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妖刀 四重奏(カルテット)  作者: 幻魔 狂死郎
千子(せんじゅ)獄楽編
28/31

第二十八話 伝説の刀工 炎閣パート2

村外れにある小さな川の近くへ向かい子どもの服についた返り血を取る。

その際、ふと疑問に思ったことを少年に聞いた。

「小僧、盗賊はお前が殺ったのか?」

「...殺ったよ。」

「何歳だ?」

「今年で12...」

十二歳にしてはあまりにもやせ細っておりボロ服に髪も長い...そして何より、少年の目は黒く濁っている水のように冷たい。

「お前の親は?」

「さっきの奴らが殺した。クソ親父が無惨にも死ぬところは笑いそうになったよ...」

「母親は俺を心配しながら庇って死んだ。兄貴も...まだ、結婚したばっかの姉貴も...」

まるで、わしと似た境遇だな...

せめてもの情けかもしれぬが...

「小僧...一緒に刀を作らぬか?」

飯を頬張っている少年は炎閣を見つめ、呟いた。

「おっちゃん、名前教えて...」

「わしか...わしの名は炎閣。しがない刀工じゃよ。お主の名は?」

「僕には又鬼またぎって言う名前しかない。」

炎閣は少し考えながら呟いた。

「その名前だと、なんか似合わぬのぉ〜...」

炎閣はお館様から聞いたとある武人の名を思い出していた。

その武人はかつて平氏を兄と共に討ち取ったがその後、兄により追われる身になり最期は岩手の平泉にある衣川館で自刃した。

その武人の名は...源義経公...

そうだ!このわらべの名はあの武人の名にしよう。


「今日より...お前は龍神義経りゅうじんよしつねと名乗るがよい。」

そう、それは後に3代目炎閣と呼ばれるものとの出会いだった。

そして、それから数年の時が経ち...

館を大急ぎで走る音が聞こえる。

「義経よ!いるか?」

「どうされました?初代炎閣様。」

「どうやらまた、豊臣秀吉が動いているらしい。近々、この千子島にも来ると情報が入った。」

この頃にはすでに信長様はお亡くなりになり、明智光秀を討ち取った豊臣秀吉がこの日の本の国を統一していた。

しかし、それはあくまで無ばかりの統一という名の支配にしか過ぎなかった。

民は重税に苦しみ、日々生きるのがやっとの状態。そして、刀や武器の類は秀吉により徴収され自身に逆らえぬようにしていた。

そして、本土の村々では豊臣兵士達による虐殺行為が目立っていた。

女はただの子を産むための奴隷として男は死ぬまで働かせられるただの歯車のように奴隷として飼われていたに過ぎなかった。

その民の声を聞き立ち上がった武士もいたが、秀吉の配下の者たちにあっけなく討たれた。

だが、たった一人だけ秀吉を討ち取った男がいた。

その男は白髮の長髪で背丈は160cmの少し痩せ細った男だった。

龍神義経...後の三代目炎閣と呼ばれた男だった。

...千子せんじゅ島 秀吉公到着より1日前...

