第五十四話戦國人伝パート11
休憩を少し挟んだあと、剣は続きのページをめくった。
めくったページの1枚がボロボロに破かれていた。
「これは?」
炎閣にそのページを見せるとこう呟いた。
「あぁ、そこのページな〜!すまぬ!読んでいた時についお茶をこぼしてしまってな〜!代わりにわしが語ろうか?」
「えっ!いいんですか?可能ならお願いしたいです!」
目をキラキラさせた剣が呟いた。
「あぁ、いいとも!」
それは1583年の出来事だった。
山崎の戦いで明智光秀を討ち取った羽柴秀吉は信長に継ぐ天下人に近い存在だとされていた。
そして、信長亡き後に織田家の家督を継ぐものとして柴田勝家と秀吉はそれぞれ違う跡継ぎを立てて争った。
織田信孝を次の家督後継者とする柴田勝家と三法師を次の家督後継者とする羽柴秀吉による戦いであった。
「秀吉を討つしかあるまい!」
刀や槍を持つ兵士たちが秀吉軍とぶつかり合った。
そんな中、柴田勝家側の兵士たちを薙ぎ払う男がいた。
「こんな、ものかよ!勝家も大したことないな〜!」
槍を持った男が大きな声で呟いた。
「屠れ!片鎌槍!」
枝刃が片方にしかついていない妖力を纏った槍が縦横無尽に敵兵を斬り裂いていた。
やられた兵士たちが立ち上がり、生きている味方の兵士に襲いかかる。
「なんだ?これは...」
まるで、飢えに飢えたもの達が同類を食い殺すように味方だった奴らが襲いかかってきた。
クソ...どうなっているんだ...まるで地獄じゃないか
その光景を見ていた敵兵士はこう呟いた。
「やるじゃないか?清正!!」
「そちらは片付いたのか?正則!」
「あぁ、あれを見ろよ!」
そこには無惨にも斬り刻まれた遺体の数々があり、その近くには首だけのタワーが出来ていた。
「さてと...もっと俺の飢えを満たしてくれよ!」
柴田軍から見ればそれは圧倒的強者による蹂躙だったのだろう。
戦いは夕方まで続き、一次的に休戦をしていた。
陣営内でわずかな飯を食べていると伝達兵から急報が送られてきた。
それを聞いた時、勝家はうつむき陣営の外へと出向いた。
その内容は...
前田利家率いる軍勢の陣営が物家の殻となっているとのことだった。
「利家殿、一体なにを考えておられる?」
空を見つめながらどこか悲しいような顔をしていた。
前日に比べ、秀吉の軍勢は増していた。
そして、護ってくれる利家もいない。
そんな状況でも刃を手に両者は今日も戦っていた。
しかし、圧倒的な火力を秘めた妖刀により柴田軍に大きな打撃が入った。
それは柴田軍から見れば圧倒的な差を見せつけられていた。
「この戦は...負け戦か...もはやこれまで」
わずかな兵を率いてその場から逃走した。
その後、柴田勝家は居城の北ノ庄城にて秀吉軍に囲まれた城の中で妻のお市の方を刺殺した。
「すまない!お市よ!」
お市を刺殺した後に自身の家臣にこう辞世の句を残した。
「夏の夜の 夢路はかなき あとの名を 雲井にあげよ 山ほととぎす(夏の夜に見る夢のように短く儚い人生であったが、山ホトトギスよ、どうか私の名を雲の上(後世)まで高くあげてくれ)」
その後自身の刀で腹を十文字に裂き、腸を掴みだしこう家臣に告げた。
「わが首を斬り落とせ!」
家臣は震えた刃を落ち着かせ、その後躊躇わずに勝家の首を落とした。
その後、その首は秀吉の元へ送られた。
そして、もう一人勝家と共に秀吉に抗っていた信孝は勝家が自害をしたことを聞き岐阜城を開城した。
その後、尾張野間(愛知県美浜町)の内海大御堂寺(野間大坊)に移された後、兄信雄の命が下された。
「信孝よ!貴様を切腹に処す!」
それにより、信孝はこう辞世の句を残した。
「昔より 主をうつみの 野間なれば 報いを待てや 羽柴筑前(ここ野間は、昔から主君を討った者(源義朝)の因縁がある土地なのだから、お前(羽柴筑前=羽柴秀吉)も同じように、必ずや天罰や報いを受ける時が来るのを待つがよい)」
信孝は切腹の際、腹をかき切って腸をつかみ出すと、床の間にかかっていた梅の掛け軸に臓物を投げつけたと語り継がれた。
享年26だった。
そして、その数ヶ月後に大阪城の築城が始まった。
1584年...
小牧長久手にて、豊臣軍と徳川織田連合による戦がはじまった。
豊臣の兵力が多かったが徳川方には初代炎閣も加わっていた。
戦場を見つめていると背後から気配を感じた。
「久しいね!弥彦...いや、今は炎閣と呼んだほうがいいか?」
「お前は何しに来た。二代目いや、わしは一族の汚点。」
「おぉ...こわっ!ひどいな〜!僕は君たち一族を救おうとしただけなのに!それであれは君が作ったんだろう?」
複数の武人が持つ刀を指しながら光久は言った。
炎閣はこう答えた。
「十ニ神刀に代わる新たな妖刀を作ってくれと頼まれたんだ...家康公に...」
「へぇ、君も作っていたんだ...認識識別固有妖刀を」
「お前...なぜそれを?」
「私も作っていたのさ!この国すらも滅ぼすであろう妖刀を...」
そう、それは後に多くの犠牲を増やすための道具に過ぎなかったのだろう。
認識識別固有妖刀と呼ばれた妖刀がはじめて使われた戦いだった。
その光景はあまりにも酷く、そして周囲の兵士たちは恐れ慄いた。
「朽ちろ!咎音」
妖刀を鞘から抜いた途端、徳川方の兵士たちの身体が徐々に腐っていった。
炎閣はその光景を見つめながら呟いた。
「あれは...」
「そうさ!あれこそ、僕が望んでいた妖刀のあるべき姿ってやつさ!」
「あるべき姿...」
刀は人を殺すための道具にしか過ぎないかもしれない。
だが、あれは刀ではなく化け物と同じだと思う。
そんな、状況の中一人の家臣が咎音を操る妖刀使いに斬り掛かった。
「お前も...妖刀使いか?」
「あぁ、あながち間違いじゃねぇな!」
「欺け!南雲!!」
周囲が静まり返る。
手が震え始め、視界が霞んでいく。
思うように身体が動かなくなっていた。
まさに毒を吸っているように...
妖刀 南雲の能力
それは使用者の息から出た二酸化炭素を蓄積しより高濃度の二酸化炭素を放出する。その際、半径5キロ圏内は二酸化炭素により汚染される。しかし、半径を自在に変えることが可能となる。
両者の妖刀が交わる景色を見つめながら炎閣は呟いた。
「どうやらわしの見込んだものの方が一枚上手のようじゃ!」
腐蝕の能力が発動するタイミングで避けて、刀を持つ腕を斬り落とした。
と同時に豊臣兵士たちが逃げていった。
そのことがきっかけとなり、徳川軍は豊臣軍を押し出したはずだった。
家康に伝令兵がこう告げた。
「豊臣秀吉が信雄に接触し和睦した。」
それにより、徳川は撤退したことにより停戦となった。




