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妖刀 四重奏(カルテット)  作者: 幻魔 狂死郎
千子(せんじゅ)獄楽編
33/49

第三十三話九大天世界化身 玉藻前

・・・千子島 龍神神社・・・

境内へ足を踏み出す。

神社を守っている結界が壊れかけている。

そして、周りには妖魔の微かな残影を感じる。

その中で一体だけ他のと桁違いな残影を放っている...いや、瘴気とも言えるだろうな!あのくらいのものだと...

鹿洲が見つめる方には大きな妖力を身に纏った鬼?いや、化け物が獲物を狙う目でこちらを見つめていた。

「だから単独は嫌なんだよ!強い妖魔や強い相手がわんさかいるこの島ではな!!」

嫌そうな顔をして、鹿洲は呟いた。

周辺をくまなく見ているとそこには微かな妖力の残影が残っていた。

その残影を辿っていくと血痕が残っていた。

「まったく、あのバカ野郎!もう少し残影を残してくれれば、助けてやるのによ〜!!まぁ、どうせそこら辺で傷の手当てとかしているだろう!」

鹿洲はそう呟きながらその場を後にした。


森の中をひたすら進んでいく。

佐々美山へ向かって行きたいが周りを見渡しても獣が通るような道しかない。

鹿洲は少し、ため息をつき呟いた。

「さすがに、山まで来て遭難して誰にも見つからずに死ぬのは御免だぜ!まして、見知らぬ場所でな!」

ひたすら森の中を進んでいくともうすぐ月明かりが照らす拓けた場所へと到着する。

周りを見渡すとすぐ近くに登山道への案内が書かれた掲示板のようなものを見つけ、その掲示板に書かれている方向へと進む。

進んでいく先に二人の微弱な妖力を感じる。

多分、この気配!!剣と渉か?

剣達の気配がする方へと向かっていると登山道から左にそれた拓けた場所で剣と渉、そして伊賀忍の女が話しているのを見かけた。

急いで剣達の下へ駆け寄る。

「大丈夫か?剣!渉!」

「鹿洲さんよ!遅いぜ。」

「なんとか...」

その瞬間全身の力が抜け眠るように地面に倒れこんだ。

「まったく...無茶しやがって...」

倒れた剣をおぶってそのまま近くに見えた小屋へと向かい軽い傷の手当てをしていると剣が鹿洲に呟いた。

「なんで?鹿洲さんがここに?」

鹿洲は焦るような素振りを見せながらこう剣に言った。

「実はな...」

「はぁ〜!?篠波が勝手にどこかに行きやがった!?」

「まぁ、正確にいうと一言伝えてそのまま消えたが正しいかもな!」

「何考えてんだよ!アイツは?」

こっちが聞きてぇよ!!

「それよりさっきから無数の視線を感じる気がするな!」

窓の外を見るとそこにはこの家を囲むように無数の妖魔がいた。

「コイツら?もしかしてさっきの奴が飼っていた妖魔か?」

「いや、たぶん違う!妖魔を繋ぎ止めている匂いが違う。」

そう、その妖魔達から匂う血はどこか雨の日に濡れた鉄骨を舐めたときのような、金臭さが鼻の奥になだれ込むようにしていた。

ーーー木の陰に隠れる八咫烏達が小屋を見つめながら何かをつぶやいていた。

「例のやつは?来たか?」

「いや、秀吉様から来るようなことは言われていない。」

後ろから足音が鳴り響く。

そこには、見覚えのある男が立っていた。

「やぁ!元気?みんな〜!!」

その男の名は冥洛!!

「あれ?なんでお前がここにいる?」

「なんでってあ〜あ、そういうことね!僕は以前君たちといた冥洛じゃないよ!

