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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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35/122

寿綾乃という女 第3部 35

スタバに入って、マミさんの姿を探した…


 すると、すぐに、見つかった…


 それは、スタバが、予想外に小さかったからだ…


 さすがに、ショッピングセンターや、ショッピングモールに出店している店と同じ広さでは、なかったからだ…


 その大きさは、半分程度…


 いや、


 半分よりは、大きいかも、しれない…


 が、


 お世辞にも、大きくなかった…


 だから、簡単にマミさんが、見つかった…


 そういうことだ…


 私は、マミさんの姿を見つけると、急いで、マミさんのいる席に駆け寄った…


 いや、


 歩いて行った…


 私の心の中では、駆け寄ったつもりだったが、現実は、違う…


 まさか、スタバの中を駆けるひとは、いないからだ(笑)…


 「…マミさん…お待たせしました…」


 私が、言って、マミさんの前に立つと、マミさんもまた、嬉しそうだった…


 「…やっと、来たわね…」


 マミさんが笑いながら、言う…


 「…やっと…ですか?…」


 「…そうよ…待つのは、案外、つらいものよ…」


 マミさんが、笑う…


 「…ちょうど、恋愛と同じね…好きになった男が、いつ来るか、いつ来るか、と、首を長くして、待っている…それと、同じ…」


 マミさんが言う…


 私はそれを、聞いて、思わず、笑った…


 笑わずには、いられなかった…


 なぜって、私が、ここにやって来るのと、恋愛をいっしょに、するなんて?


 と、思ったからだ…


 すると、すかさず、


 「…なにが、おかしいの? …寿さん?…」


 と、マミさんが、聞いた…


 私は、躊躇うことなく、


 「…それは、おかしいですよ…私と、恋愛をいっしょにするなんて…私は、男のひとじゃ、ありませんよ…」


 と、笑いながら、言った…


 それを、聞いて、マミさんは、驚いた顔をしたが、すぐに、


 「…それは、そうね…」


 と、言って、自分も笑った…


 「…たしかに、変な例えよね…寿さんと、恋愛をいっしょにするなんて…たしかに、寿さんは、男のひとじゃ、ないんだから…」


 「…そうですよ…」


 私は、応じた…


 「…それとも、マミさんが、今、そんなことを言ったのは、好きなひとでも、出来たんですか?…」


 私は、笑いながら、言った…


 もちろん、冗談だ…


 が、


 マミさんは、冗談とは、受け取らなかった…


 「…それは、ない…」


 と、真剣な表情で、言った…


 「…それは、ないわ…寿さん…」


 私は、マミさんが、あまりにも、真剣な表情で、言うから、驚いた…


 こちらが、軽い冗談のつもりで、言ったにも、かかわらず、そう受け取らなかったことに、驚いた…


 だから、私は、慌てて、


 「…冗談ですよ…マミさん…冗談…」


 と、言った…


 言わずには、いられなかった…


 軽い冗談を言ったつもりが、こんなにも、マミさんが、真剣に受け取るとは、思わなかったからだ…


 「…冗談?…」


 「…そうですよ…冗談です…」


 そう言いながら、マミさんの反応を見た…


 同時に、もしかしたら、マミさんの痛いところを突いた?


 とも、気付いた…


 恋愛を持ちだして、相手が、怒った場合は、その理由は、限られる…


 恋愛に縁遠いか、あるいは、その真逆に、現在、恋愛しているかの、二択…


 そして、怒り出したのは、恋愛をしていた場合は、おそらく、その恋愛を、秘密にしたいから…


 あるいは、大っぴらに世間にできないから…


 いわゆる不倫…


 マミさんは、独身だから、相手は、妻子持ちの可能性が高い…


 私は、そう、見た…


 私は、そう、睨んだ…


 そして、それに気づいたときに、もう一つのことに、気付いた…


 このマミさん…


 諏訪野マミさんは、兄の伸明と血が繋がってないことに、気付いたのだ…


 おそらく、このマミさんは、その事実を知らない…


 が、


 それは、事実…


 紛れもない事実だ…


 伸明は、五井家、前当主、建造の子供ではない…


 伸明の母、昭子が、建造と結婚したときに、すでに、昭子の母は、伸明を身籠っていた…


 つまりは、伸明の父親は、別にいるということだ…


 建造は、五井家当主にも、かかわらず、同じ一族のすでに、子供を身籠っている昭子と結婚した…


 いや、


 結婚せざるを得なかった…


 本家の力が、弱かったからだ…


 だから、分家の力に屈した…


 本家に対して、分家が、束になって、かかってきたから、本家が、分家の圧力に屈した…


 それが、後年、建造が、本家の力を増そうとした原点だった…


 本当は、建造には、結婚を考えた女性がいた…


 が、分家の圧力に抗しきれず、昭子と結婚せざるを得なかった…


 そして、建造が結婚したかった女性こそ、本物の寿綾乃の母親だった…


 私の叔母だった…


 いや、建造のみならず、建造の弟の義春もまた、寿綾乃の母親に憧れていた…


 それほどの美人だったのだ…


 私は、それを、思い出した…


 同時に、もしかしたら?


 もしかしたら、建造は、すでに身籠っていた昭子との結婚が、嫌だったのでは?


