第二十七話 伝説の刀工 炎閣パート1
...千子島 狛狐神社...
どこから語るとしよう...
そうだな...始まりから語ろうとしよう。
炎閣は静かに語り始めた。
さてと語るとしようこの島(千子)に伝わる伝承とある男の話を...
かつてこの千子島には龍神様を祀る神社が存在していた。
それも今から数百年も前の話だ。
その龍神様を祀る神社にその神社を管理するものがいた。
その男の名は龍神義輝、無銘の刀工の名じゃ...
その男は来る日も来る日も龍神様に願い、そして鍛冶場にこもりひたすら刀と向き合った。
そんなある日...
一人の男が小さな子供を抱きかかえ、慌てて神社に来た。
「神主!すまねぇ〜!弥彦を見てやってくれねぇか...」
その少年を症状をみた神主は驚いた表情をしながら呟いた。
その少年の半身を覆い被さるように妖魔が取り憑いていた。
少年に取り憑いた妖魔を自身が作った刀に義輝は妖力を与え、封じた。
幸いにも妖魔が暴れることはなかった。
封印したその刀に複数の札を貼り、神社の誰も寄りつかぬ場所へ隠したはずだった。
村人から感謝された。
今思えば、その少年は義輝を輝かしい目で見つめていたのだろう。
少年を助けて数日が経過する頃にこの島へ謎の軍勢が押し寄せていた。
蝮と呼ばれていたものたちだった。
蝮は各村々で戦に関係ない村人を襲い、男は容赦なく斬り伏せ。女子供は人身売買や秀吉への献上品として本土へ送っていた。
そんな奴らが少年がいる村へと迫っていたことを聞いた龍神義輝は急いで馬を走らせた。
村に到着するとすでに火の手が広がっていた。
村の中へ進むとそこには多くの血と多くの死体が転がっていた。
また、刃向かった女子の亡骸。
赤子を抱きかかえて逃げようとした女子の亡骸が地面に倒れていた。
どこからか声がした。
声がする方へ急ぐとそこには...
数日前に助けた少年が兵士の首を斬り落としていた。
「ひぃ〜!お助け〜」
逃げようと背中を見せた兵士に刀を投げ、相手が倒れた瞬間に首を刎ねた。
まるで、人ではなく鬼...のようだった。
少年の目は人斬りのような目になっていた。
「小僧...お前一人で殺したのか?」
少年はどこか遠くを見つめながら呟いた。
「どうせ!殺さなかったら死ぬだけだ。
弱いものは死に強き者だけが生きる。そんな世の中だろ?」
「お前の家族は?」
「みんな、死んだよ。おっとんもおっかんもねぇねもみんな...俺を庇って死んだ。ねぇねなんて、もうすぐ子供が産まれるって言っていたのにな...」
遺体を引きずって少年は地面に穴を掘り始めた。
「どうするつもりだ?」
「弔ってやるだけだよ。俺にできるのはそれくらいしかないから...」
「小僧...名前は?」
「名前...おっとんがよく呼んでいたのは...弥彦だった。」
弥彦の傍にいき、頭を撫でて義輝は呟いた。
「そうか!弥彦?俺の息子にならないか?いや来い!」
そう言い、村人の死体を一箇所に集めそこに簡易的な墓地を作った。
そう、その日はちょうど冷たい雨が振りはじめた時だった。
それから毎日のように龍神神社で鍛冶場の手伝い、そして洗濯に掃除などをやりはじめた。
それから数年たったある日。
龍神神社に見たことがない男がやってきていた。
「遠路はるばる、こんな遠くの孤島へ足を運んでいただきありがとうございます。信長様」
「遅くなって悪かったな!義輝よ!」
何やら本土から来た武人らしい。
その人の目には俺にすら見えない光が宿っていた。
掃除をしているとき、武人が声をかけてきた。
「お主、掃除は好きか?」
そう、その武人は問う。
「掃除も好きですし、鍛冶場で刀を打つのも好きです。」
信長は驚いた顔をしたあと、すぐに微笑んで言った。
「お主、名は?」
「龍神弥彦と申します。」
「いかんいかん!名乗っていなかったな。わしの名は信長!織田信長じゃ!」
そう、それがあのお方との出会いじゃった。
それから時が流れ...1574年頃...
