第8話:毛玉VSにゃー!
屋敷の庭に出ると、風に揺れる花の香りがした。
夕食まで、もう少し。
普段なら、この時間は居間で紅茶を飲んでいるところだ。
ところが今日は、私の前を小さな熊が歩き、その後ろを長い牙のある猫がついてきている。
どちらも全長五十センチほど。
遠くから眺めれば、仲のいい動物たちのお散歩に見えるだろう。
実際には、これから一騎打ちをするつもりらしい。
……うん。
とんでもない夕方になったものだ。
「お父さん、本当に大丈夫?」
隣を歩くカトレアが、心配そうに顔を上げた。
「大丈夫だよ。場所はいつもの亜空間にするし、私がきちんと見ているから」
「そっか……。でも、モフ太があんなに怒るなんて思わなかった」
「私もだよ」
普段のモフ太は、とにかく礼儀正しい。
カトレアの護衛にも真面目だし、家族への挨拶も欠かさない。
それが、さっきは「表でろぉぉぉ!」である。
……ものすごい迫力だったなぁ。
あんな口調で怒るモフ太を見られたのは、ある意味貴重かもしれない。
ただし、二度目はできれば遠慮したい。
私は前を歩くモフ太へ声をかけた。
「モフ太、本当に手合わせで済ませるんだよ?」
「もちろんでございます、ご主人様。私は常に冷静でございます」
きっぱりと答える小さな熊。
その背中から、闘志が漂っている気がする。
……冷静、ねぇ。
「毛玉、さっきから張り切ってるにゃー!」
後ろからルナが楽しそうに言った。
ぴくり。
モフ太の耳が動く。
「……ルナ」
「何かにゃー、ご主人?」
「毛玉って呼ぶのは、もうやめようか」
「……わかったにゃー」
しゅんと耳を倒すルナ。
反省してくれた……と思いたい。
モフ太が小さく息を吐いた。
「ご主人様。どうか、ご心配なさらず」
「うん。信じてるからね」
そう答えながら、私は横目で桜花を見た。
桜花は、いつもの穏やかな笑顔だった。
……何だろう。
ちょっと楽しそうじゃない?
「桜花?」
「はい、リアリス様」
「……何でもない」
「ふふっ」
笑ってる。
絶対に笑ってる。
その隣では楓が、無言で二匹の背中を見つめていた。
表情はいつもどおり。
でも、ほんの少しだけ歩くのが速い。
……楓も楽しみにしてるのかな。
私だけが心配しているような気がしてきた。
まあ、見守るしかないか。
◇
花壇から十分に離れた庭の一角で、私は足を止めた。
「さて。ここからは、いつもの場所だね」
晴斗君が首を傾げる。
「いつもの場所、ですか?」
「うん。稽古するときに使ってるんだよ。今日はちょっと広めにしておこう」
私は広大な草原と、その向こうに連なる山々を思い浮かべた。
人も町もない。
どれだけ激しく動いても、外の世界に被害は及ばない。
そして、庭から出入りできる木製の扉。
「《亜空間生成》」
目の前に、見慣れた扉が現れた。
「……えっ」
晴斗君が声を漏らす。
「庭に、扉が……?」
「この先が稽古場なんだ」
「……すごい。何もないところから……」
私は扉を開いた。
向こう側には、青い空が広がっていた。
風の通る草原。
遠くに見える低い山並み。
足元には、柔らかな草が揺れている。
晴斗君が、一歩入ったところで立ち止まった。
「……ええっ!?」
さっきより、ずっと大きな声だった。
「庭の扉ですよね!? なんでこんなに広いんですか!?」
