第四十一話 脱出
大地が揺れる振動で、目が覚める。
周りを見渡すと火山灰が今にも降り始めていた。
声が聞こえる...
その声はいつも俺を励ましてくれていた気がする。
「まだ、こんなところでお前を殺させはしない。」
その声はどこか懐かしく...どこか心にグッとくる。
「...鹿洲...さん」
「剣!目覚めたか...悪いが説明は後だ!この島から逃げるぞ!」
急いで、山を下りていく途中どこからか声が聞こえる。
その声は小さな少女がすすり泣く声だった。
剣が鹿洲に言った。
「鹿洲さん、声が聞こえませんか?」
「声?誰のだ?」
「小さい子がすすり泣くような声が...」
周りに耳を傾けると南の方から誰かが泣いているような声が聞こえる。
鹿洲に続けて呟いた。
「俺、ちょっと見てきます!」
「おい!そんなケガでおまえ...」
「大丈夫ですよ!あの修行とかに比べたらこんなケガ」
身体はボロボロなはず...
それでも彼は走り出す。
目の前で助けを求めている子を救えるのなら迷わずに...
鹿洲は一言呟いた。
「はぁ...仕方ないか!早く来いよ!剣」
森の方へ走っていくとそこには一人の幼い少女が座り込んで泣いていた。
「どうしたの?迷子?」
少女は首を横に振り、呟く。
「あのね...おかぁとおっとうとはぐれたの。」
少女をおぶりながら続けて呟いた。
「とりあえず、親御さんがいるかもしれないから浜辺の方に行こうか!」
子供をおぶりながら走っていく最中、子供が剣に言った。
「お兄ちゃん...背中 あったかい!」
確かに背中には子供の温もりが伝わってくる。
それにしてもなぜさっきまであそこに子供一人だけいたのだろう?
頭の中に疑問がよぎる。
森を抜けて、しばらく走っていると浜辺には村人と晃作や鹿洲たちが船で逃げる準備をしていた。
大きな声で叫ぼうとした瞬間、背後からわずかな妖力を感じた。
振り返る瞬間、わずかな殺気を向けた少女が剣を見つめながら呟いた。
「ありがとう!お兄ちゃん!」
「剣!?」
全員が、一斉に剣に叫ぶ。
剣は呟いた。
「大丈夫!これくらいは...」
腹に刺さる寸前、左手で刃を止めながら剣が言った。
「最初から嘘だったのか?」
「なんの話?」
「とぼけるな!お前の親の話だ!」
「あぁ、両親は私自身が殺した。もちろんだいぶ前の話だけどね!」
その少女が握っていた刀はどこか懐かしく感じるものだった。
「たぎれ! 村正」
その妖刀を見た瞬間、剣はフッと笑い呟いた。
「懐かしい妖刀だ!」
鞘から刀を抜き、そっと呟いた。
「水天 碧空」
シャボン玉のような泡が浮かび上がり、碧空と呟いた瞬間に水槍に変わった。
刃を相手に向けた瞬間、一斉に放たれた。
それを切り裂きながら剣に近付こうとした瞬間、大きなシャボン玉が相手を包みこんだ。
「なんだ?これは...」
剣の周りを囲むように大きなシャボン玉が複数浮いていた。
「水天 雫」
無数に浮いていたシャボン玉が一斉に割れると共に無数の雨粒が相手に降り注いだ。
「なんだ!ただの雨か?これでおしまいなら君は終わりだね!」
刀が剣の頬をかすめた瞬間、相手の妖刀の能力が発動しない...
なぜだ?
なぜ、村正の能力が発動しない?
剣は一言呟いた。
「お前の妖刀 村正の能力は相手に傷をつけ、血を刀が吸い取ることで発動するならその前に能力を使えなくする方が戦いやすくなるだけだ。」
「そんなことで私が倒されるわけない!私はあのお方から妖刀を託されたのだからな!」
重い一撃が剣に放たれたと同時に剣は刀で防ぎながら呟いた。
「こんなもんかよ!お前の全身全霊の一撃ってやつは...俺が今までやりあってきたやつより弱い!」
その一撃を弾き返し、振り下ろす瞬間に呟いた。
「これが、俺が今までやりあってきたやつらとの一撃だ!」
大地にヒビがはいるほどの一撃を振りかざした。
その斬撃は曇りきった空さえも切り裂くだろう。
少女は怯みながら呟いた。
「この男があの方が恐れている。妖刀使いか...」
刃を首元へ突き立て呟いた。
「ここまでだ!」
周りが静まり返ろうとした瞬間、少女は不気味に笑い出した。
「今回はここまでにしてあげる...じゃあね!獅子王 剣!」
突如として、放たれた残光が剣に襲いかかる。
それをなんとか避けると少女が座り込んでいる地面から大阪城に繋がるであろう異空間が出てきた。
少女が異空間へと引きずり込まれていた。
周りを見渡しても少女の形跡等は無かった。
晃作達の元へ急ぎ、船に飛び乗った。
落ちそうになっていると...
「剣!」
晃作が剣に手を伸ばした。
晃作の手を取り船に無事に乗り込み、島を出た。
島を出てしばらくして島が火山灰や溶岩に包まれていくのを見守っていた。
島を出た村人達の中には今後の生活などを心配する者が多く存在していた。
鹿洲は一言、村人に呟いた。
「これから行く当てもないなら俺の連れのところを紹介してやる。ただし、アイツは他のところより厳しいぞ!」
「そのお方ってもしかして、お侍?」
「いや、志波竝は侍なんかじゃないがただの妖刀使いさ!」
海の上でひたすら本土へ向かっているときに、晃作が呟いた。
「はぁ~、可愛い女の子と出会いたい...
早く、本土に帰ってそこら辺の女子に声かけてイチャイチャしたい!もう、離島なんていかない!」
目をバッキバッキにした晃作が呪文のように呟いていた。
その晃作を見ながら剣は見下すような目をしながらこう思っていた。
何コイツ...この海に沈めていい?キショく悪いから...
何かを察したように晃作が呟いた。
「今絶対キショく悪いと思っただろう!コイツ!!」
剣はそれをスルーしながらただ、ひたすら本土に着くのを待っていた。
・・・数時間後・・・
それから時間が経過し、ようやく本土へたどり着いた。
港に到着するとそこには志波竝たちが待っていた。
「久しぶりだな!剣」
「桜華さん、それにみんなまで...」
久しぶりに顔をみてなんだか今までの出来事が嘘みたいに感じる。
「で?どうだったあの島は...」
「正直、いうと大変でした!」
相変わらずの笑顔がそこにはあった。
まるで、誰かが他愛もない会話をしているように...
誰かが助けを呼ぶ声はまだ、なっている。
それは空が蒼く晴れ渡る日だった。




