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「マック………?」

「男女の二人旅なんて駄目だよ。恋人でもない、知り合ったばかりなのに」


うん、やっぱり声や顔はマックそのもの。

何が違うって、パッと見の外見だ。

この世界で一般的とされる茶髪と茶の目は、私が自身にかけているものと同じ。

一見すれば姉弟のように見えてしまうだろう。

よく見れば顔の作りが全く違うから(当たり前だけど)むしろ怪しまれるんじゃ……?

父親似と母親似って言い切るのにもかなり無理があるけど?


「なんでそこまでしてついてくる?」

「だから、」

「さっきのは建前だろ。本音を言え、本音を」


ズン、と空気が重くなる。

隣にいるタカから殺気を出しているからだ。

それでもわかる、まだ本気ではない殺気だと。

マックも私も、驚きに目を見開く。

私は、見誤っていたかもしれない。

こんなに実力差を突きつけられたのは初めてだ。


「………自分でも自覚しているだろ」

「何をだ」

「その悪名高さを、怨み辛みを背負っていると」

「それがフールだからな」

「普段から刺客に命を狙われているお前の、側にいる人間へ標的が移らないとでも?!」


マックは萎縮しそうになりながらも、頑張って吠えている。

曲がりなきにも王族なんだね。


「………くっ」




あっはっは!!




高笑いじゃない、バカ笑い。

もう本当に可笑しいって感じで。

殺気もなくなって、呆気にとられる。

なんなんだ?


「余計なお世話だっての!つか、そんなもんもコイツはわかってるって」


同意を求める視線を受けて、頷く。

実力を少し見くびっていたけど、刺客に狙われているのは確信していた。

フールがどういう職種なのか聞いて、普通より恨まれる仕事なんだな、と思っている。

だけれど私はそれを承知で契約をした。


「それなりに自分の身は守れるし第一、契約したんだから雇用主を警護するのも仕事の内でしょ。っていうか私事(わたくしごと)持ち込むなっつーハナシ」

「舐めてもらっちゃあ困るんだよ、オウジサマ………?」


ご く あ く

極悪な顔だ。

ドン引きどころじゃない、本当にこっちまで顔が青くなりそうなくらい、わっるい顔。


「――――で?」

「わっ」

「なに怯えてんだよ?」

「怯えてないっ。急にこっちに話振るから驚いただけ」

「ふーん、いいけどよ。んで、どうする?」

「さて………」


タカが言ってるのは、余計なお節介(心配してくれたんだろうけど)をしてここまで来ちゃったマックを、連れていくのか追い返すのか。


どうしたもんかねぇ。


正直に言って、マックが提示した理由の他に何かあるような気がするんだよなぁ。

タカも気づいているようだけど、それも踏まえて聞いてきているんだろう。

あくまでも決定権は雇用主である私に委ねるつもりなんだ。

うぅん………






「――――ついてきて、いいよ」






※※※※※






確かに、男女の二人旅だと(よこしま)な目で見られかねない。

当人達がいくら言おうとも、人間というものは一度持ってしまった邪推を覆すことはあまりない。

特にこと男女の関係は。

余計なことを考えやがって放ってくれないかな、マジで。

私はタカとそんな関係を持つつもりは全くない。

だから、マックの存在はいい緩衝材になるんじゃないかなと。

タカと兄弟、となると私が兄弟にくっついてるとか思われかねない(めんどくさいことに)。

逆に私とマックが姉弟なら、タカがくっついてきてる感じになるだろう。

いっそ3兄弟の方がいいんじゃないかとか思ったりもしたけど、タカは裏では有名人だしね。

いや、いたっておかしくないかも?

父親だけ同じ、とかあり得る訳じゃない。

って、まるで海賊とか海の男みたいだ。

各港に女がいて、時折しか帰ってこない男を待ち続ける………

なんか自分で言ってて本当にありそうで怖い。


「ハヅキ?」

「なっなに?!」


美麗な顔が近くに来て、思わずひきつった声が出てしまった。

私としたことが、なんたること。


「僕も名前が欲しいなぁって」

「名前?」

「そう。マクファーレンとハヅキとじゃ、あまりにも違いすぎるじゃないか」

「………レンでいいんじゃない?」

「えー、せっかくだからちゃんと考えてよ」

「せっかく、たって」


私にネーミングセンスを求めないで欲しい。

タカだって、自由気ままに飛ぶ猛禽類をイメージしてつけたわけであって。

ただ、漢字変換は違う感じにしてるけど、まぁ知ることはないか。


「ねぇ、ねー」

「………ああもうっ、カズオミ!カズオミね!」


ふと頭に浮かんだ名前を言っただけだ。

なのに、なんでそんな嬉しそうな顔をするの。


「よろしくね、姉さん」






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