「いよいよだな!弥彦よ!」
「ええ!信長様...」
その日はわしにとって特別な日だった。
...炎閣襲名の儀の朝に信長は弥彦にこう言った。
「弥彦よ!遂にお前も炎閣として刀を打つことになるのだな...実にめでたい。」
「今までありがとうございました。信長様。」
「顔をあげてよい。よいか!弥彦よ。もしわしがこの世から居なくなってもお前は次の世代に何かを残してやってくれ。」
「といいますと...」
「わしはこの日の本の国が一つに統一させたとき、武器を捨てるつもりでいる。争いを亡くし、わしの子やその先の未来で生きる者たちが静かな平和な世を生きれるようにしてあげたいと思っている。」
弥彦は静かに呟いた。
「ならば、私がそのために刀を作りましょう。一日でも早く、この国をまとめられるように...」
その決意で襲名の儀に望んだ。
一杯の杯を飲み干し、そして前を向く。
その先にはお館様が微笑んで見つめていた。
襲名が終わり次第炎閣は、刀を毎日のように打ち続けた。
そして、苦労の末お館様のために作った妖刀が生まれたその妖刀の名は...第六天世界虚偽 太閤天と後に呼ばれることとなる。
その刀をお館様に納めたとき、お館様はこう言っていた。
「炎閣よ!刀は好きか?」
「はい!好きですぞ。」
「そうか!もしもわしがいなくなったとき、お前がこの刀を伊勢に納めてはくれぬか...この妖刀は強力すぎる力を秘めている。もし万が一、悪いことに使うものが現れてしまったら誰も手を出せなくなる。その前におぬしにこの妖刀を託してもよいか?」
炎閣は微笑んで言った。
「お館様の仰せのままに」
そして、時は流れていきあるとき文が届いた。
お館様だった。
内容は儂への最後の言葉だった。
「炎閣よ!わしはもう時期、死ぬのかもしれぬ。だが、その前におぬしに託したいことがある。わしが願った平和な世を目指すための妖刀を作ってほしいと...」
それを見た時、全て悟った。お館様は自身が誰かに殺されることを分かっていたのだなと...
そう、それは冷たい雨が振り続く日だった。
晃作は泣きながら拍手して呟いた。
「なんて話なんだよ〜!」
「いや、晃作...どこに泣く要素あった?」
「そうか。そうか」
炎閣は静かに微笑みながらそう答えた。
「で?伝承ってやつは?」
かつてこの地にも邪悪な心を宿した男がいた。
その男の名は豊臣秀吉。
幾千の民を見殺しにし、自分が気に入ったものは仲間、あるいは自分の所有物にしていた。
奴は、自身の配下でも手柄をあげられないものは容赦なくその場で斬り伏せた。
男女問わず...
そして、数多の村人を苦しめた末ある男が立ち上がった。
その話をする前にその男と出会った時の話をしよう。
あれは、わしが三十を過ぎた頃だった。
とある村が盗賊に襲われ、村人は惨殺されていた。
わしが馬で駆けつけ、馬から降りたときには地獄絵図のような状況だった。
一人は四肢をもがれた状態だった。
一人の女子は腹を裂かれ生きたまま赤子を取り除かれていた。...麻酔もない状態で...
村の真ん中の井戸の近くに一人の少年が返り血を浴びて何度も相手の顔に石で殴打していた。
その少年には鬼神が宿っているようにわしは見えた。
わしは少年の近づき、少年の方に手をのせ呟いた。
「もうよい...それ以上やるとお前は戻れなくなる...」
まるで、昔の自分を見ているような気分になった。
この子どもを見ていると...
そう...家族も村の人たちも救えなかった幼き日の自分を...




