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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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34/122

寿綾乃という女 第3部 34

「…マミさんは、今日は、これから、どうされるんですか?…」


 「…これからと、言うと?…」


 「…もし、時間があるのでしたら、私の会計が、終わったら、どこかで、お茶でも、飲みませんか?…」


 私は、言った…


 情報が、得たかったからだ…


 マミと話して、情報が、得たかった…


 諏訪野伸明も、そうだが、五井一族の情報が、得たかった…


 マミさんは、五井一族…


 伸明の父、先代、五井家当主、建造の愛人の子供…


 だから、五井家では、陰が薄いが、五井家の人間であることは、間違いない…


 五井家の情報を多少なりとも、掴んでいるのは、間違いない…


 現に、ついさっきも、この五井記念病院に、身を隠しているに、違いない、腹違いの兄の伸明といっしょに、いた…


 だから、多少なりとも、五井家の内情に通じているに、間違いはなかった…


 すると、私の提案に、


 「…どこかと、いうなら、この病院で、どう?…」


 と、マミさんが、提案した…


 「…この病院ですか?…」


 「…ほら、この病院にも、スタバがあるし…」


 マミさんが、言う…


 「…スタバ? …スタバって、スターバックスですか?…」


 驚いた…


 まさか、ここで、スタバの名前が出るとは、思わなかった…


 なにしろ、ここは、病院…


 そこで、スターバックス・コーヒーの名前が出るとは、思わなかった…


 「…その様子では、寿さん、知らなかったようね…」


 「…ハイ…知りませんでした…」


 「…でも、寿さんが、知らなかったのも、無理はないかも…」


 「…どうして、無理は、ないんですか?…」


 「…スタバが出来たのは、最近だから…きっと、寿さんが、ここを退院した後に、出来たんだと、思う…」


 「…そうなんですか?…」


 私は、驚いた…


 「…今、病院も大変なのよ…ほら、この五井記念病院の中にも、コンビニもあるし、100円ショップもある…まるで、ショッピングセンターね…でも、ショッピングセンターと、違うのは、中心が、病院だということ…」


 「…中心が、病院? …ですか?…」


 「…ショッピングセンターや、ショッピングモールならば、中心は、スーパーでしょ? …」


 「…ハイ…」


 「…イオンとか、いい例ね…それが、病院に置き換わるだけ…」


 「…病院に?…」


 「…この病院だって、数は、少ないけれど、宿泊施設もある…遠くから、この病院に見舞いに来た方たちが、宿泊できるように、している…だから、昔の病院しか、知らないひとたちから、見れば、驚きよ…」


 …たしかに…


 マミさんの言うことは、わかる…


 私も以前、この五井記念病院に入院していたときに、ようやく、カラダが、少しでも、動くようになって、リハビリのために、この病院の中を、松葉杖をついて、歩いたときに、普通に、セブンイレブンが、病院の中にあったのを見て、驚いた記憶がある…


 が、


 しかし、半年前は、スタバはなかった…


 さすがに、スタバは、なかった(苦笑)…


 が、


 今は、それも出来たとは?


 正直、驚きだった…


 「…だから、そこで…」


 マミさんが、提案した…


 「…ハイ…わかりました…」


 私は、承諾した…


 「…だったら、私、先に行って、待ってる…」


 マミさんは、言うと、足早に歩き出した…


 私は、そんなマミさんの後ろ姿を見て、なんだか、嬉しくなったというか…


 楽しくなった…


 即断即決というか…


 思い立ったら、すぐに、行動する…


 その姿が、実に、小気味いい…


 実は、私も、即断即決で、あまり悩まないで、物事を決める方だが、マミさんほどでもない…


 だから、すぐに、行動に移すマミさんの姿が、実に羨ましい…


 真逆に、いつまでも、文句ばかり言って、ウジウジと愚痴をこぼして、ちっとも、行動に移さない人間を見ると、頭に来る…


 こっちまで、イライラしてくる(苦笑)…


 そういうことだ…


 だから、マミさんの後ろ姿を見て、つい、頬が、緩んだ…


 

