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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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寿綾乃という女 第3部 84

その後、五井による、FK興産の買収は、世間で、話題になったが、長くは、続かなかった…


 それは、そうだろう…


 FK興産は、授業員千人程度の会社…


 そんな会社の買収を、いつまでも、世間が、話題にするはずがない…


 FK興産の買収が、世間で、話題になった理由は、二つ…


 創業社長の藤原ナオキが、週一で、テレビのキャスターを務めていて、それなりに世間に知られていたこと…


 そして、もう一つは、FK興産を買収したのが、五井だったこと…


 この二点だ…


 これがなければ、世間で、話題になるはずが、なかった…


 が、


 人の噂も七十五日…


 時間が、経てば、経つほど、世間で、話題にならなくなった…


 そして、ここで、私が、世間というのは、ネットのこと…


 スマホでも、パソコンでも、いい…


 ネットで、見れば、週刊誌も、あるいは、一般のひとも、話題にしなくなってきたのが、わかる…


 もちろん、ナオキが、一般人だということも、大きい…


 いかに、ナオキが、長身のイケメンといえども、一般人…


 週一でテレビに出ているが、芸能人でも、なんでも、ないからだ…


 これが、芸能人ならば、もっと、騒動は、続いただろう…


 やはり、有名芸能人となると、知名度が違う…


 藤原ナオキを世間で、知らない者も、多いが、これが、有名芸能人ともなると、真逆に、知らない者が、ほぼいないと、なる…


 だから、当然、話題になる、大きさも違うし、長さも、違う…


 人の噂も七十五日という、世間の常識が当てはまらなくなるからだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 が、


 それでも、まだ、ナオキから、連絡がなかった…


 これは、いくらなんでも、おかしい…


 おかし過ぎる…


 すでに、ナオキが、伸明と共に、記者会見をしてから、一か月は、経っている…


 にもかかわらず、ナオキから、連絡は、一切ない…


 さすがに、私も、この事態になって、ようやく、気付いたというか…


 事態が、おそらく、私が、考えている以上に、深刻な事態になっているのでは?


 と、思った…


 が、


 どうして、いいか、わからなかった…


 どう、動けば、いいのか、わからなかった…


 ナオキから、連絡もない…


 伸明からも、連絡もない…


 そして、マミさんからも、連絡もない…


 一か月近く前に、私に、今回の騒動の内訳を明かして以来、マミさんからも、連絡もなかった…


 私は、歯がゆいというか…


 自分で、自分が、どうして、いいか、わからなかった…


 が、


 望みはあった…


 望み=希望は、あった…


 それは、なにかと、いえば、長谷川センセイ…


 五井記念病院の私の担当医の長谷川センセイだ…


 長谷川センセイは、五井の一族…


 おまけに、長谷川センセイの元にいた、長井さんは、五井長井家の人間…


 あの二人に接触すれば、間違いなく、どういう事態になっているか、わかる…


 が、


 さすがに、それをしていいものか、どうか、悩んだ…


 なぜなら、マミさんの言葉を信じるならば、長井さんと、伸明、和子は、対立している…


 本家と分家の立場で、対立している…


 そして、長谷川センセイと長井さんは、叔父と姪の関係…


 と、なれば、当然、長谷川センセイは、五井長井家側の人間と、思って、間違いはない…


 つまりは、伸明と敵対する側の人間…


 そして、そんな敵側の人間と私が、接触すれば、下手をすれば、取り込まれるというか…


 長谷川センセイと、長井さんの側に引きずり込まれるかも?