「あはは。亜空間だからね」
「……そういうものなんですか……?」
「少なくとも、うちではそうだねぇ」
晴斗君は、言葉を失ったまま周囲を見渡している。
……うん。
初めて来たら、驚くよね。
私も最初に自分で作ったときは、なかなか面白かったものだ。
桜花とカトレアは慣れた様子で扉を通る。
楓も、すぐに晴斗君の隣へ並んだ。
「……稽古場」
短い一言に、晴斗君が振り向く。
「楓さん、いつもここで……?」
楓はこくりと頷いた。
「……はい」
晴斗君は、もう一度広い草原を見た。
「……僕の知ってる稽古場と、規模が違いすぎます……」
何だか申し訳なさそうに言われてしまった。
……いやぁ。
便利だから、つい広く作っちゃうんだよね。
ただ、今日ばかりは、この広さが必要になりそうだ。
「みんな、まずは安全な場所を確保しようか」
私は、入口から少し離れた場所を観戦席に決めた。
「《結界》」
桜花、楓、カトレア、晴斗君と私。
その周囲を包み込むように、外からの攻撃を完全に遮る結界を張る。
……これで、流れ弾が飛んできても問題なし。
もちろん、私は結界の外へ出ることもできるけど、今日は審判に徹するつもりだ。
モフ太とルナにも、勝手に観戦場所へ近づかないよう伝えた。
「いい? 合図までは始めないこと。それから私が止めたら、その場ですぐに終了だよ」
「承知いたしました」
「わかったにゃー!」
二匹とも、立派なお返事。
その真剣な顔を見ていると、ちょっと安心する。
……このあと、どんな顔になるかは分からないけど。
◇
「それでは、ご主人様。失礼いたします」
モフ太が丁寧に一礼した。
そして草原の中央へ向かって歩き始める。
小さな体が、少しずつ遠ざかっていく。
……うん。
あそこなら、十分に距離があるね。
モフ太は立ち止まり、こちらを振り返った。
「準備をいたします」
「うん、どうぞ」
次の瞬間。
小さな熊の体が、ぐんと大きくなった。
伸び上がる背中。
太くなる前脚。
地面を覆うほどの巨大な影。
あっという間に、全長五メートルのバイオレンスグリズリーが草原に立っていた。
久しぶりに見ると、やっぱり大きいなぁ。
「でっか!!!!」
晴斗君が、思わず叫んだ。
……うん。
いい反応だね。
「えっ、ちょっと待ってください! あれ、モフ太なんですか!?」
「そうだよ。いつもは《縮小》で小さくしてるんだ」
「……あれが!?」
晴斗君の視線が、足元から巨大な熊の頭まで行ったり来たりしている。
……なるほど。
普段は赤いリボンをつけた、可愛い小熊だからねぇ。
本来の姿を初めて見たら、驚くのも無理はない。
カトレアは慣れた様子で手を振った。
「モフ太ー! 頑張ってね!」
「はい、カトレア。お任せください!」
遠くから、よく通る声が返ってきた。
やっぱり、いつもの丁寧なモフ太だ。
なんだか、ほっとするね。
すると、足元から声がした。
「にゃーも準備するにゃー!」
ルナだ。
こちらも、尻尾をぴんと立てている。
「ルナ、向こうへ行ってから大きくなるんだよ」
「了解にゃー!」
ルナは軽やかに走り出した。
小さな猫の姿で草を蹴り、モフ太から十分に離れた位置まで進む。
そこで振り返り、私たちへ前脚を上げた。
……あれ。
今、手を振った?
