第三十九話 剣vs冥洛
二つの青い蝶が空を飛んでいく。
まるで、お互いに惹かれあった少年と少女のようにひたすら行く当てもなく飛んでいる。
蒼く揺らめく炎を刀身に纏っていた。
それを纏った刀を握りしめ少年は走り出す。
冥洛の元へと...
走り出した少年の身体は泥と血に塗れていた。
冥洛から放たれた刃風が剣の身体に当たる。
剣は刀を目の前にかざし、呟いた。
「水天 碧空」
無数のシャボン玉のような泡が浮かび上がると同時に水槍に形状変化し、刃風に向けて放った。
放っていた水槍が刃風とぶつかり相殺される。
両者の激しい斬り合いが続く中、遠巻きで見ていた九喇嘛が呟いた。
「この気配は...まさかあのお方もこの島に...」
地面が激しく揺れ動く。
まるで今にでも火山が噴火するように...
激しい揺れが続いた。
どこからか声が響き渡る。
「いや〜、獄楽じゃったのぉ〜!マグマ風呂は...それでわし自ら出向いてみれば何じゃ、まだ終わっておらんのか...」
秀吉は何かを担ぎながら大きな声で言っていた。
「秀吉様...それは?」
秀吉が担いでいたものは妖刀にしてはあまりにも大きく、禍々しいオーラを纏っていた。
「これか?これは刀じゃよ!お主らが知らぬとは思うがな!」
その刀は普通の日本刀に比べてあまりにも大きく、振るうのさえ一苦労するような刀だった。
「まぁ、この刀のことは今は良い。それよりも今はアヤツらの戦いじゃろう。わしが見るからに冥洛は負けるじゃろうがな!」
両者の刀と刀がぶつかり合う。
「そろそろ、決着をつけよう獅子王 剣!」
冥洛が発した言葉に対して剣は呟いた。
「終わりにしよう。冥洛」
「妖装解放 七風百 凩」
無数の風を纏った竜巻のような斬撃が剣に放たれた。
「華身一刀流 抜刀術 三日月」
無数の斬撃を目の前で防ぎきった。
「水天 終の極意 蓮華鏡 暁」
無数の蓮華の花のような形から複数体の龍の形をした水が地面から現れ、冥洛に襲いかかった。
冥洛は強く刀を握りしめ、その攻撃を防ごうと斬り裂くが水龍の勢いが強く刀が流されていく。
「クソッ!!こんな妖刀に僕がやられるだと?」
流れていく中、剣が水流に紛れ込み冥洛の首元へ刃を突き立て呟いた。
「遅えよ!」
「なん...だと...」
刃が首を切り裂いた。
地面に首が転がり落ちる。
口を開き、冥洛は呟いた。
「俺がここで死のうとお前を倒しこの日ノ本の国を秀吉様の者にする手はずは整っている。せいぜい、無駄な努力だと思うが足掻いて苦しめ!獅子王...剣...」
「ご忠告どうも」
刃についた血を拭き取り、刀を鞘に収めた。
これで、一件落着に見えたが遠くからこちらを睨む視線を感じた。
その方角をみるとそこには秀吉がこちらを睨んで見ていた。
「悪いがお前らはこの島から逃げる手はずを整えておけ!わしはあやつの相手をしよう!」
一瞬の隙に剣の目の前に現れ、言った。
「お主、中々やるではないか?わしのところの操り人形相手にして生き残るとは褒めて遣わすぞ!」
「...」
「うーん、話をしたくないみたいじゃな!仕方ない。少しだけ遊んでやろう。」
刀を抜く暇もなく頭を掴まれ、岩にふっ飛ばされた。
「刀を抜かずに片腕だけで...どういうやつだよ...」
「どうじゃ?痛いか?」
「あぁ、痛むぜ!ただ、お前の腕がな!」
秀吉の腕に無数の切り傷が残っていた。
「ふむ、この程度の傷など痛くもかゆくもないわ!」
「剣!大丈夫か?」
「あれが噂の豊臣秀吉かしら?」
「恵美須さん、篠波さんあれが例の男です!アイツの持つ妖刀の能力は不明です。気をつけてください!」
「分かった!」
「分かったわ!坊や!」
「ぞろぞろとウジ虫どもが湧いてきたの〜!ならばそろそろ...」
刀を鞘から抜いたと同時に刀に禍々しいオーラが溢れていた。
「まずは、お主からだな!」
篠波の剣速を上回るほどの剣速で篠波を追いつめていく。
「なんていう速さだ!それに一撃が重い!」
「これで終わりじゃ!」
一撃が篠波の左肩に入った。
「グッハ...」
「まずは、一人!」
「掴め!貞綱!!」
一瞬にして、恵美須の懐に近づき刃を振りかざした。
それをギリギリの所で防いだが相手の一撃が重くのしかかる。
なんて、重い一撃?
