第二十五話八咫烏
小さな少女の手が袖を引っ張っている。
震える少女が一言呟いた。
「アイツ嫌い...」
剣は女の子と同じ目線に立ち呟いた。
「大丈夫!兄ちゃんが守るから」
男は剣に向かって言った。
「悪いがその娘を返してもらえるか?」
この娘が我らに渡れば、秀吉様へのいい献上品になる。
まずは、このガキどもを油断させれば我らの目的は叶うはず...
男は不適な笑みを浮かべた。
周囲を見渡すと数十人の村人と村人に紛れた兵士が周りを囲んでいた。
剣はため息をついて晃作に伝えた。
「晃作!この女の子を安全なところへ避難させてくれるか?」
晃作は女の子をお姫様抱っこした状態で言った。
「いいけど、剣は?」
剣は少し笑みを浮かべ呟いた。
「大丈夫!豊臣兵士が終わったら俺も行くから!」
「あ〜あ、なんで余計なことしちゃうかな?この小僧!!」
「そりゃ、どうも塵の処理は俺がしてやるから安心しろよ!」
「舐めやがって!」
剣に向けて刃が振りかざされた。
それを片手で刃を止め、言い放った。
「なんか言ったか?雑草が?」
敵の刀の刀身を片手でへし折った。
それと同時に強い一撃を腹に打ち込んだ。
「グッハ...」
「まだ!いるぜ〜」
相手が斬りかかってきたタイミングで相手のわずかな動きを予測し相手の刀を持つ手を弾き、そして合気道で制圧した。
「なんだ...コイツ!!刀を使わずにただの体術だけで...だが、こっちには数十人いるんだぜ?お前一人くらい倒すことなんてざ...」
一瞬の出来事で何が起こったのか周りの奴らは分からずにいた。
さっきまで話してた奴の首が地面に転がっている。
「ヒィ〜!!」
そこに現れたのは晃作だった。
その瞬間、黒い炎が周囲に広がった。
「悪い!剣、遅くなった!」
「晃作!?なんで戻ってきた。」
「大丈夫!大丈夫!女の子は千代ちゃんに頼んだよ!それよりもコイツらまとめてやる?」
「まぁ、あんまり暴れない程度にしよう。」
「分かった!」
複数の敵が一斉に晃作と剣に襲いかかる。
襲いかかる敵を晃作の陽狼が薙ぎ払う。
「剣!」
晃作の黒い炎に妖刀ではない自身の刀を重ねる。
「少し火力が弱いかも...」
「いや、十分だ!」
剣の刀に晃作の黒炎が宿る。
二つの黒炎を纏った刀が相手を次々と斬り伏せる。
その場にいた全員を斬り伏せたとき、どこからか拍手をしている音が聞こえる。
拍手をしている方向をみるとそこには十人の忍者の服を着た者たちがいた。
「お見事!!さすが噂に聞く、獅子王剣!そして妖刀陽狼の所有者...蕗谷晃作だね!!」
そいつらを見た時、圧倒的な威圧を放っていた。
「紹介が遅れたね〜!!私たちは八咫烏!(やたがらす)妖刀を拒み嫌うもの!」
「八咫烏!?」
...数日前 大阪城 天守閣...
「秀吉様!八咫烏が結集しました。」
「おぉ〜!そうか!ならば儂も顔を出せねばな!よくぞ来てくれた!わが自慢の特殊隠密機動妖刀狩り部隊...八咫烏よ!」
「お会いできて光栄です!我が魔王!!」
秀吉は少し照れくさそうに言った。
「よさぬか!九喇嘛よ!」
「それで?私たちを招集したということは...また妖刀狩りを?」
「なら少しばかり本題に入るとしよう。」
秀吉はこう話した。
新たな妖刀が現れ、今の秀吉軍には力がないためいち早く妖刀使いの人数を減らし可能であれば獅子王剣を殺すようにせよ...
また、まだ回収していない認識識別固有妖刀を回収せよ!と...
それに付け加えるかのように破邪の花の回収を八咫烏に命じた。
それを聞いた九喇嘛率いる八咫烏は呟いた。
「ハッ!我が魔王の仰せのままに!」
...千子島...
