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寿綾乃という女 第3部  作者: トモサン


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寿綾乃という女 第3部 3

五井記念病院は、五井系列の病院…


 言わずと知れた五井の系列の病院だ…


 名前を見れば、誰でも、わかる(笑)…


 ジュン君の運転するクルマにはねられた私は、五井記念病院に運ばれた…


 意外というか…


 ジュン君に、ジュン君が、実は、藤原ナオキの実子ではないと、告げた、菊池リンが、すでに、手配していたのだ…


 彼女、菊池リンは、あのとき、FK興産の社長室で、私が、ユリコと言い争いになり、その結果、私が、会社を辞めると、口走ったのを、聞いていた…


 それから、私は、会社を早退して、会社を飛び出した…


 その後を、彼女は、追っていたに違いない…


 そして、ジュン君の運転する、クルマにはねられた、私を見て、急いで、救急車を呼んだ…


 その間に、五井記念病院に連絡して、私を受け入れる手筈を整えた…


 それから、私を運んだ救急隊員に、五井記念病院に、運んでくれ、と、指示したに違いない…


 …なんたる手際の良さ!…


 それまで、見知った菊池リンの姿からは、とても、考えられない、手際の良さだった…


 菊池リンは、大学を出たての23歳…


 舌っ足らずで、子供っぽい…


 年齢よりも、はるかに、幼く見える…


 そして、そんな子供っぽい姿で、


 「…綾乃さん…綾乃さん…」


 と、私に接してきた…


 だから、つい、私も、心を許した…


 誰もが、同じだろう…


 歳が、離れた、人間が、会社でも、学校でも、自分に、親しく接する…


 ハッキリ言えば、自分になつく(笑)…


 言葉は悪いが、犬や猫ではないが、自分になついてくれば、嫌な気はしない…


 そういうことだ…


 私も例外ではない…


 この寿綾乃も、例外ではない…


 だから、私も、気を許した…


 菊池リンに気を許した…


 が、


 それが、最初から、菊池リンの目論見だったのだろう…


 彼女、菊池リンは、外見は、可愛いが、頼りない…


 そんな彼女が、


 「…綾乃さん…綾乃さん…」


 と、慕ってくれば、誰もが、コロッと騙されるだろう…


 そして、その頼りない外見が、演技なのか、どうかは、わからない…


 外見が、頼りなくても、中身は、しっかりしている者は、世の中に、ごまんといる…


 外見=中身が、同じだと、思っているものが、いたら、よほどの世間知らずか、頭が、おかしいかの、どちらかだろう(笑)…


 要するに、彼女、菊池リンは、見かけと中身が、違った…


 彼女は、ジュン君をけしかけ、その結果、ジュン君は、自分の運転するクルマで、私をはねた…


 それは、おそらく、菊池リンも、予想もしていない結果だったに違いない…


 そして、それは、ジュン君にしても、同じ…


 まさか、自分が、クルマを運転している最中に、私を見るとは、夢にも思わなかったに違いない…


 結果、気が動転した、ジュン君は、クルマで、私をはねた…


 私をひき殺そうとした…


 それを、見て、慌てて、菊池リンは、五井記念病院に連絡した…


 なぜなら、彼女、菊池リンは、五井家中枢の人物だったからだ…


 前五井家当主の弟の孫だったからだ…


 だから、慌てて、五井記念病院に、連絡した…


 ハッキリ言えば、五井の人間ゆえに、コネがあるから、自分が、頼めば、優先的に、私を、受け入れてくれることが、わかっているからだ…


 そして、五井記念病院に運ばれた私は、長谷川センセイに、治療してもらった…


 その縁もあり、すでに、五井記念病院を退院している私も、ときどき、検診の名目で、五井記念病院を、訪れている…


 そこで、ユリコと、再会したのだ…


 「…あら、寿さん…お久しぶり…」


 ユリコが、私と会うや否や、屈託なく、私に話しかけてきた…

 

