表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/71

第三話ーー晴れーー30

 「とりあえず、様子見かな?仲良くなれば、本音も話してくれるんじゃ無い?それに、彼が嫌だと思えば、もう来なくなるだろうしさ」


 康一はそう言った。


 何にしてもこれくらいで人を判断するのは、相手にも失礼であると言う物だ。

 

 勿論、相手にも選ぶ権利はあるし、相手がこちらをどう思っているかなんてわかるはずも無いわけだし、もし、ペンキ屋が嫌だと思えば、ただそれだけの話でしかない。康一にしても、そんなペンキ屋を無理して引き留めるつもりも無い。冷たい様だが、それも致し方ないことだ。嫌な人間と無理して付き合っても碌な事にならない。そう言う物だ。そういった所は、クールなのだ。


 ただし、その分ペンキ屋の隠れた本音を知りたいとも思っていた。ペンキ屋の本音を知ってから判断したいと思っていた。


 そんな話をしていると、店の入り口が勢いよく開いた。


 「買って来た、UCC!」


 そこには、コンビニ袋をぶら下げたペンキ屋が息を切らして立っていた。


 「何だよ。走って来たのか?」


 裕介が驚いて言った。


 「うん、早い方が良いと思って」


 可愛らしいとこあるじゃん……


 康一はそう思った。遥子もそう思ったのだろう。


 「とりあえず、座って落ち着きなよ」


 遥子は、カウンターテーブルに水を置きながら言った。


 「いや、早く行かねぇと」


 ペンキ屋は焦って言った。とにかく、何かをしないではいられなかったのだろう。


 「大丈夫だよ。それに今行ってもあまり意味がないと思うよ。きっと夢中になってるから」


 康一が笑いながら言った。


 「そうだな。あの親父が初見の客のバイク見てんだもんな。よっぽど気に入ったんじゃねえ?」


 裕介も笑いながら言った。


 「だったら、尚更すぐに行かねぇとさ。俺のバイク見てくれてんだもん」


 ペンキ屋は焦って言った。


 やっぱり、コイツは良い奴だ……ただ、人と付き合うのが不器用なだけかも……


 康一はそう思うと、ペンキ屋に言った。


 「じゃあ、行こうか?せっかく走って買って来てくれたんだしな。早く渡したいよな」


 康一はペンキ屋の不器用な部分を助けてあげたかったのかも知れない。


 「そんなんじゃないけどさ……」


 ペンキ屋は照れながら言うと、裕介がイヤイヤながらも笑顔で言った。


 「しょうがねぇな。じゃ、行こうかね」


 裕介も、嬉しかったのかもしれない。裕介はそう言って席を立つと、また先に店を出て行ってしまった。


 「コウちゃん、またね!」


 遥子が康一に笑顔で言った。


 「うん、また後で来るよ」


 「コウちゃんだけで来てねぇ。あとの二人は邪魔だからいらない」


 康一は苦笑いしながら、店を出た。


 店を出るとペンキ屋が言った。


 「仲良いね。結婚しないの?」


 「結婚?」


 康一は驚いてペンキ屋の顔を見た。


 「うん。仲良さそうだし、お似合いだし」


 ペンキ屋が笑顔で言った。


 「そうだね……結婚は考えてるけど、今はまだかな。裕介と二人でやりたい事もあるしね」


 「やりたい事?」


 「うん、まだ形にもなってないけどね」


 「ふーん」


 こう言う事を聞いてくるって事は、少しは打ち解けたのかな……


 康一はそう思いながら、ペンキ屋を見ていた。


 康二も、あと、3年もしたらこうなるのかな……


 康一にとって歳の離れた弟の康二は、いつまで経っても、自分の後ろを一生懸命くっついて歩いている可愛い弟の印象でしかなかった。康二は反抗期を迎えても兄の言う事だけはよく聞いていた。康一はそれがまた可愛くて仕方がなかった。だから早く康二とバイクで走りたいと心から思っていたのだ。康二とも早く男同士の話をしたいと思っていた。


 「よう、遅かったな」


 裕介が店に入って来た康一達を見て言った。


 「オマエが早いんだよ。一人でとっとと行っちゃってさ」


 康一が裕介に文句を言っていると、康一の後ろにペンキ屋が隠れていた。


 「おい!親父の為に走って買って来たんだろ?早く渡せよ」


 ペンキ屋のRZ-Rを見ていたオヤジさんが手を止めて言った。


 「なんだ?」


 「いや、あのさ……」


 ペンキ屋の事を言おうとした裕介を康一が止めて、ペンキ屋を促して言った。


 「ほら、自分で言わないとさ」


 ペンキ屋は、照れながらオヤジさんに言った。


 「あの……さっき、UCCが無いって落ち込んでたんで……あの……バイクも見てもらってるし、申し訳ないと思って……今、買って来ました」


 そう言いながら、ぶら下げたコンビニ袋をオヤジさんに手渡した。


 「うん?」


 オヤジさんはペンキ屋からコンビニ袋を受け取り、袋の中を覗き込むと、ニヤリと笑って言った。


 「気が利くねぇ。そうだ、オマエに言いたい事があったんだ、ちょっと来い」


 そう言いながら、ペンキ屋を整備していたRZ-Rの前に連れて行った。


 「オマエよ、もうちっとバイクを労わって乗ってやれよ。こんなにぶん回してたら、すぐに焼き付いちまうぞ。それにな、なんだこのセッティング……」


 「あれ?オヤジに気に入られちゃったよ」


 裕介が驚いたように言った。


 「乗り方はどうあれ、綺麗に乗ってるもん。それに、基本、素直そうだし。ただ不器用そうだけどな」


 康一が二人を笑顔で見ながら言った。打ち解けていくペンキ屋を見るのが嬉しかったのだ。


次回の更新は27日となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