第四十四話 戦國人伝パート1
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
引用 平家物語より
・・・華身一刀流剣道場・・・
剣道場に戻ってくるとそこには炎閣が何かを握りしめて座っていた。
「炎閣さん!それはなんです?」
炎閣は巻物を剣に渡し呟いた。
「あぁ、これか?これは戦國人伝というわしが書いた巻物じゃよ!」
「見てもいいです?」
炎閣に確認をとると炎閣は微笑みながら呟いた。
「あぁ、いいとも!」
巻物を開くと最初にこう綴られていた。
「これはまだ見ぬ!若人たちに語るために残す。戦乱の世の真実を...」
それは、後の世で戦國時代と呼ばれる一つの歴史の物語。
時は群雄割拠の時代のはじまりだとされているのは1467年に起きた応仁の乱がはじまりだった。
当時の将軍8代目足利義政の跡継ぎを巡り起きた戦いだった。
その乱は11年もの間、長きに渡って続いていった。
そして、1493年(明応2年)、管領・細川政元が10代将軍・足利義稙を追放し、足利義澄を11代将軍に擁立したクーデターにより家臣によって簡単に上を変えられたことによって幕府の権威は失墜し戦國時代を迎えたとされている。
そして、戦國時代に今二人の男によって後にこの国は統一への一途を辿っていくはずだった。
1554年 ・・・千子島・・・
ちょうど、それはいつもと同じ晴天の空が照らしていたときだった。
そのお方は今まで島で見たことがない格好をしていた。
「遠路はるばる、こんな遠くの孤島へ足を運んでいただきありがとうございます。信長様」
「遅くなって悪かったな!義輝よ!」
何やら本土から来た武人らしい。
その人の目には俺にすら見えない光が宿っていた。
掃除をしているとき、武人が声をかけてきた。
「お主、掃除は好きか?」
そう、その武人は問う。
「掃除も好きですし、鍛冶場で刀を打つのも好きです。」
信長は驚いた顔をしたあと、すぐに微笑んで言った。
「お主、名は?」
「龍神弥彦と申します。」
「いかんいかん!名乗っていなかったな。わしの名は信長!織田信長じゃ!」
そう、それがあのお方との出会いじゃった。
そのお方の名は...「平朝臣織田上総介信長(たいらのあそみ おだ かずさのすけ のぶなが)」だった。
元々は若い頃は藤原氏を名乗っていたが後に天下統一を目指す過程で朝廷に権威を示すために改名したが、それはまた別の話。
※八色の姓という684年の制度で上から2番目に作られた、貴族や有力者に与えられた尊称。
初代炎閣がまだ、二十六の頃。
信長が二十歳の頃だった。
そして、それからわしと信長公はいろいろな話をしていった。
「炎閣よ!お前は刀をどうみる?」
「私から見ればただの人殺しの道具にしか過ぎませぬ。」
「そうか、わしは刀を使うのは人だと思っておる。人を傷つけるのは人。そのために武器というものを作り、争いを生み出す。わしには一つ大きな野望がある。この日ノ本の国に住む民が笑って暮らせる。そんな国をわしは作りたい!そう思ってこれから動いていく。」
炎閣は信長の言葉を聞きこうつぶやいた。
「ならば!わたしもその願いのためにあなたに力を貸しましょう!」
それは単なる戯言ではない。
今まで戦とは関係ない多くの民が多くの大名に虐げられ、土地を追われるものたちも多く居たのだろう。
そういう話をよく、幼き頃から聞いていた。
だからこそ彼は動き出す。
何故なら、それが彼の夢だから...
