第三十二話 影を制すもの
一方その頃...千代は陰の空間でもう一人の自分と戦っていた。
刃と刃が交わる。
身体の柔軟さ、それが彼女の武器だが相手が自身と同じ程度の力をもつ場合それすらも意味をなさない。
「あ〜あ、もう さっきから攻撃が防がれるしアタシと同じ妖刀みたいだしどうすれば突破できる〜??」
妖刀自身の能力は反撃、言わばカウンター向きの能力しか今のところない。
そして、それは相手も同じ妖刀だからどうしても近距離の斬り合いになる。
相手の様子を伺いながら相手に徐々に近づいていき接近戦へ持ち込む。
刃と刃が交わる中、陰の千代がそっと話した。
「へぇ〜!!剣のことが好きなんだね〜?」
千代は顔を徐々に赤らめながら呟いた。
「そ、そんなわけないし〜!!」
「嘘つかなくても分かるよ。だって黄金が教えてくれているもの!」
「う、嘘なんてついてないよ〜!!」
「あらら!可愛いね〜!千代!」
無数の斬撃が千代に放たれる。
それを躱しながら千代はひたすら前へと走り出す。
あれ...なんで私、剣のことばっか考えてるんだろう?
今はそれどころじゃないのに...目の前に立ちはだかる陰という名の壁を早く打ち破って晃作のもとに向かわないといけないはずなのに...
相手のもとへ後少しというところで突如地面から現れた妖魔に捕まってしまった。
その妖魔から無数の糸のような触手が手足にまとわりつく。
「残念!!あたしにはその刃は届かないわ〜!これで少しは懲りたかしら?」
ごめん...剣、晃作。
あたしも強くなりたいって決めてから志波竝さんや鹿洲さんに刀の使い方や能力の使い方を教わってやっと、同じ土俵に立てたって思っていた。
けど、こんな偽物なんかに負けそうになってる私なんて...
そう言いかけている時にどこからか声が聞こえた。
「まったく、世話が焼ける娘ね!これも晃作が言っていた通りにやられそうになってるわね〜!!」
「あなたは?」
「あたしは児玉 雪菜、晃作くんがあなたを助けてやってくれって頼まれたから来たのよ!」
妖魔が雪菜へ襲いかかろうとした瞬間、一瞬で妖魔を葬った。
「生み出せ!新羅」
無数の武器を妖刀から生み出された。
妖刀 新羅の能力
それは創造...
使用者がイメージしたもの、例えば列車 弓 銃などなどあらゆるものを生成する。
ただし、ある一定の個数を生み出した場合一次的に数秒のクールタイムが生じる。
妖刀も生成できるが使えるのはわずか一度のみ。
その一度に賭けるしか手はないようね...
妖刀新羅から妖刀の模倣品を生成する。
その模倣品の妖刀の名は...迦楼羅!!
「千代ちゃん、この妖刀をあなたに渡すわ!」
「うわ〜!!これって?剣の...」
「私の妖刀で生み出した模倣品だから耐久性はないけど、でも刺されば効果を発揮できる。私がおとりになる隙に陰の元へ向かって行きな!!」
新羅の能力を使い大砲と弾薬を生成し、陰へ向けて放つ。
陰は黄金の能力を使ってそれを跳ね返しながら雪菜へ迫っていく。
雪菜が引きつけている内に陰の背後へ回り込んで相手の隙を見計らって仕掛ける。
そのタイミングを待っていた。
雪菜の間合いに入り込んだタイミングで刃と刃が交わる。
ちょうど、千代が後ろから回り込んでいるのを見ていた雪菜は口パクで伝えた。
「今だ!」
迦楼羅の炎を刀身に纏わせて相手の間合いへ入り込んだ。
そのタイミングを狙って陰の首を迦楼羅で斬り裂いた。
首を切断したことにより陰が徐々に消え、空間が崩れていった。
「これで、無事に元の場所へ戻れそうね!」
「ありがとう!雪菜ちゃん!!」
千代は少し嬉しそうに微笑んだ。
雪菜は少し照れくさそうに言った。
「べっ、別に礼なんていいよ!ただ、ダチの連れが困っていたから助けただけだ!」
元の場所へ戻るとそこには晃作と獄蠑が戦っていた。
「晃作!!」
千代が飛び出していこうとするタイミングで雪菜が制止した。
「待ちな!」
「なんで止めるの?」
「まぁ、見てなって!」
晃作の身体は刀傷だらけで服も切傷が多い中、相手はそこまで傷を負っていなかった。
晃作は息を切らしながら呟いた。
「そろそろ、限界が近いか...」
「まだ、まだ楽しもうぜ!蕗谷晃作!!」
晃作へ斬りかかろうとした瞬間、どこからか高出力の妖力が放たれた。
「来やがった!あのいけすかねぇ〜男がよ!」
「わりぃ、舞踏会に遅れちまったぜ!!」
その男は妖刀を持たずして死海門鐘を生き抜きそして、晃作にとっては最高最悪の妖力使い。
その男の名は...石嶺 連妖術と妖力を駆使して戦う男だった!