「マジかよ...さすがにキツいぜ...剣!」
相手は十人...妖刀があればなんとかなるはずでも今の俺には妖刀は...
「まずはお前だ!蕗谷晃作!」
鎖鎌を持った男が晃作に襲いかかる。
その攻撃を避けたと同時にこう呟いた。
「覚ませ!陽狼!」
「咎魔の印 藍」
陽狼の黒炎が消えた...
「陽狼の能力が使えない...」
鎖鎌を持った男の後には印を結んでいる女がいた。
咎魔の印とは...かつて三百年ほど前に存在した妖刀使いを皆殺しにするために伊賀流忍者により考案されたとされている印...
妖力または、自身の命を代償に払うことで印を結んでいる限り発動できる。
ただし、一回使うたびに自身の身体に黒い斑点が出没しそれが重なるにつれて自身の肉体が滅んでいく。
「貰った〜!!」
そう言い放った瞬間、その攻撃を刀で防いだ。
刃と刃が交わる中、晃作は善悪の言葉を思いだしていた。
「晃作!もし、敵わないやつがいたらどうする?」
「どうするって倒すしかないだろ?」
「アッ...ハハハ!面白い答えを言うな!そういうときはだな...相手の攻撃を五感で感じて...受け流すんだよ!」
おっちゃん...今ならなんとなくだけど分かるよ...
相手の攻撃をーーーー
受け流すやり方が...
刀がどこを狙うかが分かる!
今までよりも正確に...
相手の攻撃を避けつつ相手の隙ができる瞬間を伺う。
それは今までにないほどの顔をしていた。
「こなくそ~!!」
相手が余裕をなくしたタイミングで相手の武器を弾き返し一瞬にして相手の喉元に刃を突き立てた。
他の八咫烏たちが一斉に構える瞬間...「動くな」と声が響き渡る。
「それ以上動いたらコイツの首を斬り落とす。」
周りは静まり返った瞬間、遠くから火の矢が八咫烏の鎖鎌を持っていた男の胸をピンポイントで貫いた。
「グッハァ...」
「おいおい!そんな雑草なんてどうでもいいだろ?確かに強いのかも知れねぇが俺たちは負けた弱いやつは切り捨てる。例え、それが同志でもな〜...」
それを見ていた剣は俯いたまま歯を食いしばっていた。
そして、剣はその辺にあった刀を投げた!
投げた刀は相手の頬をぎりぎり掠った。
「ふ...ざけんな...テメェらの仲間じゃねぇのかよ?」
「誰が仲間だ?俺たちはただの...」
その瞬間、相手の顔めがけて蹴りをかました。
ギリギリで受け身をとり、致命傷はさけることができたが反動で片手が使えない。
何なんだ?コイツは...
その目はあのお方の目に似ている。
まるで鬼のような目だ!
とりあえず早く逃げなければ...
その瞬間、懐から煙玉を取り出し放った。
静まり返った村には戦ったものたちの遺体が転がっていた。
土を掘り起こし、その中に遺体を埋め簡易的な木で建てて静かに手を合わせながらこう願った。
あなた達が来世では残酷な未来にならないように僕は願います。
だからもしもこの願いが届くのなら...きっと...また会えるのを楽しみにしてます
と...
手を合わせ、その場を後にしようとした時幼い少女が静かに手を合わせたった一本のタンポポを供えていた。
...千子島 南側...
村が燃えている。
誰かの悲鳴が聞こえる中、一人の大柄の男が笑いはじめた。
「この村はこんなものかよ...俺をもっと満たせてくれよ!!」
男の背中には赤い印が刻まれていた。
「隻、お前もいたのか?」
「おっと、お頭...よしてくださいよその呼び方!」
「済まなかったな!紅」
「で?どうしたんだ?」
「実は兄貴に頼みたいものがあって...」
「妖刀か?」
「はい!
続けて呟いた。
「分かった!じきに渡す」
「よろしくお願いします。」
男はその場を後にし呟いた。
「さぁ~、虐殺を始めよう!」




