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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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62/69

第三話ーー晴れーー27

 全く、こういう時だけ……


 康一はそう思いながら、半ば呆れた顔で裕介を見た。


 めんどくさい説明は、俺にさせて、自分はさらりと答えを言うなんて、調子良すぎだろ……


 康一はそう思った。

 しかし、そうは言っても、実際この二人のコンビネーションは、良くできた物なのも事実だ。康一がどう思おうが、二人が、自然と自分達の役割を理解している。

 それに、この二人のコンビネーションのおかげで、いろいろな意味で救われた者がいるのも事実だ。

 あのクセの強いオヤジさんに説教をされても、ペンキ屋の他にも心に響かない者も勿論いる。全く聞かずに拒絶する者もいる。そう言った者達に、この二人はフォローを入れているのだ。

 

 少しでも悲しい思いをさせないようにと……


 オヤジさんの真意が伝わる様にと……


 ただし、いくら言ってもダメな者はどこの世界にもいる。そう言った者達には、この二人もフォローなぞ入れずに、丁寧にお引き取り願う。


 ただ、悲しい思いをしないようにと願いを込めて……


 「確かに、サーキットに比べたら危ないのはわかるよ。危険な事をしてるのも承知している。だけど、それがアンタらに何の関係があるんだ?」


 若いねぇ……こりゃ、ダメかもな……


 またヒートアップし始めたペンキ屋を見て裕介はそう思った。その前に遥子がものすごい形相でペンキ屋を睨んでいた。


 「オマエさ……」


 遥子が爆発する前に康一が遥子を止めた。

 遥子も裕介に負けず劣らずキレたらヤバい。何せ灯曰く「伝説の女」なのだ。

 その「伝説の女」もペンキ屋の態度に腹を据えかねていた。


 「まあま、遥子も落ち着いて」


 「そうだぞ、遥子怒らせると怖いぞ、なんせ、ここら界隈の姉御だからな」


 裕介がまた余計な一言を言うと、ペンキ屋に向いていた遥子の怒りが今度は裕介に向かった。


 「オマエ、また余計な事をぐちゃぐちゃと……」


 こう言う時は、裕介の空気を読まない軽さが役に立つ。大事になる前にワンクッション入るからだ。


 康一は、笑いながら二人を止めて言った。


 「この二人は、いつもこうだからさ、気にしないでね。確かにさ、佐野くんの言う通りに、佐野くんと知り合う前だったら、どこで勝手に事故ろうが関係なかったかもな……だけどさ……」


 康一が、少し間を待たせると、裕介がすかさず言った。


 「知り合っちまったんだもん。しょうがねぇじゃん」


 「何だよ、人の話横から持ってくなよ」


 康一は裕介に文句を言った。


 「だけど、お前が言いたい事だろ?」


 裕介はしれっとそう言うと、ニヤリと笑った。


 康一は、諦めた表情で続けた。


 「そう、裕介の言った通りに知り合っちゃったんだよね。知り合っちゃった以上、君が事故ると少なくともここにいる3人、いやオヤジさんも含めて4人か……悲しい思いをする事になるんだ。オマエらの勝手だろって言われちゃったらそれまでだけどさ。だけど、後藤モータースに関わってる人間は、口ではああだこうだ言うけど、みんなお人好しなんだよ。関わった人、みんながハッピーになって貰いたいの。特にバイク絡みでね」


 「私は、別にどうでもいいけど?」


 遥子が拗ねた表情で言った。まだ、ペンキ屋の態度が気に入らないらしい。確かに、まだペンキ屋は太々しい態度を取り続けている。


 話を聞く気はある様だが……


 「まぁ、遥子はああ言ってるけどさ。それは置いといて。けどさ、せっかくバイクで知り合ったんだもん。そうでしょ?命削るような走りをしてる人を見て、俺たちは黙ってらんないんだよね」


 「俺が命を削っていると言うの?」


 ペンキ屋が聞いた。


 「うん」


 康一は、考えるまでもなくあっけなく答えた。


 「なぜ、それがわかる?さっきもそうだ。わかった様な事を言って、偉そうにしてるけどさ」


 ペンキ屋がイラつきながら言った。


 怒鳴らなくなったあたり、さっきよりマシか……遥子の水掛けが効いたかな……


 康一は、そう思いながら遥子を見た。まだペンキ屋を睨んでいる。


 「じゃあ、君のバイクを見た僕なりの君の走り方の考察をしようか?多分、裕介も同じように感じてると思うよ。勿論オヤジさんも」


 「やってみろよ。聞いてやる」


 ペンキ屋が言った。ケンカ腰な物言いなのは変わらないが、遥子の睨みが気になっているようだった。暴力的な感じはもはや無い。


 「まず、君は、コーナーを曲がる時は突っ込み重視でしょ?これは2ストだからね。下のトルクがあまり無いから、コーナーを早く回る為には、どうしても突っ込みで速度を稼がなきゃならない。逆に僕たちは立ち上がり重視で回っていくんだ。4スト大排気量車はトルクが太いから、こっちの方が回りやすいし、結果的に早く回れる。まあ、これは佐野くんもわかってる事だと思うけどさ。ある程度バイクに乗っていたら誰でもわかる話だし」


 康一は一気に話すと一口コーヒーを飲んで続けた。


 「別に突っ込み重視が悪いってわけじゃ無いんだ。だけどね、君のバイクのタイヤを見たら、どうやら、それだけじゃ無いんだよねぇ。相当、ギリギリまでブレーキ我慢してるよね。それで、急激なハードブレーキングしてる」


 「なんでそんな事わかる?」


 「わかるよ、タイヤの減り方を見れば。もっと言おうか?まあ、ハードブレーキングした後は、勿論フロント荷重になるから、フロントに体重を乗せてるよね?フロントのグリップを上げてフロントを暴れさせないために。で、フロントから回っていくんだけど、今度はアクセルを開けるのがが早いから、リヤが滑るわけだ。特にフロントに体重乗せてるしね。そんな状態でアクセルをガバって開けりゃ、そりゃリアは滑るよ。勿論、トラクションもうまくかからない。で、君はスロットワークやリアブレーキでトラクションコントロールして乗り切ろうとしてるんじゃなくて、リヤを滑らせながら無理矢理回ってる。バイクでドリフトみたいなことをしてるんだ。これを意図的にやってるんならまだ良いけどね。スライドはジムカーナのテクニックにもあるしさ。だけど、君は意図的にやってない。まあ、曲芸だね。感心するよ……良く今までコケなかったもんだ……はっきり言ってヘタクソ」


 康一は大きくため息をついた。


次回の更新は17日となります。

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