 その後、会計を済ませ、私は、病院内の地図を見て、スタバを探した…


 すると、たしかに、スタバがあった…


 以前は、なかったスタバが、すぐに、見つかった…


 私は、それを見て、


 …病院も、大変だな…


 と、思った…


 客寄せではないが、少しでも、多くの患者さんが、やって来るように、スタバを設置したのだろう…


 たしかに、スタバがあれば、この病院に、見舞いにやって来た、ひとたちが、ここで、コーヒーを飲みながら、雑談して、くつろげる…


 その目的のために、設置したのだろう…


 昭和の末期生まれの私から、すれば、信じられないことだ(笑)…


 病院は、いかに、大きくても、病院に過ぎない…


 だから、病院にお見舞いに来た方たちのために、食堂が、設置されている病院は、知っているが、それは、病院の関連企業が、運営しているとか、その程度の規模のものだった…


 それが、今では、ナショナルブランドというか…


 全国的に知名度のある企業が、堂々と、病院の中に、出店している…


 それを、見ると、つくづく、


 …時代が、変わった…


 と、感銘を受ける…


 と、同時に、自分が、歳をとったのを、実感する…


 嫌でも、実感する(苦笑)…


 なぜなら、今の中学生や高校生では、こんなことは、当たり前に思うからだ…


 だから、自分が年を取ったことを、実感する…


 そして、それを、思えば、さっきの長谷川センセイとのやり取り…


 私と長谷川センセイのやり取りの最中に、センセイの背後に控えた二十代前半の若い女性看護師二人…


 私と長谷川センセイを見て、どう思ったのだろう?


 ふと、気付いた…


 彼女たちから、比べれば、私は、ほぼ十歳年上…


 長谷川センセイは、ほぼ二十歳年上…


 だから、若い彼女たちから見れば、オジサンとオバサンの会話に見えたのだろうか?


 いや、


 問題は、そこではない…


 長谷川センセイだ…


 長谷川センセイは、外科医…


 大勢の女性の裸を見ているだろう…


 私は、たしかに、美人かもしれないが、まもなく33歳になる…


 立派なオバサンだ…


 立派な中年だ…


 そのオバサンの裸を見て、どう思うか、否か?


 長谷川センセイも、オジサン…


 四十代のオジサンだ…


 だったら、私より、やはり、若い女の方が、いいに決まっている…


 三十代の美人より、二十代の可愛い女が、いいに決まっている…


 誰もが、歳を取れば、若いものに憧れる…


 中年男は、若い女に…


 中年女は、若い男に憧れる…


 それは、自分が歳を取ったから…


 歳をとって、自分が若さを失ったから、若さを持った異性に憧れるのだ…


 しかも、長谷川センセイは、外科医…


 女の裸を見慣れている…


 だから、余計に、二十代の女の肌と、三十代の女の肌の違いがわかるだろう…


 だが、だとしたら、やはり、私を美人と言ったのは、長谷川センセイの社交辞令…


 私に対する社交辞令?


