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妖刀 四重奏(カルテット)  作者: 幻魔 狂死郎
千子(せんじゅ)獄楽編
36/50

第三十六話 恐れられた妖刀

息もできない、ましてや手の感覚すらも感じない。

これが死の瀬戸際なのか?

それとも、これがいわゆるあの世なのか?

何も分からない。怖いって感情すら頭によぎらない。

何のために刀を握っていたんだっけ?

何のために俺は戦っていたんだ?

逃げたい...

もういっそ楽になりたい...

・・・〇にたい

そんな言葉が体のそこから...心の底から流れ出ていく。

それでも...なんだか懐かしいような心地のよい感じの声がどこからか聞こえる。

その声がする方へ手をひたすら伸ばし叫んだ!

俺が俺であるために・・・

爺ちゃんが教えてくれた何かを失わないためにもう一度刀を握るために・・・

だから・・・

どこからか声が聞こえた。

ーーー諦めるな!お前はお前が信じる奴らのためにその刀を振るえ!

真っ暗な闇のそこから誰かが背中を押している気がした。

大丈夫!なぜ?って君のその心には宿っているじゃないか!

その心にはあの群青色の炎が・・・

だから今は前を向いて、恐れないで!

目を覚まし周りを見渡すとそこには泣きじゃくっている千代がいた。

「心配したよ〜!剣〜!!」

剣はゆっくり、体を起こしながら一言千代に呟いた。

「ありがとう!千代」

ふらつく身体をゆっくり起こし立ち上がるが途中で倒れそうになる。

千代が支えようと手を伸ばしたがそれを優しく微笑みながらこう言った。

「ありがとう!大丈夫!」

千代にお礼を言った。

立ち上がり刀を握り、鹿洲の元へ走り出した。

身体の傷が少し痛んでいる。

走るたびに痛みが走る。

それでも彼はひたすら仲間の元へ走る。

守り抜くために...

鹿洲の元へ向かっている途中で豊臣兵が剣を襲いかかった。

襲い来る豊臣兵士たちを斬り伏せて進んでいく。

鹿洲の元に到着したとき、目の前の光景に唖然としていた。

そこには血まみれの鹿洲が倒れ込んでいた。

「やっと、来たか?獅子王 剣!待たせるなよ!」

「お前は...冥洛!?」

「覚えていてくれて光栄だよ!ほら、見ておくれよ。お仲間さんはお前が来るまで身を通して小さな命なんかを守る為に刃を振るっていたんだぜ?」

周辺を見渡すとそこにはまだ、咲き誇る前の小さな花が咲いていた。

その近くには小さな赤子が眠っていた。

多分、村にいた母親が誰にも見つからない場所に捨てようとしたんだろうか?

血だらけになっても鹿洲は一言呟いた。

「てめぇらなんかにこれ以上殺されてたまるかよ...」

「フハハハ〜!!!滑稽だろ?わざわざ、くだらない奴の子どものために命を張るなんてさ!」

「くだらない?笑わせんな!人の命を何だと思ってる?お前らがやっていることの方がくだらない!」

距離をつめ、刃と刃がぶつかり合う。

「いいね!その表情!!ゾクゾクするよ!」

「黙れ!」

「でも...残念、君の相手は僕じゃない。」

刀を弾き返し距離をおいて呟いた。

「この子だ!行っておいで!我妻千尋あがつま ちひろ!」

拓けた場所にたった一人の男?女?性別が分からない子がこちらに向かって歩いてくる。

その子の刀を見ると禍々しいオーラを放っていた。

「はじめまして!獅子王ししおう つるぎくん。いや、さようならか?」

その子はこちらに走り出し、剣の間合いに入り刀を抜いた。

速い、このままじゃ斬られる。

その前に...

刀を瞬時に抜き、刃が剣の身体に当たるギリギリで防いだ。

刀と刀がぶつかり合う。

そんな中、千尋は剣に連続で刃を振るい続けた。

「君は一体?」

「君も妖刀を使っていたんでしょ?ならこのくらい防ぐかできるよね。」

無数の斬撃が放たれた。

それをなんとか防いだ。

千尋は剣の間合いに入り刀で腹を刺した。

血が少しずつ出ているように見える。

耳元で剣にこう言った。

「大丈夫!もう少しだけ、演技に付き合ってね!」

どうゆうことだ?