ちょっと可愛いな。
「戻るにゃー!」
ルナの体が、みるみる大きくなっていった。
細い尻尾が長く伸び、肩の筋肉が盛り上がる。
しなやかな四肢。
鋭く輝く瞳。
そして、太く湾曲した二本の長い牙。
そこに現れたのは、全長五メートルのジャイアントサーベルタイガーだった。
やっぱり迫力があるねぇ。
「でっか!!!!」
晴斗君が、二度目の絶叫を上げた。
私は思わず笑ってしまった。
「晴斗君、さっきと同じこと言ってるよ」
「言いますよ! 普通、言いますって!」
「そうかなぁ?」
「そうです! だって僕の相棒、さっきまで猫だったじゃないですか!」
……うん。
今も猫と言えば猫なんだけどね。
……大きすぎるだけで。
晴斗君は、大きな口を開けたルナを見つめている。
牙がよく見える。
かなり長い。
晴斗君が、ゆっくり私へ顔を向けた。
「……リアリスさん」
「うん?」
「……あの牙、僕より長くないですか……?」
「どうだろう。今度、比べてみようか」
「比べなくていいです!!」
……あはは。
驚きっぱなしだねぇ。
でも、顔には少しだけ楽しそうな色もある。
自分の相棒が、あんな姿になるんだから。
きっと、特別な気持ちなんだろうな。
◇
いよいよ開始、というところで。
私は一つ、大切なことを思い出した。
「……あっ、そうだ」
桜花がこちらを向く。
「いかがなさいましたか?」
「シルベスターさんにも、見てもらおうかな」
「……シルベスター様に、でございますか?」
「うん。モフ太とルナの強さを知ってもらっておけば、いろいろ安心だと思うんだ」
……そう。
ギルドでは、さんざん心配されてしまったからね。
でも、ちゃんと管理できているところを見てもらえば、納得してくれるはず。
たぶん、喜んでもらえるんじゃないかな。
私は迷わず魔法を使った。
「《映像通話》」
目の前に画面が現れる。
呼び出し先は、シルベスターさん。
しばらくすると、画面に見慣れた強面が映った。
『……リアリスか』
「こんにちはー、シルベスターさん!」
『……なんだ。今度は何をやらかした』
挨拶がそれ!?
今日は、まだ何もしてないのに。
……いや。
正確には、これからなんだけど。
「違いますよ! ちょっと面白いものがあるので、一緒に見ませんか?」
『……面白いもの?』
「はい! なかなか見られないと思いますよ!」
シルベスターさんの目が、細くなった。
『……待て。嫌な予感がする』
……おや。
何でだろう。
私は、画面の向きを草原へ変えた。
大きな熊。
大きな虎。
それぞれ距離を取って、こちらの合図を待っている。
「見えますか?」
『…………』
……あれ。
急に黙っちゃった。
「シルベスターさん?」
『……おい』
「はい?」
『……それは、なんだ』
……おっ。ちゃんと見えてるみたいだね。
「モフ太とルナです!」
『……そうか。見りゃ分かる。なんで元の大きさなんだ』
「これから手合わせしてもらうんですよ」
『……手合わせ?』
「はい! Sランクの魔獣同士のガチバトルです!」
画面の向こうで、シルベスターさんがゆっくり額を押さえた。
『……は?』
……おや。
そんなに驚くことかな。
ギルドマスターなら、魔獣同士の力比べも興味があると思うんだけど。
『お前、何を言ってるか分かってんのか!? その二匹が本気でやり合ったら……!』
「大丈夫です。ここ、亜空間ですから!」
『……あくうかん?』
「外の世界には影響しませんし、みんなも結界の中にいます!」
私は周囲の様子を見せた。
晴斗君。
カトレア。
桜花と楓。
みんな、観戦場所で安全に待っている。
……よし。
準備は万全だね。
『……俺は、そういう心配をしてるんじゃ……』
シルベスターさんが、何か呟いている。
……ん?