 あらためて、思った…


 ホントは、長谷川センセイも、若い女が、好きだが、私が美人だから、それを、口にした…


 そういえば、私も、いい気分になるからだ…


 私は、自分が、美人だとわかっているが、それでも、


 …寿さんは、美人だから…


 と、他人に言われれば、悪い気はしない(笑)…


 美人は、誉め言葉だからだ…


 だから、こう言っては、なんだが、たいして、キレイでない、女に、


 …〇〇さんは、美人だから…


 と、言えば、それは、嫌味…


 嫌味、あるいは、皮肉に他ならない…


 が、


 それを、どう受け取るかは、本人の問題…


 そこそこ美人ならば、


 …こう言われるなんて、やっぱり、私は、キレイなんだ! 美人なんだ!…


 と、思うだろう…


 が、


 そこまで、行かない、平凡な女でも、


 …もしかして、私は、美人?…


 と、思う女もいるし、


 …当たり前じゃない! ようやく、気付いた…


 と、思う、女もいる(笑)…


 要するに、受け取り方だ…


 同じことを、言っても、受け取る側は、人それぞれ…


 …キミは、美人だ…


 と、言われれば、まったくの平凡なルックスの女でも、その気になる女もいる(笑)…


 そういうことだ…


 そして、そういう女に関して言えば、単純に、


 …自分の評価が、異常に高い…


 と、いうことが、わかる…


 これと似た例で、わかりやすい例えで、言えば、大学受験…


 教師や、学校の友人から、


 「…キミの偏差値では、この大学は、無理…」


 と、言っても、自分では、受かると、思っている…


 自分では、受かるという謎の自信がある(笑)…


 が、


 当然、受からない…


 それと、同じだ…


 要するに、自分の評価が異常に、高い…


 周囲の自分に対する評価と、自分の自分自身に対する評価が、著しく差がある…


 差=ギャップがある…


 そういうことだ…


 これは、学校でも、会社でも、どこにでも、あること…


 なぜか、自分の評価は、異常に高い人間が、必ずいる…


 が、


 当然のことながら、誰も、その人間を、当人が、思っているようには、評価しない…


 だから、会社で、いえば、当人が、思っているように、出世はできないし、若い女で、いえば、普段、口にしていた真逆の男と結婚する…


 それまでは、いかに、自分が、優れていると、周囲に吹聴していたにも、関わらず、結婚相手は、全くの平凡な男だからだ…


 だから、偶然、街で、以前、学校や会社で見知った人物と、顔を合わせれば、急いで、下を向いて、顔を隠す…


 それまで、散々、自分が、言ってきたことと、全然、違う男と歩いているからだ…


 傍から見れば、美人でもなんでもない女が、ごく平凡な男と歩いていても、なにも驚かないが、本人にとっては、嫌なのだろう…


 嫌=恥ずかしいのだろう…


 が、


 それが、その当人の評価通り…


 傍から見れば、


 …ああ、やっぱり…


 と、なる…


 当たり前のことだ(笑)…


 もちろん、美人でなくても、いい男と結婚する女は、世の中にごまんといる…


 が、


 その場合は、頭が良かったり、家がお金持ちだったり、性格が、良かったり、要するに、ルックスはイマイチだが、それ以外で、他人が、羨むものを、持っている女が多い…


 あるいは、単純に、周囲に女がいなかった場合…


 会社は、学校ではないのだから、同じ年代の異性が、同じ割合で、いることは、ありえない…


 男に比べて、女が異常に少ない職場も、あれば、その真逆もある…


 そして、結婚したければ、その中から、選ばなければ、ならないから、極端な場合、似合わないカップルが、誕生することもある…


 ルックスが平凡な女と、イケメンな男など、その好例だろう…


 私は、そんなことを、考えた…


 が、


 昨今は、スマホのアプリで、マッチングで、結婚相手を探すケースが、増えたから、今、言ったことは、当てはまらないかも、しれない…


 が、


 私に言わせれば、どうしても、普段から、生身で、見知っていなければ、とても、結婚はできない…


 どうしても、スマホの画面の向こう側で、知り合った人間とは、付き合えない…


 それは、もしかしたら、私が昭和生まれだから?…


 もうすぐ33歳になろうとする中年のオバサンだから…


 オバサンだから、若いときとは、違って、用心深くなる…


 用心深く=慎重になる…


 スマホの画面で知り合って、出会うのではなく、学校や会社で、知り合って、普段の姿を見たくなる…


 そうでなければ、安心できなくなる…


 まあ、それが、歳を取るということだ…


 歳を取る=慎重になると、いうことだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えながら、マミさんの待つ、五井記念病院内のスタバに向かった…


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