そして、出会いから6年の時が経過した。
1560年...後の世を動かす男が目覚めた瞬間だったのかもしれない。
今川軍勢によって尾張への国境地帯へ進出され尾張の砦が次々に落とされた頃、信長は策を練っていた。
・・・尾張国 清洲城・・・
伝令兵からの通達により、砦が攻められていることを聞いた信長は外をみながら悩んでいた。
その時に、別の使いが現れ信長にこう伝えた。
「さきほど、今川義元率いる軍勢!約二万五千ほどが田楽狭間(桶狭間)に向かっているとの知らせが届きました。また、そこで陣を張っているとの情報があります。」
「そうか!分かった!下がってよい!」
「ハッ!!」
家臣たちが信長の方を見つめている。
その場に緊張が走る中、信長は外を見つめながら呟いた。
「うむ!わしも出陣しよう!ただし、少数で行くとしよう。」
信長は空を見つめながらポツリと呟いた。
「今は曇っているがもうじき雨雲にかわる。」
空を見ると曇っていていつでも雨が降りそうな天気だった。
清洲城を出て、ひたすら今川義元が陣を取っている本陣へ馬を走らせた。
土砂で滑りやすくなっている場所も構わず超え、今川義元の本陣がある場所へ奇襲をしかけた。
ほとんどの兵は宴会のように酒が振る舞われ、のんびりくつろぐものが多く本陣の守備が手薄になっていた。
いろいろな好機が重なり、信長は家臣に合図を送ったタイミングで今川本陣の裏から奇襲をかけた。
周りは暗く静まり返っていた。
「なっ!何事じゃ!」
今川義元は慌てた表情を浮かべながらこちらを見る。
そこには無惨にも討ち取られた家臣の生首が転がっていた。
「お前が今川義元か?」
「ちっ、違う。マロは今川氏時じゃ!」
それを見ていた信長の家臣が告げた。
「殿、間違いありません。コヤツが今川義元でございます!一度以前にお会いしたことがあります故に...」
今川は腰を抜かしながらこう言い放った。
「そちら、マロを殺ったらどうなるか?わかっておるのか?マロはこの国を救うかもしれぬ!英雄ぞ!けして、他の者達では真似などできぬ!」
「ならば問おう!貴様ごときにこの日ノ本の国が治められる器だと?」
「そっ、そうじゃ!マロはこの日ノ本の救世主になる男ぞよ!そんなマロを殺めるなどと...」
信長は刀を抜き、今川義元の首を刎ねた。
「笑止千万!!民に救いの手を伸ばさないものなどいつかは国を滅ぼし身を滅ぼすが故に、わしは貴様じゃその担い手にふさわしゅうないわい!」
後にこの戦いはこう語られる。
桶狭間の戦いと...
桶狭間の戦いのその一ヶ月後...
清洲城の城下町を練り歩いていた。
街を歩いていると鍛冶屋の中へと入り、
刀を打っている炎閣に声をかけた。
「炎閣よ!あれから進捗はどうじゃ?」
「お館様に言われたとおり、玉鋼と少量の血を用意して溶かして混ぜ合わせて見ましたよ。そしたらこんな刀が...」
その刀は一見なんの変哲もない刀に見えたが炎閣はそれを手にとある場所へ移動した。
一本の木がある場所へ移動しそこでさきほど見せた刀を持ちこうつぶやいた。
「奔れ!雷光!!」
刀を鞘から抜く瞬間、黄色い閃光のような速さの雷を放った。
それを見ていた信長は頷きながらこう呟いた。
「ようやく完成したか妖刀が...」
「はい!とはいえ、まだ試作段階のものばかりですけどね!なるべく、次の戦までには千本ほど用意できればよいのですが...」
信長は笑いながら続けて呟いた。
「期待してるぞ!炎閣よ!」
妖刀とは?
基本的には普通の刀を作るのと同じ工程だが、一つだけ違うのは材料として血を入れるか入れないかで妖刀かどうかが決まる。
血を取り込んだ刀のイメージが強いが実際のところ、刀を作るときに血を大量に取り込んだものまたは、少量取り込んだものを妖刀と呼ぶ。
また、妖刀にはそれぞれ人や人形と同じく魂が宿っている。
そう、これはとある男の願いを叶えるために生み出されたものが妖刀だった。




