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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー33

 ペンキ屋がいつもの峠で裕介達を待っていた。


 オヤジさんに見てもらったRZの試運転がてら、裕介、康一、そしてどう言うわけか遥子と峠を走ろうと言う事になったのだ。


 このツーリングを企画したのは、康一だった。


 まずオヤジさんのイジったRZが見たかったのが第一の理由。そして、ペンキ屋の走りを見たかったのが、第二の理由だった。

 裕介も康一も、タイヤの減り具合やバイクの様子を見る限り、あまり褒められた走りはしていないという予想はしていたが、実際にはペンキ屋の走りを間近で見たことは無い。


 オヤジさんの公道セッティングが施されたRZでペンキ屋の走りがどう変わったのか興味があったのだ。

 

 もし、ペンキ屋の走りが変わっていないのであれば、このセッティングでは単純に遅くなるだけだ。

 それは以前の走りはオヤジさんが手を入れる前のピーキーなセッティングに合わせていたものだから、オヤジさんが手を入れた今のセッティングには合うはずもないからだ。


 ペンキ屋は、裕介達と合流する前に、軽く峠を流してみた。


 明らかに以前とフィーリングが違う。最初は戸惑っていたが、少しコツを掴むと、スムースにコーナーを回れた。以前の自分が作ったセッティングに比べると明らかに乗りやすいと感じた。それも無理に回転を上げなくても、トルクフルでアクセルを開けると綺麗に吹け上がってくれる。


 コーナーをクリアする度に、楽しくて仕方が無かった。


 実際は、コーナー速度は以前よりも遅くなっているかもしれない。しかし、バイクに暴力的な部分が無くなった分、操る楽しさ、バイクに乗る楽しさ、気持ち良さを与えてくれた。


 やっぱ、凄いな……


 ペンキ屋は、感嘆するしか無かった。自分のバイクの性格をここまで変えたオヤジさんの腕に脱帽することしかできなかった。

 もちろん、オヤジさんの腕を疑っていたわけではない。しかし、ここまで変わるとは思ってもいなかったのだ。だが実際にはセッティングだけでそれだけ劇的に変わる事はまず無いだろう。それはペンキ屋の感覚が鋭いから感じる事ができたとも言える。


 ペンキ屋が待っていると、裕介のCBを先頭に康一、そして遥子のインパルスが続けて入ってきた。

 裕介達は、一吹かししてエンジンを切ると、ヘルメットのシールドを開けてペンキ屋に軽く挨拶をした。


 「よう!待ったか?」


 「全然待ってないよ。大丈夫」


 実際は、随分と早く来て峠を一回りして来たのだが、その事は黙っていた。しかし、裕介や康一にはそんな事はお見通しだった。


 「で、どうだった?オヤジさんのセッティングは?」


 康一はヘルメットを脱いでペンキ屋に聞いた。


 「うん、全然変わってた。なんか、前よりも走りやすくなってた。さっき、ぐるりと回ったんだけどさ。こんなに変わるなんて思ってなかった。」


 ペンキ屋は本当に嬉しそうに答えた。


 やっぱ先に来てんじゃん……


 裕介は嬉しそうに話しているペンキ屋を見て思った。


 「さてと、一休みしてから『もう一回』回るか?」


 裕介はわざと、「もう一回」を強調して言った。


 「『もう一回』って私ら来たばっかじゃん」


 遥子が不思議そうに言った。


 「いや、『もう一回』だよな?」


 裕介は康一に聞いた。康一も裕介の言いたい事を察して言った。


 「そうだね、少なくともペンキ屋はね。先に来て回ってたんだろ?」


 「あ〜そう言う事」


 遥子も納得して続けて言った。


 「オマエ、可愛いところあるじゃん」


 裕介も康一も遥子もペンキ屋の気持ちがわかる。自分のバイクをいじれば、その結果を早く試したいのは、バイク乗りとしては当然の事だ。

 その事をあえて隠すペンキ屋の、背伸びとも言える意地の張り方が可愛いと3人は思っていた。大人ぶって、他人を寄せ付けないように見せていても、本当の部分は、ペンキ屋はまだ高校生なのだ。

 子供のようにはしゃいでいるペンキ屋を見て、ペンキ屋より少し大人の3人は微笑ましく思っていた。とは言っても、きっと自分達も同じようにはしゃぐだろう。こういう事に関しては大人も子供も関係ないのがバイク乗りだ。そして3人はペンキ屋の本音が垣間見えて、少し嬉しかった。


 ペンキ屋は照れながら言った。


 「我慢出来なくてさ、実は先に来て回ってた」


 康一は笑いながら言った。


 「わかるよ、その気持ち。俺もそうだもん」


 「だよね!それもさ、人がいじったのなんて初めてだからさ。信用してないわけじゃなくて、どうなるのかなって思っててさ……」


 誰かに話したくて仕方が無かったのだろう、興奮冷めやらないペンキ屋に裕介が言った。


 「わかった。わかった。ちゃんと聞くから、とりあえず缶コーヒー飲みながら一休みな」


 そう言いながら、ペンキ屋の肩を軽く叩いて自動販売機の方に歩いて行った。


 「お待たせ。さ、行こ」


 遥子もそう言うと遥子を待っていた康一と腕を組んで裕介の元に向かった。


 「遥子!オマエイチャイチャすんな!」


 康一と腕を組んでいる遥子を裕介が冷かして言った。


 「別に良いだろ!久しぶりなんだから」


 遥子は、文句を言いながらも嬉しそうだった。ペンキ屋もそんな3人を追いかけて行った。


 「ほらよ」


 裕介は、みんなに缶コーヒーを配りながらベンチに座った。もちろん、この頃から裕介はジョージア、康一と遥子はポッカだった。康二のポッカ好きは兄、康一の影響だった。ペンキ屋には裕介と同じジョージアを渡し、ペンキ屋が聞かれる事を期待しているであろう事を聞いた。

 

 「で?オヤジの手が入ったRZはどうだった?気に入ったか?」


次回の更新は8日となります。

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