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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー55

 「康二さんのカスタードって、どんな感じですか?」


 希は、康二のプリンが気になるようだった。


 「うん?昔ながらのプリンって感じかな」


 康二は、そう言って笑うと、希が照れくさそうに言った。


 「一口、もらっても良いですか?」


 「えっ?い、良いよ。どうぞ」


 康二は、ドギマギしながら、自分が食べていたプリンを希に渡した。すると、希も自分が食べていたプリンを康二に渡し言った。


 「はい。私のもどうぞ。食べ比べです」


 そう言って笑った。


 「う、うん。そうだね」


 康二は、希から手渡されたプリンを見つめて思った。


 これってさ……


 「うーん、確かにこれはこれで美味しいかも、どうしました?」


 希は、考え込んで動かなくなった康二を見て不思議そうに聞いた。


 「うん?」


 康二は、ハッとして希を見ると、希は心配そうに言った。


 「もしかして、シェアするの嫌でした?」


 「いや、違うよ。違う。ごめんね、ぼーっとしちゃった」


 康二は、焦って言い訳をすると、慌てて希から手渡されたプリンを食べた。


 「うん、本当に濃厚だね」


 「でしょ?」


 希は康二の反応を嬉しそうに見ながら言った。


 これって、今の若い子たちは普通の事なんだよな……


 そう康二は思った。まるで、おじさんである。希は、そんな事を気にせずに康二のプリンを食べていた。


 「あー美味しかった。結局、半分こになっちゃいましたね」


 希はそう言って笑った。


 「そうだね。半分こだ」


 康二もそう言って笑った。


 「でもさ、良かったの?こんなおじさんと半分こって?」


 康二がそう聞くと、希が言った。


 「別に、全然気にしてませんよ…………あっ!」


 やっと、希も気がついたようだった。


 「いえ、あの……」


 「やっぱ、気になるよね……」


 康二が少し落ち込んで言うと、希が言った。


 「いえ!全然気にしてません!ホントですよ。本当に気にしてないです。ただ……」


 「ただ?」


 康二が聞くと、希が照れながら答えた。


 「考えてみたら、康二さんとは知り合ったばかりで……今日なんかも初めてのツーリングなのに、なんか甘えてばっかりで……」


 康二は、黙って聞いていた。


 「なんか、康二さんは安心できるって言うか、わがまま言えちゃうって言うか、休憩の時のコンビニでもあんな態度しちゃって……ほんとごめんなさい。こんな図々しい事言われても困っちゃいますよね?」


 康二は、希の話を聞いて笑って答えた。


 「僕は、希ちゃんが図々しいなんて思って無いよ。逆にこんなおじさんを相手にしてくれて嬉しいと思ってるけど」


 「おじさんだなんて、そんな……康二さんは全然おじさんじゃ無いです。すごく優しくて気を遣ってくれて……素敵なお兄さんって感じです。だから知らないうちに甘えちゃって……」


 希はそう言うと、顔を真っ赤にして俯いてしまった。


 「そっか、お兄さんか……うん。そう言ってくれて嬉しいよ。だからさ、これからも頼って欲しいな。もちろん、希ちゃんが良かったらだけど」


 康二は笑顔で、そう希に言いながらも心はちょっとざわついていた。


 やっぱり、そうだよね……そんな都合の良い話あるわけないか……


 康二がそう思っていると、希に笑顔が戻って言った。


 「はい。きっと、私の事だからすっごく頼りにしちゃうと思います。今日も聞きたい事たくさんあるんですから……だから覚悟して下さいね」


 「お手柔らかにね」


 康二は、そう言うと笑って続けた。


 「さて、このビーカーを紙ナプキンに包んだら、多少のクッションになるかな。江ノ島に行けば水道もあるからそこで洗えば良いし。さすがに箱に入れたら、箱が潰れちゃうかな……」


 康二が心のざわつきを隠すように言うと希が答えた。


 「そうですね……この箱、可愛いからお土産に持って帰りたいんですけど……」


 「一応、クッションの事も考えて、箱に入れて僕のボディバックに入れるけど、潰れちゃったらごめんね」


 康二がそう言うと、希は顔を赤らめながら言った。


 「そうしたら、また連れて来てください。他のプリンも食べたいし」


 「うん。良いよ。また一緒に来よう」


 康二が笑顔で答えると、希は元気よく答えた。


 「はい!お願いします!」


 希は、康二に対するこの感情が、どう言うものかまだわからない。

 希は、康二には偽らないで素の自分を出せる事が嬉しくもあり戸惑いもあるのだが、それを康二が何も言わず受け入れてくれる事が何よりも嬉しく感じていた。

 希は今まで、こんなに自分を出せる男の人に出会った事は無かった。


 それだけでも、康二は特別な人と思えたのだった


 康二は、ビーカー二つを丁寧に紙ナプキンで包み、箱に入れるとボディバックに入れた。


 「うん、大きめなバックで来て良かった」


 多少、膨らんだが、しっかりとバックの中に収まった。


 「もう少しで逗子の海岸線に出るよ。渋滞してなきゃ良いけど、ちょっと覚悟しててね」


 康二はそう言いながらヘルメットを手渡した。


 「はい。海、楽しみです」


 希はそう言いながらヘルメットを受け取った。


 二人はエンジンをかけてバイクに跨った。


 「じゃ、行こうか」


 康二は、そう言うと左右を確認してゆっくりと駐車場を出た。希も康二と同じように左右を確認して駐車場を出た。


次回の更新は24日となります

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