よく聞こえなかったな。
「それじゃあ、始めますね!」
『おい、リアリス!?』
……あっ、呼ばれた。
でも、もう二匹とも準備できてるからね。
私は草原へ向き直った。
「モフ太、ルナ! 合図で始めていいよ!」
巨大な熊が、ゆっくり首を動かした。
「承知いたしました!」
反対側では、ルナが地面を蹴る。
「いつでもいいにゃー!」
よし。
私は軽く手を上げた。
「それじゃあ……始め!」
◇
次の瞬間、二匹の姿が消えた。
……消えたように見えただけか。
あまりの速さに、晴斗君が目で追えなかったらしい。
「……えっ!?」
草原の中央で、轟音が響いた。
巨大な前脚と、鋭い爪がぶつかり合う。
衝撃が地面を走り、草が一斉になぎ倒された。
さすがSランク同士だ。
ルナは身軽さを生かして、モフ太の側面へ回り込む。
その長い牙が、熊の肩へ向かった。
だが、モフ太の《絶対防御》が攻撃を受け止めた。
傷一つつかない。
モフ太も間髪入れず前脚を振るう。
大きな爪がルナをとらえた。
こちらも《絶対防御》で無傷。
それでも衝撃に押されて、ルナの巨体が草原を滑った。
「……す、すごい!」
晴斗君が、結界の中から身を乗り出した。
その目には、驚きと興奮が浮かんでいる。
……うん。
これが、ルナの実力の一端だ。
ただし、晴斗君が扱うべき力の大きさでもある。
そこは忘れないでほしい。
目の前では、二匹が再びぶつかった。
ルナは攻撃の鋭さで押す。
モフ太は強靱な体と守りで受け止める。
どちらも決定打を与えられない。
互いに引かず、地面に大きな亀裂が走った。
……うん。
戦いとしては、きれいに互角だね。
でも。
このあと私が一番驚くことになったのは、強さではなかった。
「毛玉、遅いにゃー!」
ルナの声が、草原に響いた。
……あっ。
また言った。
しかも、あんなに大きな声で。
「……んだとぉ!?」
モフ太の返事が、轟音に負けない勢いで響いた。
声が変わった!
「このクソ猫がぁぁぁぁ!!」
……えええっ!?
モフ太!?
……あのモフ太が!?
クソ猫って言った!?
私は思わず桜花を見た。
桜花は口元へ手を添えている。
……笑ってる。
いや、笑うよね!
だって、いつもは「承知いたしました」「お任せください」の熊なんだよ!?
晴斗君も、目を丸くしていた。
「……リアリスさん」
「……うん?」
「……モフ太、あんな言葉遣いもするんですね……」
「……私も、今日初めて知ったよ」
……本当にね。
新しい家族が一匹増えただけで、五年間知らなかった一面が出てきた。
……いやぁ。
世の中、分からないものだ。
そのとき、ルナが尻尾を振った。
「けだまぁぁぁぁーーーー!」
……おおおっ!?
大きな声で、毛玉!?
わざとだよね。
絶対に、わざとだよね!?
モフ太の咆哮が返ってきた。
「誰が毛玉だ、このクソ猫ぉぉぉ!!」
巨体が跳ね上がる。
ルナも負けじと飛びかかり、二匹が正面から激突した。
轟音。
土煙。
遠くの山肌が崩れる。
……うわぁ。
結界、張っておいて正解だった。
それにしても。
モフ太、怒り方がすごいなぁ。
あんな姿、見たことがない。
……ちょっと、面白くなってきちゃった。
でも、笑ったら怒られそうだから、我慢しよう。
「お父さん、モフ太、すごく怒ってる……」
カトレアが心配そうに呟く。
「そうだね。でも、ちゃんと手合わせの範囲でやってくれてるよ」
私は二匹の動きを追った。
攻撃は激しいが、どちらも私の合図を意識している。
こちらへ飛び込んでくる様子もない。
それに、お互いに《絶対防御》が効いている。
危険があればすぐ止められる状態だ。
よかった。
……と思った、その直後。
「アレックスーーーー!!」
……えっ?
……は?
……アレックス?
「……アレックス、関係なくない!?」
思わず、声が出てしまった。
……だって!
アレックスはニーナちゃんのおうちにいる、あの小さな魔獣でしょう!?
ここにいないよ!?
しかも、相手はルナなんだけど!