 と、思った…


 正直、五井家内の勢力争いだ…


 どっちが、正しいも、なにも、ないだろう…


 昔の戦国大名の争いと、同じ…


 いいも、悪いも、ない…


 強ければ、勝ち、弱ければ、負ける…


 それだけのことに違いない…


 五井家当主の伸明の立場で、言えば、分家の五井長井家が、力をつけては、困る…


 そうなれば、五井の秩序が崩れる…


 そして、そんなことが、続けば、最悪、五井がバラバラになり、五井が、崩壊する…


 そう、マミさんは、私に説明した…


 が、


 それは、マミさんには、すまないが、マミさんの立場での話…


 マミさんの立場=本家の立場での話だ…


 本家と対立する五井長井家は、また別の話をするだろう…


 五井長井家の立場では、の話をするだろう…


 そもそも立場が、異なれば、話が、異なる…


 いい例が、今度のFK興産の買収だ…


 FK興産が、そんなに経営状況が、悪かったのか、どうか、私は、知らない…


 が、


 オーナー社長で、あるナオキの持つFK興産の株を半分、五井に売って、五井と共同経営すると、聞いて、私は、いい気は、しなかった…


 ナオキの持つFK興産の株の半分を買い取ったのは、伸明なのだから、知らない仲ではない…


 しかしながら、ナオキと伸明が仮に対立するとなれば、私は、迷うことなく、ナオキの側につく…


 藤原ナオキの側につく…


 なにしろ、ナオキとは、十五年は、いっしょ…


 いかに大金持ちの御曹司でも、昨日今日知り合った伸明とは、付き合った長さが違う…


 付き合った深さが違う…


 そういうことだ…

 

 ホントか、どうかは、わからないが、マミさんに、言わせれば、今、伸明が、真剣に結婚を考えているのは、私だけと、言っていた…


 私、寿綾乃だけだと、言っていた…


 が、


 正直、それを、聞いて、複雑な気分だった…


 もちろん、伸明は、好き…


 結婚したいと、思う…


 が、


 私風情の女と、ホントに結婚したいのか?


 五井家当主が、ホントに結婚したいのか?


 と、考えれば、複雑…


 実に、複雑な気分だった…


 なにしろ、身分が違いすぎるからだ…


 むしろ、いみじくも、ユリコが言ったように、伸明が、私を好きなフリをして、私とナオキを引き裂き、ナオキを一人にして、ナオキからFK興産の株を買い取ろうとしたと、いう話の方が、信憑性が、高いというか…


