第五十二話戦國人伝パート9
1582年5月31日...
早朝、4時頃だった。
それはいつもよりも強い雨が降り続く日だった。
泥水の中、馬の手綱を握り走る男がいた。
馬を城の前に止め中へと全速力で走る。
「...信長様はもう行かれたか?」
「信長様なら5日ほど前から京都へ参られておるぞ!」
「チッ...炎閣殿ありがとう。」
「光秀殿!一体どうした?」
「秀吉が裏切った。」
「秀吉殿が...しかし今彼は中国攻めの途中では?」
「いや、きっと影武者を用意してそっちが中国攻めに向かっている。それ故に秀吉は京都へ向かっているはずだ。なんとか阻止しなければ...」
「誰からそのようなことを聞いた?」
...6日前...
大きな声で誰かが呼んでいる。
城門を開け外へ出るとそこには前田利家が馬に跨り待っていた。
「どうされた?利家殿!」
「明智殿...今から話すことはなるべく誰にも話してはならぬぞ!」
静まり返った池を見つめながら利家は光秀に語り始めた。
とある日にたまたま、秀吉たちが話しているのを盗み聞いていたら信長を討つための作戦会議をしていた。
「信長を討つためにどうするべきか...」
「一つだけ方法がありますよ!」
「二代目炎閣よ!もうしてみよ!」
それは...自軍の兜と武器を捨て明智の旗を掲げ、秀吉軍自身明智と誤解させる方法だった。
そして、その場に居合わせたものは後に怪しい気配を感じたという。
それを聞き、急ぎ甲冑を着て馬で城へと駆けつけたが時すでに遅かった。
城内...
「ありがとう。炎閣殿!行って参る。」
馬を走らせ、ひたすら京へと急ぐ。
2日間かけようやく京へたどり着いた。
「急ぎ本能寺へ向かわなければ...」
本能寺へたどり着いたと同時に東西南北に明智の旗が見えた。
1582年6月2日早朝...
井戸で顔を洗っていると何やら本能寺の門の方から声が聞こえたと同時に悲鳴が響き渡る。
「何事じゃ?」
信長はそう呟くと同時に家臣が信長の元へ向かいこう告げた。
「殿!先ほど明智の旗を掲げた軍勢がこの本能寺周辺を囲んでいるとの報告がございました!」
「明智の軍勢の数は?」
「明智の数約一万三千の兵とのこと...我々よりも倍以上の兵力でございます!」
そこへ裏から周り忍び込んだ光秀が信長の元へと駆けつけた。
「信長様!ご無事で何よりです!」
「なぜお前がここにいる?光秀、そしてこの寺を囲んでいるのはお前の兵ではないのか?」
「いいえ、私の兵ではございませぬ!あれは羽柴秀吉が率いる兵です。」
「何?猿か?」
門が壊され、一人の男が入ると同時に兵士たちも続々と入ってきた。
それと同時に火の矢によって本能寺が燃えていった。
「敵は本能寺にあり!第六天魔王を討て!」
大声で叫ぶ中、信長に向かい秀吉は呟いた。
「随分と手薄な状態でよくもまぁ、この都を歩けますね!信長公!いや、織田信長!!」
秀吉は続けてこう呟いた。
「さぁ、ここで決着をつきましょう...信長公!」
秀吉の左手には見たことのない妖刀が握られていた。
その妖刀からは禍々しい負のオーラが流れていた。
「初めからわかっていたがなんだ...その妖刀は?」
「そりゃ、あなたもそして弥彦殿も知らないでしょうな!何せこの妖刀は私が直々に作らせたのだから...」
両者が刀を構える瞬間、蘭丸が呟いた。
「信長様、ここは私にお任せを...」
「駄目だ...わしが許さぬ!お前と光秀は早く逃げろ!」
「いえ、私は戦います!あなたを守り抜くのが私の使命ですから...」
「奔れ!雷光!」
刀を抜いたと同時に神速の刃が秀吉に襲いかかる。
しかし、それを一瞬で見切り防いだ。
「一瞬で見抜いただと...」
「威勢はいい!だが、まだまだ甘いな!」
刀を振り払い、腹に蹴りをかました。
周りを見渡せば、百人近くいた仲間が次々と倒れていく。
そんな状況の中、蘭丸は立ち上がりこう呟いた。
「まだだ...まだ、やらせはしない!」
「ほう...中々根性はあるようだな!
じゃが、ここまでだな。」
蘭丸が立ち上がると同時に秀吉は鞘から刀を抜き言い放った。
「この世界の理は我のみぞ知る!」
その刀から溢れる妖力は黒く濁った水のように黒に染まっていた。
無数の雷撃が蘭丸に襲いかかる。
それを躱しながら相手の隙を突こうとしたタイミングで秀吉はニヤリと笑いこう呟いた。
「とんで火に入る夏の虫とはこのことじゃな...」
四方八方から放たれた蜘蛛の糸により身動きが封じられた。
蘭丸は信長に目線を送り、目には涙を浮かべ何かを呟いた。
それを理解したとき、信長の瞳から一粒の涙が流れた。
「あなたは〇〇〇...」
その言葉を信長に伝えた瞬間に一太刀で首を斬り落とした。
「ら...蘭丸...」
目の前に死というものが迫っている中で信長はその状況になってもまだ、刃をとり秀吉に斬り掛かった。
しかし、攻撃が来るのが分かっているかのように秀吉は信長の攻撃を弾き返した。
「何...」
一瞬にして摩天の攻撃を無効にされた。
「やはり、こんなものか...あなたが持つその妖刀摩天の能力はすでに封じられた。さて、これからどうする?」
刀を握り秀吉に斬りかかる。
しかし、その刃を弾き返し信長に言い放った。
「これで終わりにしよう。」
妖刀に妖力を流し込み信長に向け漆黒の光を放った。
その光を受け身で構えて受け止めようとしたとき信長はこう告げた。
「秀吉よ...お前には天下を取ることなどできぬ!何せお前はその器ではなく、ただの凡人と同じだからな...」
その光は信長の胸を貫いていた。
「負け犬の遠吠えか...」
「それはどうかな?」
信長は自身の懐に忍ばせておいた爆弾と望遠鏡を取り出し、望遠鏡を光秀に渡し光秀を外へ押し出した。
「お前は生きろ!光秀!!」
光秀を外へ押し出した後、信長は爆弾に火をつけて秀吉に微笑みながら呟いた。
「さぁ、共に地獄へ参ろうぞ!秀吉よ!」
花火のような大きな爆発音が鳴り響く。
本能寺が跡形もなく吹き飛ぶ。
その光景を離れた場所から見つめていた光秀が地べたに崩れ落ち、拳を地面へと叩いた。
「クソ...クソ...」
変えられたかもしれない。
そう、期待していた自分がいた。
でも、結果は変わらなかった。
跡形もなく灰とかした本能寺をただ見つめていると灰から立ち上がる一人の男がいた。
「秀吉...」
「思っていたより、わしも受けてしまうとはな...だが、この程度の傷すぐに治せる。」
秀吉は光秀を見つめながら、次は貴様だ!というような目で光秀を見ていた。
「秀吉...お前だけは俺が討ち取る!!」
1582年...織田信長、本能寺にて羽柴秀吉にて討たれる。
しかし、後にこの出来事は明智光秀によって討たれたと歴史上は塗り替えられた。
その後、光秀はすぐさま本能寺から馬を走らせ離れていった。