晴斗君が、私を見た。
「……アレックスって、誰ですか?」
「カトレアのお友達のおうちにいる子だよ」
「……えっ?」
「モフ太が、毛並みを勝手にライバル視してるんだ」
……あっ。
説明してる自分でも、何だかおかしくなってきた。
晴斗君の顔が、少しずつ困惑に染まっていく。
「……つまり、今の戦いとは……」
「……関係ないね」
「……関係ないんですね……」
……うん。
私も、そう思う。
横で、桜花が肩を小さく震わせていた。
……笑いをこらえてる?
……まあ。無理もないか。
こんなこと、誰も予想できないでしょう。
「……モフ太、アレックスも気にしてたんだ……」
カトレアまで、少し呆れたように笑った。
そういえば、以前から毛並みにはこだわってたもんね。
それを、ルナに毛玉呼ばわりされた。
……なるほど。
これは、思っていた以上に根が深そうだ。
「けだまぁぁぁぁーーーー!」
ルナの声が、また響いた。
「うるせぇぇぇぇ!!」
モフ太が応える。
……いや。
もう、何の戦いなんだろう。
晴斗君が、ぽつりと呟いた。
「……これ、怪獣大決戦じゃないですか……」
うまいこと言うね。
「確かに、そう見えるねぇ」
全長五メートルの熊と虎。
激しい衝突で巻き上がる土煙。
そして、響き渡る「毛玉」と「クソ猫」。
……うん。
ものすごく変な怪獣大決戦だ。
私は、思わず笑ってしまった。
……ただ。
笑っていられるのも、亜空間の中だからこそ。
外だったら、しゃれにならない。
そのことだけは、忘れないようにしよう。
◇
しばらく、同じような攻防が続いた。
ルナが攻める。
モフ太が受ける。
次の瞬間には立場が逆転する。
どちらも《絶対防御》に守られ、傷一つつかない。
実力も互角。
先に疲れた方が負けるかと思ったが、二匹とも相当な体力があるらしい。
……これ、放っておくと日が暮れるなぁ。
いや、ここでは時間の感覚がちょっと違うんだけど。
とにかく、夕食までには戻りたい。
……それに。
十分、力は見せてもらった。
晴斗君も、すっかりルナの実力を理解した顔をしている。
……うん。
そろそろ終わりにしよう。
私は結界の中から手を上げた。
「はい、そこまでー!」
よく通る声で、二匹へ呼びかける。
「モフ太! ルナ! 手合わせ終了!」
巨大な熊と虎が、ぴたりと動きを止めた。
……おお。
ちゃんと聞いてくれた。
少し距離を取って、互いに顔を見合わせている。
「二匹とも、小さく戻っておいでー!」
「……承知、いたしました……!」
「……わかったにゃー……!」
……おっ。
今度は、返事に元気がないね。
さすがに疲れたかな。
二匹の体が、元の大きさへ縮んでいく。
全長五メートルの巨体が、あっという間に五十センチほどになった。
そして。
てくてく。
小さな熊と猫が、こちらへ歩いてくる。
……おお。
可愛い。
さっきまで山を崩していたとは、到底思えないねぇ。
ただ。
近づくにつれて、二匹の呼吸が荒いことに気づいた。
「……はぁ……はぁ……」
「……ふぅ……にゃー……」
……お疲れさま。
どちらも本気だったんだね。
私は、結界の中から二匹を迎えた。
「お疲れさま! 二匹とも、よく頑張ったね」
モフ太が、深々と頭を下げた。
「……申し訳ございません、ご主人様。決着をつけることができませんでした……」
「ううん。互角だったよ。どちらも、とても強かった」
私は優しく笑った。
……うん。
実際、見事な戦いだった。
それに、あれ以上続けても決着はつかなかったと思う。
ルナも、晴斗君を見上げた。
「次は負けないにゃー……!」
……あっ。
まだやる気だ。
……いやいや。
次は、しばらくいいよ。
晴斗君がしゃがみ込み、ルナを撫でた。
「お疲れさま、ルナ。本当に強かったね」
「……晴斗、見ててくれたかにゃー?」
「うん。びっくりしたよ」
晴斗君は、少し照れたように笑った。
「……僕、あんなに強い子と一緒に冒険するんですね」
「そうだね」
「……ちゃんと頑張らないと、釣り合わないですね」
その言葉、いいね。
ルナの力に頼り切るんじゃなくて、自分も前へ進もうとしている。
……うん。
晴斗君なら、大丈夫。
私は、そっと頷いた。
その横では、カトレアがモフ太を抱き上げていた。
「モフ太、すごかったよ!」
「……ありがとうございます、カトレア」
モフ太の声が、ようやくいつもの調子に戻っている。
カトレアが背中を撫でると、少しだけ誇らしそうに胸を張った。
……よかった。
機嫌も直ってきたみたいだ。
「モフ太、ルナと仲良くできる?」
カトレアが、優しく尋ねた。
モフ太は、一度だけルナを見た。
「……もちろんでございます。私は、家族同士の争いを望んでおりません」
立派!