試作妖体授精兵器被験体05!またの名を奈落ならく!!人は僕をそう呼んでいる!で?あの小屋にいるのが噂の妖刀使いかい?」

「あぁ、獅子王剣とその他の仲間だ!でもどうする?まともに戦ったら俺たちは殺されるぞ!」

不適な笑みを浮かべながら冥洛は呟いた。

「僕に任せてよ!確か君、妖魔を操れるんだよねなら...〇〇〇〇〇〇をここに呼んでよ!」

男は驚きながら呟いた。

「最上位級の妖魔を出せ?ふざけるな!俺の命がどうなってもいいのか?」

冥洛は嘲笑うかのように言った。

「いいか?よく聞け!君たちはただの僕の手駒だ!そんな、君たちが妖魔に殺されそうが僕は知ったことないね!!僕はあの小僧を殺せればどうだっていい。」

男は言った。

「なら、お前こど葬るまでだ!!」

地面に大きな結界陣が描かれる。

その結界の中で黒く濁った地上絵が浮かび上がる。

「あの世とこの世を結びし咎よ!黒く滲み出す混濁の三千世界より我が血を喰らい我が血に従え!!来たれ!!九大天世界化身 玉藻前たまものまえ!!」

地上絵の底から黒いシルエットが浮かび上がる。

それは、今まで見てきたあらゆる妖魔とは違う。

その妖魔は明らかに数百人、数千人人を喰らっている匂いがしていた。

「マジかよ...そりゃ、ねぇぜ!」

「鹿洲さん...」

剣が心配そうに鹿洲を見つめていた。

鹿洲は剣と渉に優しく呟いた。

「多分、大丈夫だ!!お前らは身体を治すのに集中してろ!!」

妖魔をよく見ているとなんとなくわかる。

コイツは他の雑魚共とは格が違う。

なんだってコイツにはあらゆる攻撃が通じない。

妖魔へ攻撃を仕掛けようとした瞬間、妖魔が目の前から消えた。

「マジかよ...」

背後から強大な妖力が放たれた。

華身一刀流かしんいっとうりゅう 抜刀術 叢雲むらくも!!」

ギリギリのタイミングで反撃を放つがそれすら避けられる。

「厄介な妖魔だな!!」

「だろうね!なんせ、あの妖魔はかつてこの国のあらゆる場所で人を喰い尽くしていた。それも今から何百年も前の話だ!だが、戦国時代に玉藻前は京都で捕らえられた。その捕らえた人物は君たちも知っているあの男さ!」

その男の名は織田信長。

正確に言えば、織田信長が明智光秀に命じて京都で捕らえさせた。

捕らえた時、玉藻前は幼き少女の姿をしていた。

玉藻前の能力...それはあらゆる現象を無効にする。

例えば、相手が攻撃を仕掛ける動作に対して無効化することができる。

まぁ、言わば簡単に言い換えれば相手の行動がはじめから無かったことになる。

また、技を発動しても無かったことにされるため実際の所手段がないとも言えるかもしれない。

そんな中、鹿洲は相手の行動パターンを全て戦いの中で見ていた。

物理攻撃がかわされる...いや、無かったことにされる。

行動という名の現象すべてにおいて無効にされている。

だが、それを発動している箇所がどこかしらにあるはずだ!

その部位を見つけるため、鹿洲は相手に斬りかかりながら距離を縮めひたすらその部位を探していると一箇所だけ頭と首のわずかな隙間を見つける。

「あれか?」

玉藻前は幼き少女に化けて呟いた。

「今さら、遅いわ!お前ごときに何がわかる?わらわは幾多の長き時代を生きている間、人間共から虐げられた。

今でも覚えておる!あの忌々しい蔑んだ目を...」

木の陰に隠れて、鹿洲は呟いた。

「まったく、とんでもねぇ!厄介な妖魔を呼び出しやがって...それに誰にだって辛い過去の一つや二つあるだろうに自分だけが辛いって言ってやがる。」

勝つか負けるか

人生なんて、誰もが幸せになると限らない。

それでも、俺は志波竝アイツには幸せであってほしい...そう思っていたさ。

あの時までは...

死んでいった奴の願いを叶えるために生きている奴だっているんだ。

どんだけ、泥まみれになろうともどんだけ憎まれ蔑まれようとも...

誰かのために生きている奴がいたんだ!

だから俺は志波竝アイツが護りたいと思う奴のためにこの刃を振りかざす!

それだけだ!

志波竝の刀の刀身が光る。

それは、単なる偶然でも必然でもない。

その刀に宿す輝きはきっと、これからも背負っていくためにあるのだろう。

無数の斬撃を受けながら鹿洲は刀を握りしめ呟いた。

「爺、あんたが言っていたことなんとなくなら分かるよ!」

・・・華身一刀流剣道場・・・

15年前...

「コラァ〜!!クソガキが〜!!廊下は走るな〜!」

「嫌だね〜!クソ爺〜!!」  

怒りの鉄拳が頭に直撃する。

「まったく、バカ息子もこやつらを叱らぬし困ったもんじゃ!!」

怒鳴り声がこの辺一帯に響き渡る。

今目の前で怒ってる白髪が生えている老人が志波竝と鹿洲に怒っていた。

その老人は俺の祖父...鹿洲かしま 甚兵衛じんべえだ!

ある日の夜、爺が剣道場で夜な夜な灯りをつけて何かをしていた。

ちょうど、用を足すために厠へ向かっている時に少し見えた。

よく見るとそれは、爺が大切にしていた刀の手入れだった。

戸の隙間から見ている時に爺がぼそっと呟いていた。

「光寿か?そんなところで何してる?」

「厠に行こうとしたら灯りがついていたから足が止まっただけだ。」

「厠に行かなくていいのか?」

「今から行くよ!」

厠で小便を済ませたあと、道場へ入ると爺が呟いた。

「お前は刀が好きか?」

「別にただ、志波竝が刀を持ちはじめたから俺も使えるようにしたいだけ!」

爺は優しく微笑みながら答えた。

「お前もいい友人ともを持ったな!いいか?光寿!!刀っていうのは鍛錬を幾度も重ねて仕上がる。そして、その刀は時に人を傷つけ時に人を救う刃となる。でも、わしはこう考える。刀はあくまで道具の一つにしか過ぎない。だが、扱うのは人だ!持つ者が良い志を秘めていれば刀は良き刀になる。

悪い志を持つ者が扱えば、それは妖刀と呼ばれるものになりえる。それでも、誰かのために振るう刀は何よりも強い。

なにせ、この世は虚構なのかもしれぬ!だが守る為に振るう刀はきっといずれ自分が信じる道へ動かしてくれるはずじゃ!!だから迷わず進め、その先に鬼が出ようが蛇が出ようがそれを乗り越えひたすら前へ!」

あの頃の俺たちはよく、爺に叱られてばかりだった。

今思えば、あれが爺なりの優しさだったのかもしれない。

・・・千子島・・・

進め!だろう?あの言葉の最後に言いたかったのは...



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