 と、思った…


 これは、当たり前のことだ…


 同じ一族だから、その方が、丸く収まるから、仕方なく、結婚した…


 それが、とてつもなく、嫌だった可能性がある…


 私が、これまで、それに気づかなかったのは、建造が、伸明を好いていたから…


 自分と血が繋がった息子の秀樹ではなく、伸明を後継者とした…


 それほど、伸明を好いていた…


 だから、その可能性に、気付かなかった…


 そういうことだ…


 だが、普通は、誰が、考えても嫌に決まっている…


 自分の子供でもない男の子供を身籠った女と結婚するのは、嫌に、決まっている…


 が、


 結婚せざるを得なかった…


 だから、それが、原点で、建造が、本家の力を増そうとしたのも、納得できる…


 が、


 おそらくは、他の分家は、昭子が身籠っているのを知らなかったのではないか?


 まさか、他の男の子供を身籠っているのが、わかっていて、結婚を強要するのは、考えづらい…


 だから、もしかしたら、昭子自身、建造と結婚した当初は、自分が、妊娠していたことに、気付かなかった可能性もある…


 そう、気付いた…


 さすがに、自分が、これから、結婚する男とは、違う男の子供を身籠っていて、結婚する女は、いない…


 いや、


 実際には、明らかに、この世の中に、存在するが、そんな女は、ごく稀…


 世の中に、それほど、面の皮が厚い女は、多くはない(笑)…


 だから、普通に、考えて、建造と、結婚したときは、昭子は、伸明を身籠っていることを、知らなかったのでは、ないか?


 そう、思った…


 そして、おそらくは、なんらかのきっかけで、建造は、伸明が、自分の子供ではないと、気付いた…


 そういうことに、違いない…

 

 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…なにを、考えているの? …寿さん?…」


 と、マミが、聞いてきた…


 当たり前のことだ…


 私は、とっさに、


 「…伸明さんのことです…」


 と、即答した…


 ちょうど、伸明のことを、聞く、いい機会だと、思ったのだ…


 案の定、マミさんの顔色が曇った…


 なにしろ、つい、さっき、雲隠れした伸明といっしょに、歩いていたのだ…


 動揺が、顔色に表れても、不思議でも、なんでも、なかった…


 マミは、案の定、


 「…伸明さんのこと…」


 と、トーンを落として、私の言葉を繰り返した…


 それから、


 「…伸明さんのなにを、考えていたの?…」


 と、私を睨むように、聞いた…


 まるで、私に探りを入れるように、聞いた…


 私は、それに、驚いたが、とにかく、口に出した以上、なにか、言おうとしたら、ちょうど、スタバの店員が、やって来て、私たちに、注文を聞いた…


 だから、話が、中断した…


 「…ご注文は?…」


 と、スタバの店員が、聞き、私は、


 「…コーヒー」


 と、頼み、マミさんも、


 「…私も、コーヒーで、いいわ…」


 と、続けた…


 それで、肩の力が抜けたというか…


 マミさんの表情も、穏やかになった…


 うまくタイミングが、外れたからだ…


 肩透かしにあったように、タイミングが外れたからだ…


それまでは、まるで、私を敵のように、見た…


 私を警戒するように、見た…


 が、


 それが、収まり、いつもの表情に、戻った…


 それゆえ、


 「…さっきの話の続きですが…」


 と、私は、口を開いた…


 すると、マミさんも、表情も変えず、


 「…伸明さんのことね…」


 と、応じた…


 「…ハイ…そうです…」


 私は、答えた…


 すると、途端に、


 「…伸明さんは、経営者として、失格ね…」


 と、マミさんが、言った…


 これには、驚いた…


 まさか、マミさんの口から、そんな言葉が出てくるとは、思わなかったからだ…


 だから、驚いた…


 そして、それが、私の表情に出たのだろう…


 「…どうしたの? …寿さん? …そんな顔をして?…」


 と、面白そうに、聞く…


 「…いえ、まさか、マミさんから、そんな言葉を聞くなんて…」


 私は、答えた…


 が、マミは、


 「…だって、そうでしょ?…雲隠れするなんて…」


 と、答えた…


 「…雲隠れ…」


 「…自分にやましいところが、なければ、堂々と、現れれば、いい…記者会見でも、なんでもすればいい…それができないのは、経営者として、失格…なにか、後ろめたいことでも、あるのかと、世間が邪推する…」


 マミさんが、一気に言った…


 そして、それは、いつものマミさんだった…


 いつもの堂々と正論を述べるマミさんだった…


 それを、見て、私は、安心した…


 マミさんは、マミさん…


 なにも、変わってないと、思ったからだ…


 だから、安心した…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…とにかく、経営者として、失格…」


 と、マミさんが、声を上げた…


 それを、聞いて、あらためて、このマミさんも経営者だったと、気付いた…


 五井から、資金を提供されて、自分の会社を興した経営者だと、気付いた…


 このマミさんが、五井の人間にもかかわらず、五井系列の会社に入らなかったのは、彼女が、五井の正当な血筋ではないこと…


 前五井家当主の建造の、外で、愛人との間にできた娘だからだ…


 だから、五井系列の会社に勤め、それが、もしバレると、彼女が、肩身が狭い思いをするに、違いないと考えた建造が、資金を提供して、彼女に会社を興させた…


 また、彼女の性格上、他人の下につくことが、苦手…


 さらに、愛人の子供ということで、反骨精神が、盛んな女でもあった…


 子供の頃に、その事実を知った学校で、苛めを受けた過去があると、以前、私に言っていた…


 だから、弱いものいじめや、他人をバカにすることが嫌い…


 常に正しいことを、言う…


 そうすれば、誰も反論できないからだ…


 だからだろう…


 今、伸明さんを、非難した…


 伸明に非があるからだ…


 だから、非難した…


 私は、そう、思った…


 すると、マミさんが、


 「…いくら、伸明さんが、寿さんを、好きだといっても、やりすぎ…」


 と、言葉を続けた…


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