第五十三話 戦國人伝パート10
本能寺跡...
一人の男が埋もれていた瓦礫の山から抜け出し立ち上がる。
本来は、動けるはずもないくらいの怪我を負っていてもおかしくないだが奴はそれがなかったように立ち上がった。
「信長め!最期の足掻きをやってくれたわ!」
皮膚が焼けただれているところを自身の妖刀で斬り裂き、太閤天の能力でまた異なる妖刀の能力を使い再生させた。
「さてと、残りは光秀だけじゃな...」
同年6月13日...
後の歴史上、明智光秀と豊臣秀吉による戦いだと知られている。
「急いで遠くへ逃げなければ...」
馬を走らせていく道中、目の前に数人の兵士と一人の男が立ちはだかっていた。
「来ると思っていたぞ!光秀!」
「先回りされていたか...」
「さぁ、次はお前だ!」
豊臣兵士たちが襲いかかる。
「燃え盛れ!伊邪那美」
刀身が燃え上がる。
その刀からは凄まじいほどの妖力で満ちあふれていた。
兵士たちの攻撃を薙ぎ払い、素早い速度の剣速で兵士たちを斬り裂いた。
拍手をしながら、羽柴秀吉は明智を見つめながらこう言い放った。
「以前よりも増して煌めく炎か...しかしこうもあっさりとやられてしまうとはこれは後で躾をしなければならぬな!」
他の兵士たちに向けて秀吉はこう言い放った。
「下がっているがよい!貴様らには少々重すぎたようだ...わしがやる。」
鞘から刀を抜いたと同時に他の妖刀と桁外れの妖力が溢れていく。
双方の鞘を頭上に投げ鞘が地面に着地する瞬間、双方の刃がぶつかり合った。
刃と刃が交わる中、秀吉は自身の左手に隠し持っていた砂を明智の顔に投げた。
「目眩ましか...」
視界を一瞬奪われたと同時に秀吉の妖刀の刀身が黒い炎で覆われる。
その刀を振り下ろす瞬間、ギリギリで伊邪那美の刃で受け流した。
「視界を失われてもなお、音でしのぎきったか...やりおる。」
刀同士の鍔迫り合いへ持ち込み、相手との押し合いが続く中、光秀は秀吉に問いかけた。
「なぜ?信長様を討った!あの方なら本当にこの国を一つに統一できたかもしれなかったんだぞ!」
「決まっておろう!わしが目指す国には弱者など必要ない!」
それは...かつて秀吉がまだ幼かった頃...
6歳になる少し前だった。
わしの家は貧しかった。
服も襤褸を着て貧しいなりに何とか食いつないで過ごしていた。
粟や稗、麦などの雑穀を主食に、一汁一菜の質素なものを家族で分け合い食べて飢えをしのいだ。
だが、そんな幸せはそう長くなかった。
戦に出稼ぎに行っていた親父は戦で負った傷が原因で俺が8歳の時に死んだ。
その後、母親が再婚した相手はオヤジよりもクソだった。
働きもせずにただひたすら酒にひたり時には俺たちを殴る蹴るは当たり前だった。
酒がなければ母親もよく殴られていたのを覚えている。
それが、続いていくそう思っていた。
あの日までは...
家の外で誰かが怒鳴り声を上げていた。
その声は聞き覚えがあった。
クソ親父だった。
外へ出て家から覗いてみるとそこには四つん這いになってひれ伏せているアイツの姿があった。
「この度は誠に申し訳ございません!何卒お許しください。」
夫婦揃って土下座して甲冑を着た侍に謝っている光景をみたとき、ふと笑い出した。
何だよ...その手があるじゃねぇかよ...
きっと、それがきっかけだったのだろう。
わしにとって弱者を嫌いになったのが...
その侍の前に立ち気がつけばその周りの者たちを俺は殺していた。
きっと、相手から見たらたまったもんじゃないだろう。
何せ、まだ幼い子供が自身の親と周りの兵士を斬り伏せるなど...
母親の悲鳴が響き渡ると同時に父親の首が地面に転がる。
それを見つめながら幼い子供は笑っていた。
「何だ...この幼子は…!」
その時、周りは凍りついたのだろう。
この幼子、その者に...
1582年...
爆炎に包まれ双方ふっ飛ばされた。
爆炎の中から一人の男がこっちに向かって歩いてきていた。
「お前には、わからぬよ!光秀。
貧しい者の気持ちなど...」
光秀は立ち上がり、こう呟いた。
「あぁ、そうかもしれぬ!だが、あのお方は民が生きやすいそんな世の中をつくるために一刻もはやく、この国を統一するために動いていた。だから私はこの手を血で塗り固められた泥に塗れようとも刃を振るい続けた。」
「それが何だという!所詮、この世は強きものが正義。弱い者は悪と同類!そんなものだろう?」
「そうだとしても俺はお前を討ち、信長様が願う世のために命をかける。」
自身の左手の指先から血を妖刀に垂らしこう呟いた。
「妖装解放!戒雲炎狐伊邪那美!!」
右上半身を迸る炎が包み込む。
「さぁ、共に参ろうぞ!秀吉!信長様の元へ!」
この状態になれば最後...確実に焼死する。
そうわかっていても光秀はその刃を鞘に納めることなどできなかった。
なぜって?
それは自身の唯一無二の友が誤った道を進むのを止めるために...
彼は、炎を纏った狐とともに走り出した。
狐が秀吉に襲いかかる。
それを薙ぎ払い、秀吉は光秀の攻撃を刀で防いだ瞬間、光秀の姿が消えた。
それは、幻のように秀吉の背後から腹部を斬り裂いた。
「これで終わりだ秀吉!!」
二人同時に迸るほど燃え上がっていたはず...だった。
「惜しかったな!光秀!」
そこには傷すらついていない秀吉が立っていた。
「どうだ?夢をみた気分は?」
「なん...だと...」
「わしの妖刀の力でお前がわしを倒したと錯覚させていただけじゃよ!そのおかげでお前に容易く近づけたわけじゃ!」
「くっ...秀吉ィ〜〜〜!!」
「さらばじゃ!我が友よ!」
刀で首が落とされる音が響きわたる。
首以外の体は燃え尽きて灰になったが首はまだ、秀吉が左手に持っていた。
その日は大雨が降り続く日だった。
後にこの戦いは山崎の戦いと呼ばれる戦いだった。
大正時代 華身一刀流剣道場・・・
戦國人伝を読み進めていると炎閣がお茶と和菓子を用意し、剣にこう呟いた。
「どうじゃ?一回休憩せぬか?」
「わぁ〜、ありがとうございます!」
剣はお茶を飲みながら炎閣にこう話した。
「炎閣さんは織田信長さんのことをどう思ってます?」
炎閣はフッと笑いこう呟いた。
「今でも、殿との毎日を思い出すよ!何せ、今のわしがあるのはあのお方のおかげじゃからな!」
「きっと、信長さんもあの世で僕たちを見守ってくれてますよ!」
「そうか?剣よ...」
今から思い返せば他愛ない話だったのかもしれない。
それでも、僕は忘れないあなたが言っていた言葉を...




