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雨のち曇りそして晴れ  作者: 冬馬
第三話

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第三話ーー晴れーー17

 裕介はバイクを整備しながら言った。


 「そういや、オヤジ。隣に希ちゃん来てたぞ」


 「何!嬢ちゃん来てんのか!なんで顔出さねぇんだ」


 新聞を読んでいたオヤジさんは、不機嫌そうに言った。


 「なんかよ、女同士の話なんて言ってたからな。遥子に話でもあったんだろ。女同士の話に首突っ込んでも碌な事ないだろ?」


 裕介は笑いながら言った。


 「そりゃそうだ」


 オヤジさんも、妙に納得して新聞を読んでいた。すると、


 「こんにちわ!」


 希が元気良く入って来た。


 「よお!向こうは良いの?」


 「はい、とりあえず、おじさんの顔を見に来ました」


 希がそう言うと、裕介はオヤジさんに声をかけた。


 「オヤジ!!希ちゃんが来たよ!!」


 「お、おう!」


 オヤジさんは新聞を読みながらそっけない素振りで答えた。


 良い歳したオヤジが嬉しそうに照れてやがる。あんなにうるさかったのによ。


 「少し時間あるだろ?オヤジの相手してやってよ」


 裕介はそう言うと、オヤジさんがいる店の奥に通した。


 「適当にそこら辺に座って」


 希に椅子を薦めると、また店に戻ってしまった。


 希は初めて通された事務所を見渡すと、そこも店と同じ様に綺麗に整頓されていて、清潔感があり居心地の良い空間だった。


 これも人柄なんだろうなぁ。


 希がそう思っていると、ぼそりとオヤジさんが口を開いた。


 「バイクの調子はどうだ?」


 「は、はい。すごく調子が良くて元気に走ってくれてます。今日もバイクで来ました」


 希は少し緊張して答えると、オヤジさんは笑顔になって言った。


 「そうか、乗ってやってるのか……」


 オヤジさんにしてみれば自分が手を入れたバイクが元気良く走っているのが何よりも嬉しかった。ましてや、バイクのオーナーが楽しそうに乗っているのが殊更嬉しかった。


 おじさん、本当にバイク好きなんだな……


 希はそう思うと、初めて来た日の事を思い出した。


 そりゃ、大好きなバイクがあんな姿だったら、怒られるのも当たり前だよね……


 希は、過去のバイクとの付き合い方が恥ずかしくなった。


 「来週、康二と行くんだろ?ツーリング」


 オヤジさんが、自分がきっかけなのに白々しく聞いた。オヤジさんとしては、希がどう思っているのかを聞きたかったのだ。


 「はい!江ノ島行くんです!康二さんのバイクも初めて見るし、すごく楽しみなんです」


 希は本当に嬉しそうに答えた。


 「そうか、けど、無茶はするなよ。まあ、雄介と違って康二と一緒だったら安心だけどな」


 「なんだよ。俺と一緒じゃ危ねぇってのかよ」


 裕介が文句を言いながら入って来た。


 「当たり前だろ?オマエ、初心者でも置いて行っちまうじゃねぇか」


 裕介は、事務所の冷蔵庫から缶コーヒーを出しながら言った。


 「そんな事もねぇよ。ちゃんと待ち合わせ場所では待ってるし。はい、向こうで散々コーヒー飲んで来ただろうけど」


 裕介は、希に缶コーヒーを渡すと、オヤジさんの前にもUCCの缶コーヒーを置いた。もちろん、自分はジョージアだ。


 「そもそも、バイクは一人で乗るものなの。だから、一人でもどこにでも行ける様に鍛えてやってるのさ。それに俺、マスツーリング好きじゃねぇもん」


 裕介は、缶コーヒーを開けて言った。


 「マスツーリング?」


 希は裕介に聞いた。裕介は缶コーヒーを一口飲んで答えた。


 「ああ、2台以上で行くツーリングね。所謂集団ツーリング。で、一人で行くのがソロツーリング」


 希は、感心して聞いた。


 「へぇ、じゃあ、遥子さんや康二さんとは行かないんですか?」


 「行く事は行くけど、みんな勝手だから、ソロツーリングになっちゃう。待ち合わせ場所では待ってるけど。俺ら、基本、ソロ派だから」


 裕介が笑って答えると希は少し暗い声になって言った。


 「康二さん、迷惑じゃないかな……」

 

 「うん?」


 オヤジさんは希に聞いた。希は小さな声で答えた。


 「いえ、あの……康二さん、ソロツーリングが好きなら、私なんかみたいな何にも知らないのが一緒だと迷惑じゃないかなって……」


 「そんな事あるか!!」


 オヤジさんは急に大きな声で怒鳴った。


 「オヤジ!」


 裕介はオヤジさんを止めようとしたがオヤジさんは構わず続けた。


 「康二は、そんな奴じゃねぇよ。それとな、嬢ちゃん」


 希は、オヤジさんに怒鳴られて困惑した顔をしていた。


 「は、はい」


 「もうちっと、自分に自信を持てや。康二が一緒に走りたいと思ったから、ツーリングに誘ったんだ。誘ったアイツが迷惑だなんて思うわけないだろ?嬢ちゃんには、アイツにとってそれだけの魅力があるってこった」


 よく言うよ……自分が勝手にLINE送ったくせにな……ま、オヤジのいう事にも一理あるけどな……


 裕介はそう思った。


 確かにいくらオヤジさんが勝手にラインを送ったからと言って、康二自身が嫌だったらいくらでも誤魔化して断る事が出来る。しかし、断るどころか、何処へ行くか本気で悩み、裕介に言われたとは言え、今日は下見まで行っている。迷惑だったら到底そこまで出来はしない。


 この子もちょっと不器用なのかもな……


 裕介はそう思った。


 「謙虚なのは良い。それは生きる上で美徳だ。だけどな、それと自信が無くて引くのとは違う。自分に自信が無くて引いちまうと、時には相手を傷つける事があるって事を知っておいた方が良い。自分を殺すって事は、美徳でもなんでもねぇんだ」


次回の更新は13日となります。

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