野生の熊に襲われるよりも重く感じるわ。
でも、こんな程度今の私なら...
一撃を弾き返し、刃を振りかざす瞬間。
光の斬撃が空から降り注いだ。
「なによ?これ...」
「フハハハ...それなら動けまいな!」
妖刀の能力?いや、だとしたら妖刀が反応するはず一体何が起きたの?
「説明がほしそうな顔じゃのぉ〜!
仕方ない少しだけしてやろう。」
太閤天の能力...
それは投影
またの名をイメージの具現化ともいう。
相手の妖刀の能力を自身の物にしたり、自身がイメージしたことを現実にする。
実在する妖刀の能力また、自身がイメージした能力を自由自在に使用することができる能力である。
それが認識識別固有妖刀2 第六天世界虚偽 太閤天の能力である。
「その程度か?軍人よ!」
「ちぃ、舐めた態度取るわね」
斬撃が恵美須と剣を襲う。
「華身一刀流 結界術 夕凪」
無数の斬撃を相殺していく中、途中で妖力がつき身体が動かなくなってしまった。
「このままじゃ、ヤバイ!」
死を覚悟しかけたとき、千尋が走り出し剣の前で刀で斬撃に触れた。
触れたことにより斬撃が消えた直後...
背後から千尋の腹を貫いた男がいた。
「ごめんな!千尋!」
後をゆっくり振り向くとそこに立っていたのは...桐島傑だった。
「だからアレだけいうたやろうに...恨まんといてや!僕はあの人に頼まれただけやで!そんじゃ、これだけもろたで!」
千尋が持っていた朧を手に取り、去り際に呟いた。
「な...ん...で...」
「あのお方がこの妖刀をほしい言うてるから仕方ないやろ?」
「そういや、まだ言っとらんかった!千尋!ありがとう」
そうつぶやき、秀吉の元へと向かった。
「おい!大丈夫か?」
薄れゆく意識の中、鹿洲の歪んだ顔だけがうつりだされ目を瞑った。
秀吉の元へ駆け寄り、傑は呟いた。
「秀吉様、例の妖刀を回収いたしました。」
「ふむ、ご苦労!お前も他の者達と先に戻ってよいぞ!」
「いや、そのまえにやることが...」
「剣くんやっけ?君たちに特別に見せたるわ!この妖刀の二つ目の力っていうやつを...」
鞘から刀を抜き呟いた。
「崩れろ!朧」
大地が激しく揺れる。
まるで、地震を彷彿とさせるように大地が揺れている。
立っていられないほどの揺れが起きていた。
妖刀朧のもう一つの能力...
それは崩壊
触れたものを跡形もなく壊す。
また、災害と同等の厄災を起こす力を秘めている。
それは、今までの妖刀とは別格の妖刀だった。
揺れ動く中、秀吉は呟いた。
「獅子王 剣じゃったか?火山口が見える場所へ移動しそこでやり合おうではないか?」
剣は黙り頷いた。
火山口付近に近づくといつ火山が噴火してもおかしくないほどマグマが上がっていた。
「さぁ!続きをはじめよう!獅子王 剣!」
「お前は俺が倒す!」
それは、この島がいつ滅んでもおかしくないほどの熱が飛び交う中だった。