 話として、信じられる…


 伸明を疑うわけではないが、ユリコの言った話の方が、信じられるのだ…


 これは、私のひがみ…


 もしかしたら、ひがみかも、しれない…


 大金持ちの伸明と、一般人の自分を比べて、ひがんでいるのかも、しれない…


 が、


 それで、いい…


 むしろ、それが、正常だと、思った…


 なぜなら、自分で、言うのも、なんだが、私は、自分で、自分の立ち位置がわかっていると、思うからだ…


 世の中には、稀に、とんでもなく、自分の立ち位置が、理解できない者がいる…


 まったくの平凡なルックスで、学歴もなにもなく、お金持ちでも、なんでもない…


 そんなまったくの平凡な人物にもかかわらず、男なら、この会社で出世するとか、女なら、年収一千万円を超える年収の男でなければ、結婚しないとか…


 とにかく、絶対不可能なことを、言う…


 いわゆる、大言壮語なのだが、本人は、本気…


 まぎれもなく、本気だ…


 だから、陰で、間違いなく笑われているのだが、本人は、それに、気付かない…


 そして、身近で、そういう人間を見るのも、また辛いものがあるからだ…


 善人を気取るわけでは、ないが、笑うのも、笑われるのも、見ているのも、嫌…


 大半の人間が、そうだろう…


 大半の人間が、同じだろう…


 そして、それを、思えば、私は、まだ正常…


 正常の部類に入っていると思う…


 なぜなら、伸明と私の身分の差がわかっているからだ…


 だから、正常…


 私は、正常と、思う…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 

 そして、結局、五井記念病院に赴き、長谷川センセイに会うことに、なった…


 なぜなら、定期健診の日が、やって来たからだ…


 正直、長谷川センセイに会いに行くのは、不安だった…


 やはり、伸明のことを、思うから、不安だった…


 こんなことを、言うと、おかしいが、長谷川センセイと、伸明のどっちを取るかと、問われれば、間違いなく、伸明を取る…


 本当か、ウソか、わからないが、私を好きだと言う、伸明と、長谷川センセイを同列に扱うのも、どうかと、思うが、それが、正直な気持ちだった…


 つまりは、伸明と長谷川センセイは、敵対している…


 そう、思ったからだ…


 だから、どっちにつくかと、問われれば、伸明…


 間違いなく、伸明だった…


 が、


 ホントのことを、言えば、これも、おかしい…


 伸明とナオキの関係が、わからないからだ…


 伸明とナオキが、敵対している可能性もある…


 もしかしたら、ナオキは、伸明にFK興産の業績の相談をしたところ、伸明に騙され、五井に株を譲って、今頃、後悔している可能性も、否定できないからだ…


 つまりは、伸明も、長谷川センセイも、関係がない…


 私にとって、大事なのは、ナオキ…


 藤原ナオキだった…


 そして、そんなことを、考えながら、私は、自宅から、五井記念病院に向かった…


 正直、気が重かった…


 長谷川センセイに会いたくなかった…


 が、


 真逆に会いたい気持ちもあった…


 長谷川センセイに、聞けば、五井本家と五井長井家の争いの全貌がわかるからだ…


 私が、聞いたのは、あくまで、マミさんから…


 そのマミさんは、本家である、五井家当主、伸明の妹…


 血は繋がってないが、妹だ…


 だから、マミさんは、本家の立場で、今回の騒動を語った…


 が、


 長谷川センセイや長井さんに、聞けば、五井長井家の立場で、話を聞くことができるからだ…


 ケンカではないが、双方から話を聞くことが、大事…


 立場が、違うのだから、余計に、双方から、話を聞くことが、大事だからだ…


 そして、そんなことを、考えながら、


 …これって、一体、どうなんだろ?…


 と、思った…


 これでは、まるで、仲裁役というか…


 なにも力がない、私が、まるで、五井のゴタゴタの仲裁役を買って出たような、物言いだ…


 …一体、どれだけ、アンタ、偉いんだよ!…


 と、思わず、自分自身に、突っ込みたくなった(笑)…


 同時に、気付いた…


 前にも言った、自分をわかっていない、男と女…


 学歴もなにもないのに、この会社で、出世すると、豪語したり、まったくの平凡な女にも、かかわらず、年収一千万円以上の男でないと、結婚しないと、豪語する女…


 そんな男女と私は、なにも、変わらないのでは、ないか?


 ふと、気付いた…


 自分の実力が、わからない…


 自分の実力を、まるで、何十倍、何百倍にも、過大評価する…


 その結果、周囲の人間に陰で笑われている…


 そんな彼ら、彼女らと変わらないのではないか?


 ふと、気付いた…


 そして、それに、気付くと、我ながら、恥ずかしくなった…


 まもなく、33歳にもなる女が、そんなことも、わからないのか?


 と、恥ずかしくなった…


 同時に、気付いた…


 頭のレベルは、変わらない…


 歳を取っても、変わらないという事実に、だ…


 歳を取れば、賢くなると、世間で言われているが、それは、幻想…


 そんなことは、ありえない…


 それが、わかった…


 賢くなったと、思っても、それほどでもない…


 例えれば、それは、要するに、女が化粧するレベル…


 つまり、実物とメイクをした姿が、まったくの別人レベルでは、ないということ…


 つまりは、いくら歳をとっても、その程度の差しか、ないということだ…


 間違っても、偏差値40の人間が、社会に出れば、早稲田並みに頭が良くなるわけでは、ないということだ(爆笑)…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことに、この歳になって、気付くなんて、やっぱり、私は、高卒…


 高卒レベルの女だと、あらためて、自分自身を思った(苦笑)…


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