第四十三話平凡
その女性は何処にでもいるおばちゃんとは違い煙管をくわえて着物を着こなしている女性だった。
「ゴロウっていう猫を追えばいいです?どっちにいきました?」
「多分、東の方に走っていたのを見たよ。あっちの方角を行くなら気をつけていきな!何せあっちは通称、ザラの火鉢と呼ばれているからね。」
「ザラの火鉢!?」
「あぁ、いわゆる幕末以降、法律が制定されてから行き場を失ったものたちがこの街の一部に住んでいるのさ。多分、志波竝の若造もそれで一時期、頭を抱えていたんだろうよ!行くんなら気をつけな!」
「ありがとうございます!行ってきます!」
地面を見ると猫の足跡を見つけ、足跡が続いている方向へ進んでいく。
進んでいくと笠を被った流浪人や行き場のない服がボロボロな者たちが暮らしているであろう集落にたどり着いた。
歩いていく度周りの殺気のこもった視線が襲いかかる。
圧が強くのしかかってくる。
どんなだけ死線をくぐり抜けてもその差は今まで自身が戦ってきたものとは違う何かを感じている。
しばらく、そんな圧を恐れずひたすら前に進んでいくと後から声が聞こえた。
「どうしたんや?こんな所に子供一人で?」
後を振り返るとそこには笠で顔を隠した男が立っていた。
「別にただの猫探しだ!」
男は何かをこちらに見せて呟いた。
「猫ってこの子か?」
その猫は少しふっくらとしている猫だった。
「猫は返したる。その代わり一回、僕と刀を交えようや!」
「アンタ名は?」
男は笠を取り、顔を見せた。
男の目は糸目で目の色は青だった。
「そうやった!そうやった!自己紹介がまだやった。僕は山本輝久っていいます!以後お見知りおきを...」
初めの合図と共に両者刀に手をかけた。
剣が輝久に向けて刀を振り下ろす瞬間に輝久が刀を受け流しながら剣に反撃をいれる。
「グッハ...」
「大丈夫!斬ってはいない!ただの峰打ちや!ただ、下手したら折れるかもしれへんけど。」
一瞬、何が起きたか理解できなかった。
俺の剣速よりも速い!
そして、正確に胴体に打ち込まれた。
それによって剣は怯んだ。
剣に刃を向けた瞬間、刃を弾き返して相手の首元に刀を突き立てた。
「やるやん、自分...」
どこからか拍手する音が聞こえた。
「やるじゃないか!坊主。」
そこにはあの場所にいた三佐子がいた。
「アンタ、志波竝から聞いていた以上にやるね!名は?」
「獅子王 剣!」
「獅子王!?どうりで、似ているわけだ!あのバカヤロウに...」
「バカヤロウ?」
「そうさ、アンタのおじいちゃんにあたる獅子王 剣聖はわたしの旦那の友だったのさ!」
剣は驚いた表情を見せ呟いた。
「じゃあ、まさか爺ちゃんのことを...」
「知っているも何もアイツと一時期ともに旅をしていたからね!そこそこ知っているよ。」
「それより、なぜここにあなたが?」
「ただ、通り過ぎに寄ってみただけさ!猫は見つかったんだろう?あの娘に返してやんな!」
猫を抱きかかえ、娘がいる方向へ走り出した。
急いで女の子がいる場所に戻ると女の子が手を振って待っていた。
少女に猫を渡すと女の子が微笑みながら呟いた。
「お兄ちゃんありがとう」
「気をつけて帰るんだぞ〜!!」
少女の猫探しを終えたあと、千代が待っている場所へと走り出す。
一方、千代は橋の上で川を眺めながら呟いた。
「剣...まだかな?」
どうしよう?...初めて二人きりの時間、他の人とかはどうなんだろう?
胸のざわめきが徐々に高まる。
しばらく、待っていると遠くから剣が走ってくるのが見えた。
「はぁ...はぁ...ごっ、ごめん待たせたね!」
「う、ううん!私もさっき着いたところだよ!」
「じゃあ、行こうか!」
剣が千代に手を差し出す。
千代はその掌を握り、共に歩き出した。
それを遠くから二人を見守る少女がいた。
「頑張れ!千代ちゃん!」
共に歩いていく中、千代がとある場所を指差しながら呟いた。
「ちょっと、見てみたいところがあるんだけどいい?」
そこには小間物屋があった。
店のなかにあると千代は簪を見つめながらボソッと呟いた。
「わ〜!これかわいい!」
千代が見ていた先には花柄模様の簪が売っていた。
剣はそれをみて密かにこう思った。
今度、買ってあげよう。
千代の誕生日の日にでも...
その後、二人で食材や他の小間物屋などを見ていく内に時間が過ぎっていった。
街の中にある団子屋により、団子とお茶をしているとき千代が呟いた。
「ねぇ、剣!」
「ん?」
「来年もまた、こうやって二人で買い物とかできたらいいね!」
「うん!そうだね!」
千代はこう思っていた。
本当は...こんな日常が少しだけでも続いてほしいそう願っている。
だけど、今はこの戦いを終わらせるために進むしかないんだ。
夕暮れ時の橋を二人で歩いていくと夕暮れが重なった二人の影を照らしている。
その日の中、二人は他愛もない会話をしながら手を繋ぎ鹿洲たちがいる道場へ戻っていく。
その光景を見守りながら桜華はこう呟いた。
「いい絵になってるな!剣、千代!」
そして、その夜の食事時。
酒に酔った篠波が剣に絡みはじめた。
「お〜い!剣、もっと食え!俺の飯が食えねぇのか?まだ食えるだろう!」
「いや、流石に食いきれないです。」
「嘘つけ!あんだけ今まで食っていただろうがよ!」
「ちょっと、ちょっとそう無理に食わせようとするな!篠波!」
「うるせぇ〜!だったらお前にも食わせるぞ!」
桜華は呆れそうな顔をして呟いた。
「アイツはいつになったら酒癖なおるんだよ!」
「ひっく...酒をもっとよこせ!!」
全員、嫌な顔をしているときに一人がつぶやいた。
「酒ぐらい、今から酒屋こいよ!」
それに絡んで、篠波が呟いた。
「いやだね!酒かう金なんてねぇよ!」
「何だと〜!!」
それは単なるどこにでもある平凡だった。
・・・大阪城 天守閣・・・
誰かが階段を上がる音が響き渡る。
戸が開くとそこには秀吉がだった。
「待っていたぞ!わが愛しの兄弟よ!」
男は、黒い羽織を羽織って髪は長髪のロン毛のような髪型だった。
その男は牢屋の鎖でつながれており、秀吉を見つめながら呟いた。
「久しぶりに人暴れするとしようか、三百年と少しの宴の始まりだ!」
その時、頬に当たった風が冷たく気持ちよく感じた。




