第三十七話 荒れる空の下で
刀と刀がぶつかり合う。
刀を弾き返し、相手の刃が剣の頬をかすめたと同時に剣の刃が相手の頬の髪を斬り裂いた。
月明かりが大地を照らす。
静まり返る拓けた大地に禍々しさを放つ妖刀が少年に襲いかかる。
まるで、火の粉のように...
その刃は全てを憎み、全てを恨み全てを壊すためにただひたすら操られている人形のように狂い出していた。
剣は言った。
「このままじゃ、身体が持たなくなる...」
その斬撃は禍々しくも底のない闇を放っていた。
斬撃が来る直前それをギリギリ刀で防ぐが、刀の刃毀れがさらに増えていた。
一太刀振るうだけで刀にも重い衝撃が走る...
刀を握っている手はすでにマメができるほど長い時間握り続けていた。
手に痛みが走る。
それに耐えながら刀を握る。
相手の斬撃が剣に放たれた。
斬撃を躱しながら相手の懐へ向かう。
それを読んでいたかのように相手が躱し剣の首元に刃を突き立てた。
「お前の力はこの程度か?」
剣は少し微笑んで呟いた。
「まだ、終わってねぇよ!」
刃を刀で弾き返した。
月が照らしていたはずの空は真っ暗闇に染まりかけていた。
雷鳴が鳴り響き、地面は揺れ蠢く。
季節外れのあいにくの天候...
豪雨が降りはじめ、土砂降りの中二人はそれぞれの信念を貫くために刀を振るった。
それを遠目で見守る男はポツリと呟いた。
「剣よ...がんばれ!」
その男は長髪の白髪の老人はその光景を見つめながらかつて自身が思い描いた光景を浮かべていた。
その場にいたすべての人間が剣と千尋の戦いを見守る中、あの男はその頃優雅にくつろいでいた。
・・・千子島 火山口・・・
マグマの中に入っている男がいる。
その男の身体は焼けてはいたが、ただひたすら湯水の如くマグマを浴びていた。
「ふぅ〜、獄楽!獄楽!普通の湯よりも刺激があって良いくらいのマグマじゃ!」
その男は破邪の花を手にし不老不死の力を実質手にした。
その光景を見て、家臣たちはそれを見守っていた。
ただし、足軽たちはそれを見て次々と呟いた。
「聞いてた話と違う...何だあの化け物は?わしらと同じ普通の人間ではないのか?」
「人間?何を申しておる?あのお方はこの日ノ本を牛耳る存在...いわばこの国の絶対的、皇になるお方ぞ!」
その声は秀吉の耳にまで筒抜けだった。
「清正よ!良い良い!せっかくだからそなたらもどうじゃ?一緒に入らぬか?」
それは確実な死を意味していた。
「太閤様、誠に申し訳ありませんがそれはできかねます。」
秀吉は微笑んで家臣に命じた。
「今、発言した者たちすべて縄で縛り火山口に放り投げよ!」
「えっ...ちょ...まっ...」
約十数名の足軽等が火山口に投げられた。
「せっかく、いい気分でマグマ風呂(火山の中)に入っていたのに台無しじゃ...仕切り直しがてらアヤツのところへ行くとするかのぉ〜!アヤツは今どこにいる?」
「ハッ!現在、火山口へ向かう道中にて獅子王 剣を含むものたちと交戦中とのこと...」
「ふむふむ、そうか!アヤツらだけでも勝てると思うか?」
「おそらく勝てるかと...」
「うむ、ありがとう!下がってよいぞ!」
「さて、わしもそろそろ向かうとしよう。」
焼けただれた身体は一瞬にして治っていた。
その頃、剣たちは...
終わりのない戦いを続けていた。
無数の斬撃が剣に放たれる。
刀を鞘に収め、素早い速度で抜いた。
「華身一刀流 抜刀術 叢雲」
刃が千尋の顔スレスレをよぎる。
ギリギリで躱し、剣の腹に蹴りをかました。
蹴りが腹に直撃して怯んだ隙を狙い、千尋が刃を振りかざした瞬間をそれを刀で防いだ。
「中々、しぶといね〜!君」
「昔からしぶといだけが俺の強みだからね〜!」
刃がぶつかり合う。
大地に衝撃が走る。
雨が振り続ける中、二人の刃が交わる。
刀身から紫色の禍々しいオーラが放たれる。
禍々しさが増している間に刀に触れたらやられるだろう...
そうわかっていても剣は再び刀を握り走り出した。
悲しい出来事をこれ以上増やさないために・・・
「これで、終わりにしよう...獅子王 剣!」
お互い、刀を強く握りしめ走り出した。
「華身一刀流 極の奥義 転浄 詠燃」
炎を纏った刃が千尋に放たれる。
それを弾き返し、剣の持つ刀の切っ先に朧をピンポイントで当てた。
剣の持つ刀が一瞬にして灰とかした。
剣は驚いた表情をしながら言った。
「刀が...壊された...」
朧の能力は分解
刀に触れたものを元々の部品に変えてしまう。
それ故に持つものの武器やあらゆる道具、人や動物さえもその対象になってしまう。
驚いた表情をした剣に千尋は呟いた。
「すまない!でも、これでわかっただろ?」
剣を腹に刀を刺した状態で岩に激突した。
「グッ...ハ...」
身体のあっちこっちが悲鳴を浴びていた。
口から血が吹き出た。
もう、立ち上がる力すら出ない...
意識すらも遠のいていく。
徐々に目の前が見えなくなっていく。
遠くから声がしている。
誰だろう...
誰かが呼ぶ声がしている...
一体誰なんだろう...
倒れる所を見ていた千代が大きな声で叫んだ。
「嫌だよ...剣!こんなところでお別れなんて...だから起きてよ〜!つるぎ〜!」
少女は涙を流しながら大きな声で叫んだ。
ボロボロになっている少年を見つめながら自身もボロボロになって起き上がる男が一言千代に呟いた。
「千代...これをアイツに渡してやってくれないか?」
その男に握られていた刀からは微弱ながらも妖力が宿っていた。
「これは...?」
「志波竝からもしもって場合に託されていたんだよ。イテテテ...」
「鹿洲さん、大丈夫ですか?」
「このくらい屁でもねぇよ!多分、もう少ししたらきっと目を覚まして立ち上がる。その時にその刀を...」
少女は頷きながら剣がいる方向へ走り出した。