 私は、面食らった…


 まさか、ユリコが、こんなにも、屈託なく、あっけらかんと、私に話しかけてくるとは、思わなかったのだ…


 ジュン君の裁判が、終わったのは、二か月前…


 そのときは、


 「…寿さん…今回は本当にありがとうございました…」


 と、丁寧に腰を九十度に曲げて、私に礼を言った…


 私は、ユリコから、そんなことを、されて、正直、面食らった…


 ユリコが、心の底から、私を憎んでいることを、十分過ぎるほど、わかっていたからだ…


 が、


 同時に、ユリコは、ジュン君の血を分けた母親でも、ある…


 ジュン君の裁判で、私が、ジュン君を許す=宥恕(ゆうじょ)する…


 と、断言したことで、裁判官の心証をよくしたのは、明らかだった…


 そして、なにより、裁判の過程で、私が、長らく、ジュン君の母親代わりの存在だったこと…


 血は、繋がってないと、後に分かったが、事実上の父親である、藤原ナオキの、これまた、事実上の妻として、私が、ジュン君の面倒を見てきたこと…


 ナオキの妻だったユリコが、突然、失踪したこと…


 それゆえ、ナオキと、すでに男女の仲だった当時まだ高校生だった私が、ナオキの家庭に入り、ジュン君の面倒をみたこと…


 それらの過程が、赤裸々に、裁判で、証言された…


 裁判官は、面食らったに違いない…


 そして、それを、裁判所の傍聴席で見る、ユリコもまた、恥じ入る気持ちだったに違いない…


 が、


 すべては、ジュン君の刑が軽くなるため…


 その目的のために、ユリコは、耐えたのだ…


 そして、すべての裁判が、終わり、結審したとき、


 「…寿さん…今回は本当にありがとうございました…」


 と、丁寧に腰を九十度に曲げて、私に礼を言った…


 あのときの光景は、忘れることが、できない…


 ハッキリ言えば、長年の宿敵が、私に頭を下げたのだ…


 だから、溜飲が下がったといいたいところだが、さにあらず…


 ユリコは、そんなたまではない…


 そんな殊勝な人間ではない…


 ユリコが、私に頭を下げたのは、ただ、裁判のため…


 ジュン君の裁判のために、他ならない…


 私には、それが、わかっている…


 ただ、問題は、この後、ユリコが、私に対して、どうでるか?


 今回のことを、恩に思い、これからは、少しでも、私に優しく接するのだろうか?


 おそらく、それは、ないだろう(笑)…


 ユリコにとって、私は、不俱戴天の仇…


 自分の夫と、息子を奪った女だ…


 だから、私を憎む…


 殺しても、殺したりないほど、憎む…


 が、


 その事実を抜きにしても、私を憎んだに違いない…


 なぜなら、平凡なルックスを持つ、ユリコにとって、ルックスの良い私は、目の上のたんこぶというか…


 おおげさにいえば、存在自体が、許せない相手だからだ…


 だから、会社でも、学校でも、私という存在が、目の前にいれば、目の敵にしたに違いない…


 要するに、自分にないものを、持つ、私が、許せないのだ…


 だから、徹底的に、いじめようとする…


 どんなことがあっても、潰そうとする…


 そして、私は、当然のことながら、ユリコに対抗する…


 だから、余計にユリコは、頭にくる…


 いわゆる、負の連鎖だ(爆笑)…


 もしかしたら、私が、素直に、ユリコに詫びれば、ユリコも、溜飲が下がる思いかもしれない…


 が、


 私に言わせれば、そんなことを、しても無駄…


 無駄な行為に過ぎない…


 いかに、頭を下げたとて、ユリコは、私を、徹底的に目の敵にするだろう…


 ユリコとは、そういう女だ…


 一度、自分に牙を剥いた相手を許さない…


 相手を潰すまで、徹底的に叩く…


 そういう女だ…


 そして、そんなことを、考えたとき、ふと、ユリコの過去を考えた…


 ユリコが、それほどまで、私を憎むのは、過去になにか、あったのだろうか?


 それとも、ただ、自分より、美人の私が、憎いだけだろうか?


 ふと、考える…


 要するに、生まれつき、自分より、優れたルックスを持つ、女を許せないと、思うのか?


