第五十六話戦國人伝パート13
1591年...
豊臣秀吉の弟である秀長が死去した。
それを機に次々と秀吉に仕えていたものたちが亡くなっていった。
伏見城天守閣ーーー
誰もいない場所でたった一人暗く染まった空を見上げながら杯に酒を注ぎ飲む男がいた。
その男はどこか悲しそうな顔をしていた。
同年12月に豊臣秀吉は甥の秀次に関白職を譲った。
そして、1592年...
日本を統一を終えた秀吉が次にお隣の朝鮮へと兵を出した。
「今こそ!他の国に我々日ノ本の力を見せるのじゃ〜!」
秀吉の掛け声と共に多くの兵士が釜山へと出陣していく。
その際、秀吉に各武将へ餞別として自身の宝物を管理している場所からわずか所持していた妖刀あるいは妖槍を渡したとされている。
その後、朝鮮出兵の地では見たことのない刀が戦場をかき乱していたとされている。
後の朝鮮出兵時のことを朝鮮側から描いた文献...朝鮮国自閉伝にも描かれていた。
その1年後...後の文禄の役の講和交渉により戦闘が一時休戦となった。
その頃、国内では秀吉に対しての不満が高まっていた。
朝鮮出兵による兵糧を多く手に入れなければならなかったため全国の農民に重税として本来の数量よりもはるかに多くの米を納めるようにと各農民に伝えられた。
「なぁ、見ろよ!」
そこには米が納められないと言い米を納める量を少なくしてくれと土下座している服がボロボロなみすぼらしい男が地面に頭をつけて懇願していた。
「それは無理だ!我々だって耐えながらやっている。すまないが諦めてくれ!」
そう言われても男はその場から立ち去らなかった。
「頼む...俺にはまだ小さい子供がいる。寝たきりの女房だっている。だから俺はどうなってもいい。でも子供と女房くらいは食わせてやりたい。」
必死に懇願していると大きな笑い声と共に一人の兵士がやってきてこう呟いた。
「所詮、お前らが作るものは俺たち武人のもの何が俺はどうなってもいいだ!笑わせるな!お前らの命など家畜以下だ!」
男を蹴り飛ばしながら一人の兵士は呟いた。
蹴り飛ばした男の方へ寄っていく者がいた。
「大丈夫か?これだけの兵糧があればたりるか?」
男の後には荷車が見えないくらいの兵糧が積んであった。
「いただいてもいいのですか?」
「あぁ、持っていけ!この場から早く去れ!」
「ありがとうございます!」
「お前が噂の秀吉様に各地では向かっている奴らか...」
そこには笠を深く被った男が異様なオーラを放っていた。
「そうだとしたら?」
「お前をここで討ち取り秀吉様への手見上げにしてやる。」
「やれるもんならやってみろ!」
力に任せて相手が刀を抜き襲いかかる。
それをかわしながら相手の攻撃をただ見つめていた。
「なんだ?コイツさっきから避けてばかりじゃねぇか!」
あらゆる剣戟をかわしながら男は相手の剣速が緩んだタイミングで仕掛けだした。
「なんだ?今のは...」
刀を弾いたと同時に切っ先を首元に突き立てた。
「ヒィ...」
「おとなしくこの場を去るかそれともここで討ち取られるか好きな方を選べ!」
他の武人は自らその場から逃げ出した。
それを見て、男はこう呟いた。
「参った!俺の負けだ...ここは引く。」
残りの兵を連れ速やかにその場を去った。
秀吉が統治してわずか数年足らずで庶民の暮らしは重い税に蝕まわれた。
1595年...
秀吉の関白職を継いだ秀次が高野山にて秀吉の命により切腹を命じられた。
秀次が切腹をした後、秀次の子供や妻など含めた者たちが京都の三条河原にて処刑された。
そして、1596.7年には明との和平交渉が決別し再び各大名が朝鮮出兵へと駆り出された。
1598年...
それは、千子島での出来事だった。
千子島に到着し島を見て回っていたとき、突如として矢が秀吉の駕籠へ放たれた。
矢が橋に突き刺さったタイミングで兵士達が丘にいる桃郎たちに気づく。
「いたぞ!奴らを追え〜!!」
兵士達は丘上へ動き出したタイミングで草むらの中を徐々に進んでいく。
そして、橋にいる駕籠の周辺にいる護衛が声を上げた。
「お前は誰だ?」
義経は何も話さず間合いに近づき鬼神のごとく一人を斬り裂いた。
もう、一人はそれに怯み逃げ出そうとしたタイミングで後ろから首元を掻っ切る。
そして、駕籠に向けて刃を突き刺した途端、どこからか声が聞こえた。
橋の先には一人の男がいた。
その男は悪魔のように微笑みながらこう呟いた。
「なぜ?お前がわしに歯向かう?三代目炎閣よ...」
義経...炎閣は笑みを浮かべ呟いた。
「秀吉よ...民が未だに苦しみ、悲しみを抱いているのがわかるか?」
「民などただの雑兵と同じ言わば、将棋の駒と同じだ。この世は強い者のみが生きることを許される...弱者などただの雑兵に等しい。それだけの話だ。苦しみ、痛み、悲しみ?それが何だという。」
炎閣は飽きれた顔を浮かべ、呟いた。
「やはり、お前はここで斬らねばならぬか...」
「はじめるとしよう!炎閣よ。」
両者の刃が交わる反動で大地が揺れる。
千子島の活火山が噴き出す。
マグマが間を流れていく中、豊臣秀吉は義経に向けて言った。
「さすがはわしと互角にやりあうとは...」
炎閣は秀吉を見つめながら静かに呟いた。
「互角?何を言っている。」
秀吉の片腕が一瞬にして斬り裂かれた。
「な...ぬ...」
刃を交えている少ないタイミングで腕を斬り裂く斬撃を放つなど...
まさかあの時か?...
それは刀を鞘に収める一瞬にして鞘から抜き一太刀を浴びせた。
わずか、5秒いないの出来事...
殺意の目がいつもよりもまして秀吉を睨んでいる。
白髪で長髪、そして刀の刀身には蒼く揺らめく炎を纏っていた。
「そろそろ決着をつけるとしよう。」
秀吉の刃と炎閣の刃が交わる。
秀吉の刀の刀身から黒い炎が放たれた。
それを刀で斬り裂くと同時に秀吉が襲いかかった。
攻撃を受け流しながら相手の隙ができるタイミングを見計らって刀身に蒼く揺らめく炎を溜める。
黒い炎を刀身に纏って義経の片腕を斬り裂いた。
タイミングを見計らってわずかの隙に蒼く揺らめく炎を纏った刀で秀吉の首を討ち取った。
「ぐ....ぬ....」
首を斬られる直前、秀吉は首を斬らぬまいと踏ん張っていた。
しかし、それは意味をなさない。
なぜならその炎は何よりも迷いのない一刀だから...
秀吉は首を切られてもなお、こう呟いた。
「まだ、死ぬわけにはいかぬ!わしには成さなければならぬことがある。そのためには...」
義経は振り返り際にこう呟いた。
「いや、もう終わりだ!秀吉。」
意識が飛んでいきそうな中、秀吉はこう思っていた。
またいつの日か目覚めたとき必ずお前を討つ!龍神...義経〜!!
秀吉の死はその後、数日のうちに全国に届いた。
そして、それは朝鮮出兵していた兵にも伝わった。