「さぁ!晃作、今日を踊らせてくれるやつを紹介してくれよ!」
「いや、だから最初からおめぇ〜の目の前にいるだろう?」
「あれ?そうか?すまんすまん!見えていなかったぜ!」
「おめぇ〜の目は節穴か!」
獄蠑はボソっと呟いた。
「いいだろう!そこまでいうなら俺が相手をしてやるよ!」
獄蠑の陰から無数の影が生まれた。
その影達を晃作と連に襲いかからせた。
その影を陽狼で斬り裂いていく中、連が晃作に呟いた。
「晃作!避けろよ!」
高出力の妖力を周りに向けて放出した。
放出した妖力によって相手の影が消された。
「やるな!ならこれならどうだ!!」
相手の無数の影狼が生み出される。
その狼たちは晃作と連に襲いかかった。
「狼さんこちら手のなる方へ!」
連は晃作に熱い眼差しを送ってこっそり言った。
「俺がおびき出す!その間にお前は獄蠑を殺れ!」
二匹の影狼が連へ襲いかかっている間に、晃作は獄蠑のもとへ走り出す。
行く先々をあらゆる影を媒体にしたものに阻まれるが、それをひたすら斬り裂いて走っていく。
「これならだいぶ離せたよな!晃作!!」
高出力の妖力が放たれる。
一瞬の光が島を照らす。
その光が照らされているわずかな時間の間に獄蠑の間合いに入り刀を振りかざした瞬間、刃と刃が交わる。
「来ると思っていたよ!晃作!」
「あぁ、そうかよ!」
相手の攻撃が腕や足をかすめていく。
そんな中で晃作は相手の隙をひたすら見計らっていた。
相手の刃が晃作に届く寸前の少しの隙を狙い、晃作は呟いた。
「覚ませ!陽狼!!」
陽狼の刀身からわずかに黒い炎が放たれる。
その黒い炎は一瞬にして、黒い煙を焚いていく。
その煙に紛れて、相手の視界が見えなくなった瞬間を狙い黒く燃え上がる斬撃を放った。
「黒牙燃刀!」
その斬撃で相手の両腕が斬られた。
今だ!
今しか、コイツにトドメを刺すことができない。
相手の隙を狙って接近し、首元に刀を構えた。
「俺の負けだ!殺すなり好きにしろ!!」
刀を鞘に収め呟いた。
「殺すつもりなんてねぇよ!でも、一つだけ言っておくならお前は十分強いよ!」
その場を後にしようとした時、どこからか晃作に向けて炎の矢が放たれた。
「危ない!!」
晃作を庇うように獄蠑が燃えさかる矢を自身の身体で受けた。
ずっと考えてたさ!
伊賀で生まれ、忍びになるために小さい頃から技術を叩き込まれて同胞にも手をかけて...いつの間にか俺のこの手は赤く汚れていた。
そして、周りの奴らも多くは戦や妖刀などを巡る戦いに巻き込まれ散っていった。
いずれ俺もそうなるそう思っていたさ!
だけど、お前と出会ってなんとなく分かったよ!
俺が本当に望んでいたのは・・・
多分お前みたいに大勢に囲まれて生きていくことだったんだろうな…
だから・・・お前は・・・生きてくれ!
「蕗谷...お前は俺のようになるなよ!!お前はお前らしく生きろ!そして、いつか俺たちみたいな悲劇を無くしてくれ...」
人には時として悲しい過去があったりする。
それを知った時、分かち合えることがあるはずだとそう信じてる。
晃作は安らかに眠りについた獄蠑に呟いた。
ありがとう...と




