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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー43

 康二は腕時計を見ると、時計の針は朝8時を指していた。


 やっぱ、早かったかなぁ……


 康二はそう思ってタバコに火を付け缶コーヒーに口を付けると、晴れ渡った青空に向けて、タバコの煙を吐いた。


 タバコの青白い煙が青空に溶け込んで行った。


 良い天気になって良かった……


 康二はそう思いながら、タバコを吸っていると、1台のバイクが駐車場に入ってきた。


 来た!!


 康二は急いで、タバコを消し、携帯灰皿に吸い殻を押し込むと、何事もなかったかの様にバイクを向かい入れた。


 そのバイクは康二の隣に停め、一吹かししてエンジンを切ると、ヘルメットを脱いで満面の笑みで康二に言った。


 「おはようございます!!!早いですね。お待たせしちゃいました?」


 康二は、眩しい笑顔の希に、一瞬ドキリとした。


 あれ?なんかこの前と雰囲気違うかも……


 それもそのはずである。先週、遥子に教わった事を、希はしっかりと実践していたのだ。


 「どうしました?」


 希が康二に聞いた。


 「いや、ごめん。あの……いつもと雰囲気違ったんで、びっくりしちゃった」


 康二は、少しドキマギしながら答えた。すると、希が嬉しそうに答えた。


 「ほんとですか?だったら嬉しいです!遥子さんに色々と教わったんですよ」


 遥子さん、何も言ってなかったのに……


 康二はそう思った。


 こう言う事をバラしてしまうのが希である。希は、サプライズが出来ない性格なのだ。せっかく遥子がお膳立てをしたのに、これでは台無しである。

 しかし、康二は、そんな裏表の無い希に好感を持っていた。そしていつもと違う希を見て、自分がドギマギしている事を悟られない様に、素知らぬ素振りをする事に苦心をしていた。


 希と言えば、そんな康二を見て、康二の反応が遥子や灯が言っていた通りだと言う事がわかった。


 確かに、変化には気がつくんだけど、それ以上は言ってくれないのね……正に朴念仁……逆にそれが康二さんらしいかも……


 事前に情報を得ていたからかもしれないが、どちらかといえば、この康二の朴念仁ぶりに希は好感を持っていた。


 「随分、早く来たね?」


 康二は1時間も早く来ていた自分の事を棚に上げて希に聞いた。すると、希は少し恥ずかしそうに答えた。


 「実は、昨日楽しみで、なかなか寝つけなかったんですよ。まるで、遠足前の小学生みたいに……」


 それは、まさに康二も同じだった。


 「実は、僕もそうなんだ。いい歳したおじさんが恥ずかしいけど……」


 康二も照れくさそうに言った。すると希は笑って答えた。


 「じゃあ、おんなじですね!ちょっと嬉しいかも……」


 それって、どう言う意味……?


 康二が、希の天然発言に戸惑っていると、希が康二に聞いた。


 「このバイクが、康二さんの愛車ですか?大きいですね」


 「あ、うん。これ、元はと言えば兄さんのバイクだけどね。SUZUKIのGSX750Eって言うんだ」



 SUZUKI GSX750E


 4サイクル直列4気筒 DOHC4バルブ750cc。輸出モデルGSX1100Eの国内モデルとして1980年に発売された。

 最高出力69PSを発揮し、車体に似合わず優れたレスポンスとトップレベルの動力性能を発揮。GPマシンのフィードバックであるANDF(アンチ・ノーズ・ダイブ機構式フロントフォーク)を世界初採用。

 大型の角形ヘッドライトや重厚で存在感のある車体から「べこ(牛の意)」もしくは「赤べこ」と言う愛称で親しまれた。

 1980年台初頭には、丸型ヘッドライトに改造された白バイも多く見られた。

 康二の愛車は1980年モデルなので、厳密に言えば「赤べこ」では無い(「赤べこ」と言われたのは1981年のマイナーチェンジ後から)


 それにしても、昭和のニックネームの付け方は素敵で面白い物が多いですね。車にしてもバイクにしてもユーザーから自然発生的に生まれているのが、愛情を感じます(筆者談)



 「これ『赤べこ』って言われってるんだよ。ほら、東北の民芸品の首振る赤い牛のおもちゃ見たこと無い?」


 希は少し考えると、ハッと閃いて嬉しそうに答えた。


 「あー、あれですか!」


 「そう、首が上下する奴」


 康二も楽しそうに答えた。


 「『赤べこ』なんてひどく無いですか?」


 希がそう言うと、康二は笑いながら答えた。


 「でもね、僕は気に入ってるんだ。語感的に可愛くない?」


 「確かに……そうかもしれませんねぇ『赤べこ』かぁ」


 希は感心しながら康二のバイクを見ていた。


 綺麗にエンジンまで磨き上げられた車体。ヨシムラのマフラーをはじめとした、品の良いカスタム。オーナーである康二の愛情が注がれているのがよくわかる。


 「本当に綺麗にしてるんですね。私も見習わなきゃ」


 希がそう言うと、康二が自嘲的に笑って答えた。


 「これくらいしか趣味が無いからさ。それに、兄さんが残してくれた物だしね……」


 兄さんが残してくれた物か……


 希は思った。


 このバイク、康二さんは自分の為に乗ってるのかな、それとも亡くなったお兄さんの為?そう言えば、みんなが言っていた自慢の愛車って康二さんから聞いてない……


 「と言うことで、鈴木さんが乗っているSUZUKIのバイクでした」


 康二が明るく言うと、希も明るく答えた。


 「はい!」


 康二が自分から話さない以上、これ以上踏み込んではいけないと思ったのだ。


 「で、突然だけどスマホフォルダーは付けてる?」


 康二は希に聞いた。


 「はい。付けてますよ」


 「じゃ、一応、スマホでナビアプリ出しておいてくれるかな?一応、僕が前を走るつもりだけど、万が一逸れちゃったら、自分がどこにいるかわかるでしょ?」


 康二が言った。実は共有をかければ、お互いの居場所がわかるのだが、一応、相手は若い女の子なので気を使ったのだ。

次回の更新は12日となります。

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