やっぱり、頼りになるねぇ。
……さっきの罵声を聞かなければ、もっと感動してたと思う。
ルナも、晴斗君の隣で前脚を揃えた。
「にゃーも仲良くするにゃー!」
「うん。よかった!」
カトレアが嬉しそうに笑った。
……ああ。
これで、ひとまず仲直りだ。
……ただ。
二匹が、まだ少し互いを気にしているのは分かる。
まあ、初日だからね。
焦らず、少しずつ仲良くなってくれればいい。
……それに。
どちらも大切な家族になるんだから。
◇
「リアリス様」
桜花が、そっと私の袖を引いた。
「ん? どうしたの?」
「……周囲をご覧くださいませ」
……周囲?
私は、改めて草原を見渡した。
……おお。
何て言えばいいんだろう。
さっきまで、風に草が揺れる綺麗な景色だったんだよね。
それが今は。
地面には、深い亀裂。
あちこちに、巨大な穴。
遠くの山は、半分ほど形を失っている。
草原だった場所には、広い範囲で地面がむき出しになっていた。
……うん。
大変なことになってる。
「……これ、すごいねぇ」
私が呟くと、晴斗君が隣へ立った。
「……すごいっていうか、災害ですよ……」
「確かに、町でやったら大騒ぎだろうね」
「町どころじゃないですよ!」
晴斗君が、珍しく強い声を出した。
……おっ。
そこまで言う?
私は、遠くの山を見た。
……いやぁ。
たしかに、あの壊れ方はすごい。
もし外の世界で同じことをやったら。
……うーん。
「……国が三つくらい、なくなりそうだね!」
「……三つ……」
晴斗君が、小さく呟いた。
……あれ。
顔色が、ちょっと悪い。
「……リアリスさん、今、国が三つって……」
「うん。もちろん、ここは亜空間だから外には影響しないよ」
「……そういう問題じゃないです……」
……あっ。
そうか。
初めて見るには、ちょっと刺激が強すぎたかな。
私は、改めて二匹へ向き直った。
……ここは、きっちり言っておかないとね。
「モフ太、ルナ!」
二匹が顔を上げる。
「これから先、亜空間以外では絶対にこんなふうに暴れないこと! 町も、森も、みんなが暮らしている場所だからね!」
「承知いたしました、ご主人様」
「わかったにゃー!」
……うん。
今度は、二匹とも真剣な顔だ。
その返事を聞いて、少し安心した。
ここは、笑って済ませられないところだからね。
「晴斗君も、ルナが強いからって無理な戦いに出ないようにね。危険なときは、まず逃げることも大切だから」
「はい! 分かりました!」
晴斗君が、しっかり頷いた。
よし。
これなら大丈夫かな。
ルナも、大きな瞳で晴斗君を見上げている。
「晴斗は、にゃーが守るにゃー!」
「……ありがとう、ルナ」
……ああ。
いい光景だねぇ。
ちょっとだけ、さっきの怪獣大決戦を忘れそうになる。
……まあ。
周りが、こんなに荒れていなければね。
◇
「……あっ」
私は、目の前の画面を思い出した。
そうだった。
シルベスターさんと《映像通話》してたんだ。
……危ない。
すっかり忘れるところだった。
「シルベスターさーん!」
画面をこちらへ向ける。
シルベスターさんは、まだ映っていた。
……おお。
ちゃんと見てくれてたんだね。
その表情は。
……うーん。
何とも言えない顔だった。
口が少し開いている。
目は、さっきまで二匹が戦っていた場所を見つめたまま。
……あれ?