それは、あやつが炎閣に襲名して少したった後だった。

とあるお屋敷に男たちが夜遅い時間に集まっていた。

「おぉ、来たか!義経殿も...」

「すまない!待たせてしまった。」

豊臣秀吉が来るまでの間にどこで豊臣兵士と秀吉及び護衛を片づけるかを考えていく中、義経は呟いた。

垓紋川がいもんがわの橋の手前で二手に分かれる道があるそこで、桃郎とうろう達の方で豊臣兵士を引きつけてくれないか?」


「けど...それだとお前さん一人で豊臣の精鋭の側近と秀吉を相手にすることになるがいいのか?」

確かにそうかもしれない。だが、今は民が苦しみ続けている所を黙って見ているわけにはいかない。

「元々、一人でやり合うつもりだったからな」

それは激しい豪雨が降る中、橋を渡る一つの駕籠かごが護衛と兵士を連れ渡ろうとしていた。


桃郎に静かに合図を送り、近くの草むらに隠れ桃郎が兵士達をおびき出すのを待つ。

丘上から橋に向けて、数人で弓を一斉に引いた。

矢が秀吉の駕籠へ放たれた。

矢が橋に突き刺さったタイミングで兵士達が丘にいる桃郎たちに気づく。

「いたぞ!奴らを追え〜!!」

兵士達は丘上へ動き出したタイミングで草むらの中を徐々に進んでいく。

そして、橋にいる駕籠の周辺にいる護衛が声を上げた。

「お前は誰だ?」

義経は何も話さず間合いに近づき鬼神のごとく一人を斬り裂いた。

もう、一人はそれに怯み逃げ出そうとしたタイミングで後ろから首元を掻っ切る。

そして、駕籠に向けて刃を突き刺した途端、どこからか声が聞こえた。

橋の先には一人の男がいた。

その男は悪魔のように微笑みながらこう呟いた。

「なぜ?お前がわしに歯向かう?三代目炎閣よ...」

義経...炎閣は笑みを浮かべ呟いた。

「秀吉よ...民が未だに苦しみ、悲しみを抱いているのがわかるか?」

「民などただの雑兵と同じ言わば、将棋の駒と同じだ。この世は強い者のみが生きることを許される...弱者などただの雑兵に等しい。それだけの話だ。苦しみ、痛み、悲しみ?それが何だという。」

炎閣は飽きれた顔を浮かべ、呟いた。

「やはり、お前はここで斬らねばならぬか...」

「はじめるとしよう!炎閣よ。」

両者の刃が交わる反動で大地が揺れる。

千子島の活火山が噴き出す。

マグマが間を流れていく中、豊臣秀吉は義経に向けて言った。

「さすがはわしと互角にやりあうとは...」

炎閣は秀吉を見つめながら静かに呟いた。

「互角?何を言っている。」

秀吉の片腕が一瞬にして斬り裂かれた。

「な...ぬ...」

刃を交えている少ないタイミングで腕を斬り裂く斬撃を放つなど...

まさかあの時か?...

それは刀を鞘に収める一瞬にして鞘から抜き一太刀を浴びせた。

わずか、5秒いないの出来事...

殺意の目がいつもよりもまして秀吉を睨んでいる。

白髪で長髪、そして刀の刀身には蒼く揺らめく炎を纏っていた。

「そろそろ決着をつけるとしよう。」

秀吉の刃と炎閣の刃が交わる。

秀吉の刀の刀身から黒い炎が放たれた。

それを刀で斬り裂くと同時に秀吉が襲いかかった。

攻撃を受け流しながら相手の隙ができるタイミングを見計らって刀身に蒼く揺らめく炎を溜める。

黒い炎を刀身に纏って義経の片腕を斬り裂いた。

タイミングを見計らってわずかの隙に蒼く揺らめく炎を纏った刀で秀吉の首を討ち取った。

「ぐ....ぬ....」

首を斬られる直前、秀吉は首を斬らぬまいと踏ん張っていた。

しかし、それは意味をなさない。

なぜならその炎は何よりも迷いのない一刀だから...

秀吉を討ち取った後...

三代目炎閣は近くの洞窟の中にある泉で最期を迎えた。

そう...一筋の月明かりが照らすあの小さな洞窟の中にある泉で彼は最期こんな言葉を残した。

月明かり照らす泉にて散りゆく火花されど遺せ遺せと刃に託せしおもいの跡...

月明かりが照らす泉で自身は死ぬであろう中、最期に何かしら刃に託せたなら刀工としての自分の役目はここで終わってもきっと次に繋げられたと言えるだろう。

「やはり...私にはまだ俳句などは難しいですね...」

「義経...お前...」

「さらば...我が師であり我が父よ。後は頼みます」

そう言い残し洞窟へ向かった。

悲しくもその背中は人々の怨念や負に染まった真っ黒な念に変わっていた。

炎閣は語り終える際にため息をつき呟いた。

「これがわしが知るこの島で起きた話じゃ...剣も含めこの場にいるものには伝えて置かなければならぬ話じゃからな...」

剣は静かに言った。

「その義経さんが死んだ場所って...」

「破邪の花と呼ばれる不老不死の薬の素となるものが咲く近くの洞窟じゃ...ただしこのことは秀吉も知らぬじゃろう...」

そう言い残し去り際に炎閣は呟いた。

「バカ孫がまだ、生きていればきっと何と言っていただろうな?」

曇天の空を見上げ悲しげな顔をして呟いた。





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