の痣が出ていた。
「コイツらがもっと痛い目に遭わされる方がいいか?」
刀を門下生の首に近づけた瞬間、鹿洲は
刀を鞘から抜いてこう呟いた。
「アイツに変わって俺が相手してやるよ!」
「お前にはまだ、はやいだろ?」
「爺!はやいかどうかなんて関係ねぇだろ?うちの奴らがやられて黙って見てるわけにはいかねぇ!」
相手の目の前に立ち、こう呟いた。
「お前らも抜けよ!どうせ、妖力だだ漏れのその妖刀。見えてんだよ。」
「言うじゃねぇか!お前は手を出すなよ!八吉!」
「・・・好きにしろ!」
「増やせ!一后!さぁ、かかってこいよ!」
「何の変化もない。あの刀の能力は一体?」
相手の攻撃を避けながら刀で反撃していく。
そんな中、相手は不敵な笑みを浮かべてこう呟いた。
「ありがとな!おかげで能力が使えるぜ!」
相手と並ぶように白い靄が浮かび上がる。
その靄は相手と同じ体の形をしており、相手と同じ顔付きをしていた。
「あいつの能力...まさか分身か?」
「いいね〜!!俺の妖刀の能力はそう、分身さ!俺が傷を受ける度、俺の分身は徐々に増えていく。それにお前が持つその刀、妖力がないんだろう?だったら結界に入った瞬間から俺の勝ちは決定してるんだよ!」
刀と刀がぶつかり合う。
鹿洲の刀の刀身にひびが入った。
「まだ、戦ってそんな経っていないはずなのに刀にひびが入るなんてねぇだろう?」
「おやおや、剣道場のやつもこんな程度か?」
「随分と舐めてやがるぜ!コイツ!」
鹿洲に斬りかかる瞬間、どこからか刀が飛んできた。
「あ?誰だ!せっかく、ここから良いところだったのによ!」
「あぁ、すまないすまない!手が滑ってしまった。弱いものいじめは楽しいかい?なら僕も混ぜてもらってもいいかな?」
「お前か?邪魔したの?」
「そうだと言ったら?」
「ならお前からぶっ潰す。」
「やれやれ!仕方がない!なら少し遊んであげよう!」
刀に手をかけこう呟いた。
「朽ちろ!咎音!!」
「舐めやがって!お前なんて一瞬で...」
話している途中に咎音の切っ先が一后の切っ先に触れた瞬間、一后が跡形もなく崩れ落ちていった。
「何が起きた?」
「分からないかい?君の妖刀の切っ先に触れたことによって君の妖刀が腐蝕をはじめたって話さ!」
「妖刀が折れようがおれはまだ終わってねぇ〜!」
男が狂死郎に襲いかかろうとした瞬間、狂死郎はそれを避けて相手に一撃を打ち込んだ。
気絶していく男に向けてこう言い放った。
「安心しろ!死にはしない峰打ちだからね!さてと...」
桜華の方をみるとそこには大きな図体をした男が桜華の前に立ちふさがっていた。
「お前...コロス!」
「何だ?コイツ、喋れるのか?」
「唸れ!妃猿」
同時に、甲高い音が鳴り響く。
それを聞きつけどこからか動物たちが八吉の周辺に集まっていた。
八吉が切っ先を桜華に向けた途端、動物たちは桜華に向かって襲いかかっていた。
「何だ?これ...おもしれぇ能力じゃねぇか?」
動物たちの攻撃を避けながらそう呟いた。
「ならこれならどうだ?」
動物たちの姿が消え、桜華が地面に着地すると同時に地面が砂のように変化した。
「ん?これは...」
地面に吸い寄せられるように落ちていく。
その中には、巨大な蟻地獄なような姿が見えた。
それに食われる瞬間に刀を抜いて斬り裂いた。
「やったか?」
「ふぅ〜!危なかったぜ!」
「まだ、やられていないか...」
「いい能力じゃねぇか?その能力を持っていながら悪い方に使うなんて持ったいねぇな〜!」
「お前ごときに何がわかる?」
「ったく、だったらやるしかねぇよな!舞い散れ!夜桜!」
刀を抜いたときに花びら状に変わった。
相手が桜華に向けて攻撃を仕掛けた瞬間、桜華はフッと笑いそれを避けた。
刀の上に乗り、こう呟いた。
「これで終わりだな!」
八吉の周りを囲むように夜桜の花びらが散っていた。
「これは一体?」
男はその花びらに触れようとした瞬間、桜華はこう呟いた。
「おっと、それに触れるなよ!傷がつきたくないのならな!」
男はこう呟いた。
「オレの負けだ!」
剣道場を襲撃した自称道場破りの二人の妖刀使いを警察に引き渡した。
「何とかなったね!桜華!」
「あぁ、ありがとうな!狂死郎!」
門下生と鹿洲の傷はそこまで酷くないと医者は言っていた。
その言葉に安心して桜華はこう呟いた。
「さて、なら帰るとしようか!お前もどうだ?狂死郎!」
「君がそういうなら僕も寄らせてもらうとするよ!」
その日は今でも思い出すくらい思い出にのこっていた。