 それとも、過去になにか、あったのか、考える…


 ユリコは、当たり前だが、中学生でも、なんでもない…


 すでに、四十歳を超えた女だ…


 そんな女が、美人の女を目の敵にする理由と言えば、考えられるのは、ただ一つ…


 美人の女に、自分の男を盗られたと、考えるのが、一番ありがちな理由だ(笑)…


 そして、そんなことを、思ったときに、真っ先に考えたのが、ジュン君の父親…


 ジュン君の父親は、ナオキに似たイケメンだと、聞いた…


 だから、ユリコは、ジュン君を身ごもったとき、ナオキを、ジュン君の父親だと、言い張ることが、できた…


 ルックスが、似ていたからだ…


 だから、本当は、ナオキの子供でも、なんでもないのに、ナオキを含め、周囲の人間を騙せると、考えたのだろう…


 いかにも、ユリコのやりそうなことだ(爆笑)…


 要するに、ユリコは、ジュン君の父親に捨てられた…


 それを、契機に、美人を憎むようになったのだろうか?


 普通に考えれば、ユリコを捨てた男は、ユリコよりも、美人に走ったと、考えられる…


 何度も言うように、ユリコは、平凡なルックスの持ち主だからだ…


 だから、普通に考えれば、当時、付き合っていた男が、美人の女に乗り換えた…


 それを、契機に、美人を憎むようになった…


 そう、考えれば、話の辻褄は合う…


 が、


 それは、そういう可能性が、あると、いうだけだ…


 確証は、ない…


 単純に生まれつき、自分より優れた人間を、許せない人間も、世の中には、多い…


 これは、案外、自分が、優れていない場合が、多い…


 ルックスも、学歴も、なにも、関係がない…


 むしろ、自分が、劣っている場合の方が、嫉妬深いというか…


 とにかく、自分より、優れているのが、許せないのだ…


 単純にコンプレックスだろう…


 自分が、他人様より、劣っている…


 学校でも、会社でも、自分より、優れた人間が、ごまんといる…


 それが、許せない…


 それが、受け入れられない…


 だから、自分より、優れた人間を憎む…


 相手が、なにか、自分に対して、したわけでも、なんでもなく、ただ、憎いのだ…


 要するに、コンプレックスの塊(笑)…


 そういう人間に、目の敵にされるのは、理不尽だが、世の中には、そんな例は、ごまんとあるに違いない…


 かくいう私も、そんな被害に遭ったことは、一度や二度ではない…


 会社に入れば、高卒の人間が、後から入ってきた大卒の人間を目の敵にするのは、その典型だろう…


 後から、入ってきたにも、かかわらず、自分より、偉くなるのが、分かっているからだ…


 だから、許せない…


 それだけのことだ(笑)…


 大卒の人間が、高卒の人間になにかをしたわけでも、なんでもない…


 ただ、自分より、偉くなるのが、許せないのだ…


 そういうものだ…


 この世の中、理屈ではない…


 なにもせず、善人でいても、必ず、なにか、いちゃもんをつけてくる人間がいる…


 そして、そういう人間は、今の例のように、劣っているか?


 あるいは、


 優れているが、性格が、劣悪な場合が、多い(笑)…


 要するに、ヤクザではないが、理不尽な言い分で、相手を威嚇したりする…


 ただ、生まれつき性格が、悪いのだ(爆笑)…


 これは、頭が、いい、悪いは、関係がない…


 が、


 やはりというか、おおむね、頭が悪い人間の方が、性格が悪い人間が、多い…


 いわゆる、底辺高に、その傾向が強い…


 偏差値70の高校でも、性格が悪い人間は、いるに、違いないが、偏差値40の高校の方が、はるかに、性格の悪い人間が、多い…


 ただ、それは、全体の一部…


 例えば、誰がみても、性格が悪い人間が、偏差値40の高校で、十人に一人の割合でいるとしたら、偏差値70ならば、二十人や三十人に一人の割合に過ぎない…


 大抵は、性格が、良くも、悪くも、ない、普通のひとたちだ…


 世の中、大半が、そういうものだ…


 また、会社を例に挙げれば、リストラで、真っ先に、コイツから、切ろうと、誰もが、思い浮かぶ人間は、ごく一部…


 真逆に、コイツは、必ず出世すると、思う人間も、ごく一部…


 大半が、良くも悪くもない…


 ごく普通の人間たちだ…


 話が、長くなったが、いつものことだ(笑

…


 元はと、言えば、ユリコが、なぜ、イケメン好きかということ…


 その考察で、話が、若干長くなった(笑)…


 つまりは、私は、この五井記念病院で、ジュン君の裁判以来、二か月振りに、ユリコに再会した…


 そして、ユリコが、あの長谷川センセイを狙っていることに、あらためて、気付いた…


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