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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー37

 「当時ね、姉御はSUZUKIのGSX400Fインパルスってバイクに乗ってたんだ。で、学校に行くのにもインパルスでかっ飛んでたわけ。それも、ロンスカ制服で。姉御の学校が僕の家の近所でさ、かっこいいなぁって見てたの。それで、僕の近所のお姉さんが、姉御と同じ学校でさ、聞いてみたのさ。あのインパルスに乗ってるのって誰?って」


 「そのペンキ屋の幼馴染っていうのが、私の友達だった訳だよ。『はな』って言ってね。その子が、私の事をコイツに教えたらしいんだ」


 もう、遥子は開き直っていた。


 「なんだよぉ。こういうのって自分で言ったら面白くないじゃん」


 ペンキ屋が不満げに言うと、今度は逆に遥子が勝ち誇った顔で言った。


 「もう、開き直った。自分で言った方が恥ずかしくない!」


 「じゃあ、姉御から言ってよ」


 「いいよ、別に……で、その『はな』が、私の事を…………」


 急に、遥子が黙ってしまった。ペンキ屋はその姿を見て、ニヤニヤしながら意地悪く言った。


 「どうしたの?」


 「…………やっぱり言えない…………」


 遥子の恥ずかしがる姿を見て、3人は大声で笑った。


 「遥子さんのそんな姿初めて見た!乙女じゃん!!」


 灯が嬉しそうに言うと、希も笑いながら言った。


 「遥子さん、かわいい!」


 「『インパルスの遥子』らしくないよね」


 とペンキ屋が言うと、


 「あ!!!言いやがったな!!!」


 遥子がペンキ屋を睨みつけると、希と灯が顔を見合わせて言った。


 「インパルスの……」


 「遥子……?」


 「そう、インパルスで颯爽と走っててね。女子校だったから後輩からも大人気だったらしいよ。バレンタインにたくさんチョコ貰ってたって、うちのはなちゃんが言ってた」


 ペンキ屋が笑いながら言うと、また希と灯が顔を見合わせて、驚いて言った。


 「うちのはなちゃん?」


 「ペンキ屋!男が好きなんじゃ無かったのか?」


 「うん?あれ?灯ちゃんは知らなかった?僕、結婚してるよ」


 ペンキ屋がさらりと言った。


 「ちょっと……情報量が多すぎて頭が……」


 希が困惑した顔で言うと、灯も驚いた顔で言った。


 「オマエ、そんな事一回も言ってない!!」


 「そうだっけ?いや、姉御の事をはなちゃんに聞いたから仲良くなってさ、ね!姉御!」


 「私の黒歴史が……黒歴史が……」


 遥子は、黒歴史をばらされたショックで放心状態だった。


 「姉御?」


 「遥子さん?」


 ペンキ屋と希が放心状態の遥子に心配そうに声をかけた。


 「私の黒歴史……」


 遥子はまだ、ショックから立ち直れない


 「姉御ってば!」


 灯が遥子の耳元で叫んだ。


 「はっ!」


 遥子は、やっと我に返った。


 「もう、やっと正気に戻ったよ」


 灯が文句を言うと、遥子は何事もなかった様に言った。


 「何の事?」


 「もう、放心状態だったんですよ」


 希が心配そうに言うと、


 「私が?そんなぁ。至って普通だよ」


 ペンキ屋がニヤリと笑いながら言った。


 「そんなフリをして、無かった事にしようとしてもバレバレだからね」


 企みがばれた遥子は開き直って言った。


 「うるさい!そうよ!私は『インパルスの遥子』だよ!悪いか!!」


 「あっ開き直った!」


 灯がそう言うと、遥子はブツクサと文句を言った。


 「はなが悪いんだ。余計な事を言いやがって」


 「はなちゃんの悪口言わないでよぉ」


 ペンキ屋は、遥子の友達で自分のパートナーの『はな』のことを庇った。


 「そうそう、はなさんの事を聞きたいんですよ。遥子さんのお友達で、ペンキ屋さんのお嫁さんでしょ?でも、さっきペンキ屋さんは自分の事、ゲイだって言ったじゃないですか?」


 希がペンキ屋に聞くと、灯もうんうんと頷いていた。


 「簡単な話だよ。はなちゃんは僕の大切なパートナー。僕の事を全部理解して、僕と結婚してくれたんだ。ね、姉御」


 「あの子も、ちょっと変わってたからね。それで、ペンキ屋と気があったんじゃないの」


 遥子は、黒歴史をバラされた腹いせからか、少しトゲのある言い方をした。


 「なんか、当たりキツイなぁ。はなちゃんに姉御の事を聞いてるうちにね、なんか、はなちゃんのほんわかした雰囲気が良いなぁって思ってさ。それで、何回か二人で出かけてるうちにね。姉御とも会ったよね」


 「うん。『はな』は昔からのんびりとした所があってね、私と性格正反対なんだよね。だからかもしれないけど、私とも気が合って、高校時代、仲良かったんだよね。私としては、良い奥さんになって、家庭に収まるのかなって思ってたんだけど、こんな変な奴のお嫁さんになっちゃった」


 まだ、遥子はトゲが抜けていないようだ。


 「変な奴ってさぁ」


 ペンキ屋が文句を言った。


 「変な奴だろ?ゲイだなんて言っておいて、可愛い『はな』と結婚してさ。それも私らの中じゃ一番早くだよ?ヤブなんて、ペンキ屋が結婚したって聞いた時に、ヤケ酒で酷かったんだから」


 遥子が笑いながら言った。


 「ヤブさんが?」


 希が聞くと、遥子は笑いながら答えた。


 「なんで、ゲイって言ってるアイツが結婚出来て、俺は出来ないんだぁって言ってさ」


 「ヤブさんっぽいですね」


 希も笑った。


 「ヤブは、今も彼女いないみたいだし、まだまだ結婚出来ないんじゃないかな。アイツは結婚願望強いんだけどねぇ」


 遥子が笑いながらそう言うと、灯が少しホッとした顔をしたのを希は見逃さなかった。


 ……灯ちゃん?……


 「何にしても、『はな』も幸せそうだしね。『はな』が泣く様なことがあったら、私がペンキ屋を喰らわしてやるけどさ」


 遥子はペンキ屋を睨みながら言った。


 「怖い怖い」


 ペンキ屋は大袈裟に震えて見せた。


次回の更新は22日となります。

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