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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー48

 康二達は16号を横須賀方面に走っていた。左側には堀割川が並行して流れている。川には、ところどころ小舟が停泊していた。海が近いせいか、希は微かに潮の香りを感じていた。


 川と並行してしばらく走ると、康二は、右のウインカーを出した。次の交差点で右折する為だ。康二は後ろの希が、ウインカーを出したのをバックミラーで確認すると、中央側の車線に車線変更をした。そして希も、康二が車線変更を始めたのを確認してから後に続いた。希も慣れて来たようで、康二のウインカーを出すタイミングと車線変更のタイミングの流れが読めて来たようだ。

 

 なかなか良いコンビネーションになって来た。


 康二も、そう感じたのか、自然と笑みが溢れていた。ただ、希に気を遣っているだけではなく、一緒に走るのが楽しいと感じていたのだ。


 康二は右折の信号待ちで希に話しかけた。


 「大丈夫?疲れてない?」


 希は笑顔で答えた。


 「大丈夫ですよ!すごく楽しいです!」


 希の興奮が伝わってくる。


 楽しそうで良かった……


 康二は、希の姿を見てそう思っていた。


 だけど、そろそろ休憩取った方が良いかな……


 ここまで、3時間近く走り続けている。テンションが高いせいか疲れは感じてはいないようだが、適度に休憩を入れなければ、後に響く。

 

 「ここを右折して、コンビニがあったら、休憩しようか?」


 康二は希に言った。


 「はい!」


 希は明るく答えた。今、この楽しい時間を過ごしている康二と話したい事がたくさんあった。バイクで走っていると、伝えたい事をすぐに伝えられないもどかしさを感じていたのだ。この楽しい思いを康二と共有したい、希はそう思っていた。


 信号が変わり、横須賀方面に右折してしばらくすると、コンビニが見つかった。康二は、ウインカーを出しつつ、後ろの希に手で合図を送った。すると、希も続いてウインカーを出した。


 康二と希は、コンビニの駐車場に続けて入ると、二台並べてバイクを止めた。康二が一吹かししてエンジンを切ると、希も同じようにエンジンを一吹かししてエンジンを切った。


 希はヘルメットを脱ぐと、心地良い風が頬を撫でた。


 気持ち良い……


 希はそう思った。今までバイクに乗っていて感じた事がない心地良さだった。


 康二がヘルメットを脱ぎながら言った。


 「ヘルメット貸して。僕のフォルダーに付けとくから」


 「はい。お願いします」


 希が康二にヘルメットを渡すと、康二はチェーンを二人のヘルメットに通し、ハンドルに括り付けて鍵をかけた。二人のヘルメットが仲良く康二のバイクに並んでいる姿を見て、希はなんだか嬉しかった。


 「さて、何か飲み物でも買おうか?」


 「はい!」


 希は、急いで遥子と灯に教えて貰った、ニット帽を被り康二と一緒に店内に入った。


 「何飲む?」


 康二は、希に聞いた。


 「何にしようかな……康二さんは、いつものポッカですよね?」


 希は、冷蔵庫を開けて康二にポッカの缶コーヒーを取り手渡して笑って言った。


 「あ、ありがとう」


 康二は、この希のちょっとした行動にドキッとしていた。自分の好きな缶コーヒーを覚えていてくれた事が嬉しかった。


 「私も康二さんと同じのにしよっと」


 希はそう言うと、康二と同じポッカの缶コーヒーを手に取り、康二に向かって笑顔を見せた。


 「!?」


 康二は、希が見せてくれた笑顔に、またドキッとしていた。そしてそれが希にバレないように、希の手から缶コーヒーを取り言った。


 「じゃ、ここは僕が出すね」


 そう言うと、レジに向かった。


 「そんな、良いですよ」


 希が康二を追いかけて言うと、康二は照れ隠しなのか、希を見ないで言った。


 「良いから、良いから」


 そう言いながら、レジに缶コーヒーを2本並べていた。


 「もう!次は私が出しますからね!」


 希が、少し膨れてそう言うと、康二は笑顔で答えた。


 「うん、今度はそうして」


 「はい!」


 希は嬉しそうに答えた。


 二人はコンビニから出ると、康二が手に持っていた缶コーヒーを希に手渡して、バイクの元に向かった。


 空は綺麗に晴れ渡っている。絶好のバイク日和だ。


 康二が缶コーヒーを開けるのを見ると、希も缶コーヒーを開け一口飲んだ。


 「美味しい」


 思わず希が言った。


 「普段、缶コーヒー飲まないんですけど、美味しいんですね」


 希がそう言うと、康二が笑って答えた。


 「うん、ツーリングの時に飲むと、本当に美味しいんだよね。不思議なんだけどさ」


 そう言いながら、肩掛けのボディバッグを開けて、小さな革ケースを取り出した。


 「何ですか?それ?」


 希が不思議そうに聞くと、康二が答えた。


 「ああ、これ?タバコケース、あの……タバコ吸っても良いかな?」


 康二が恐る恐る希に聞くと、希は笑顔で答えた。


 「ええ、全然大丈夫ですよ」


 「ありがとう。最近はタバコの煙が嫌だって人が多いから……」


 康二は言い訳のようにそう言いながら、タバコケースからタバコを1本取り出すと、ZIPPOライターの蓋を開けた。


 カキンッ


 ZIPPOライター独特の金属音が響いた。希は、その音が心地良く聞こえた。バイクに似合う音だと感じた。


 康二は、タバコに火を付けると、大きく吸い込んで、空に向かって煙を吐き出した。


 ※タバコは20歳になってから。マナーを守ってポイ捨てはやめましょう。


 青空に白いタバコの煙が馴染んでいた。これは、ツーリングの時の康二のルーティンだった。康二は晴れた空にタバコの煙を吐きかけるのが好きだった。

次回の更新は29日となります

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