今完全に腹を刺された気がした。

それなのになんで?

ゆっくり立ち上がり、腹を確認するとそこには刺されたような出血も傷も見当たらなかった。

「これは?どうゆうことだ?」

「さて、続けよう!剣くん!」

遠くから見ていた桐島が一言、千代に呟いた。

「千代ちゃん?やっけ、あの子の持つ刀を知りたい?」

「あの刀は一体?」

「あれは、人々から忌み嫌われた刀や!もちろん、作った本人からもな〜!あまりに強力すぎる力がゆえに多くの人々の血を喰らい、あまたの負の感情...つまり妖力を刀が喰らってできた怪物と同様のもの...もちろん、君らが持つ認識識別固有妖刀ナンバーズの中で炎閣が唯一生み出したことを後悔した妖刀があれや!」

その妖刀は人々から忌み嫌われ、長きに渡る時の中で唯一、伊勢の社にて厳重に封印されていたとされる妖刀...

その妖刀の名は...おぼろ

認識識別固有妖刀の中で一つの県を、一つの国を滅ぼすことが単体で可能な代物だった。

「壊せ! 朧」

刀に秘めた莫大な妖力が広範囲に展開される。

その妖刀から発せられた妖力は人間の怒り悲しみ憎しみ嫉妬恨みが積もっていた。

「千尋も怖いね〜!!あ〜嫌だ嫌だ!このまま妖術で本土に帰ろうかね?」

仲間がこの異様な妖力に気づき、剣に大きな声で言った。

「剣!?アイツはとんでもないぞ!戦えるか?」

剣は手で止め、呟いた。

「なんとかしてみるよ!ありがとう!」

刀を鞘に収めて構えた。

「華身一刀流 簡易結界 夕凪」

「さぁ!続けよう。獅子王 剣!」

相手の斬撃が放たれる。

それを躱しながら相手の間合いに入った瞬間、相手が微かに微笑んだ。

「剣!逃げろ!」

相手の刀が剣の真横をかすれた時、その横にあった木が跡形もなく消えた。

「あ〜あ、やっぱり...」

桐島は頭を抱えながら呟いた。

「あの妖刀の一撃を受けたら死ぬぞ!マジであの少年、今のは運良く避けれたけど...」

千代は心配そうに呟いた。

「どういうことですか?」

「どういうことも何も...」

桐島は気が重くなるような感じで語り始めた。

妖刀 朧...

あの妖刀の能力は分解!

いわば、触れたものを細胞の隅々まで破壊して無かったことにする。それは人だけじゃなくあらゆる物体、物質にも効く。

それに何せ、相手が妖刀だろうが単なる刀だろうが関係なく、使用者が刀を通して触れるもの全てを破壊する能力。だから昔から人々が恐れたっていうわけや!

それに...

「それに?」

知ってると思うけど認識識別固有妖刀の類には稀に能力が二つある妖刀も存在する。

あの刀も例外ではない。ただ、どの文献にもその二つ目の能力については載っていなかったけどな!

「そんなんじゃ...剣は...」

「まぁ、死にはしなくても重症になるやろうな!あれを受けたら...下手したら死ぬかも...」

複数の斬撃が剣に放たれた。

その斬撃を躱しながら相手の出方をみる。

相手の刃が剣に届きそうな瞬間、それを間一髪のタイミングで防ぎきった。

「やるね!剣くん。」

「ハァ、ハァ。そりゃ、どうも!」

お互いの刃がぶつかり合う。

桐島はその状況の中、続けて千代に言った。

「多分、彼...このままだと千尋に殺されるかも...?」

「えぇ〜!どうにかしてください!きり〜しま〜さ〜ん!!」

桐島の方を揺らしながら訴えていた。

そんな中、桐島は少し微笑みながらこう答えた。

「大丈夫!たぶん彼、そんな野暮じゃないだろうし...それに・・・」

「それに・・・」

「いや、何でもないよ!」

あのことはまだ、言わないでおくよ。

剣聖さん!あなたのお孫さんはいま、立派に戦っているよ!

まるで、あなたの息子...アイツのようにね。

蒼白なる月が照らす暗い闇が広がりそうな夜だった。



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