「……どうでした? すごかったでしょう!」
『…………』
……返事がない。
「モフ太もルナも、互角だったんですよ!」
『…………』
……おや。
そんなに驚いたのかな。
私は、ちょっと考えた。
……そうだ。
せっかく、こんなに迫力があるんだから。
「シルベスターさん、これ、見世物にしたら面白いかもしれませんね!」
桜花が、わずかに首を傾げた。
「……見世物、でございますか?」
「うん! もちろん、映像だけだよ。実際に戦わせたら大変だからね」
私は、画面の中のシルベスターさんへ笑いかけた。
「どうです? Sランクの魔獣同士の戦いなんて、普通は見られないでしょう?」
『…………』
……おや。
やっぱり、返事がない。
「……シルベスターさん?」
『…………』
「もしもーし?」
画面の前で手を振る。
シルベスターさんは、動かない。
……あれ。
もしかして、通信が止まっちゃった?
……いや。
ちゃんと映像は動いてるな。
さっき、瞬きしたし。
……ということは。
……考えるのをやめちゃったのかな。
獣人国のギルドの受付嬢さんを、ちょっと思い出した。
……うん。
みんな、似たような反応をするねぇ。
「……駄目っぽいかなぁ」
私は、少し残念に思いながら通話を終了した。
……いやぁ。
面白いと思ったんだけど。
……まあ。
シルベスターさんには、ちょっと刺激が強かったのかもしれない。
また今度、普通のお話をしよう。
……普通のお話。
……うん。
何を話せば普通なんだろう。
私には、ちょっと難しいかもしれないなぁ。
◇
亜空間の出口へ向かう途中、晴斗君が何度も後ろを振り返っていた。
……分かるよ。
あの荒れた地面を見たら、気になるよね。
私も、ちょっとびっくりしたもの。
「リアリスさん、あそこは……このままでいいんですか?」
「うん。外の世界とは切り離されてるからね。次に使うときは、また整えておくよ」
「……なるほど」
晴斗君は、ゆっくり頷いた。
……うん。
納得してくれたみたいだ。
……ただ。
まだ少し遠い目をしてるなぁ。
「……本当に、すごかったです」
晴斗君が、ぽつりと呟いた。
「ルナも、モフ太も……。僕、あんな戦いを見たの、初めてです」
「私も、あの二匹が本気で戦うところは初めて見たよ」
……うん。
特に、モフ太のあんな表情はね。
……あれは、なかなか忘れられない。
小さく戻ったルナは、晴斗君の足元を歩いていた。
晴斗君がしゃがみ込む。
「ねえ、ルナ」
「何かにゃー?」
「僕、まだ剣も魔法も上手に使えないんだ」
ルナが、首を傾げた。
「だから、これから冒険者として活動するとき……一緒にいて、守ってもらってもいいかな?」
……おっ。
改めて、お願いしてるんだね。
さっきも相棒になるって話したけど。
あんな戦いを見たあとだと、また少し違って感じるのかもしれない。
ルナは、迷わず晴斗君へ近づいた。
「任せるにゃー! 晴斗のことは、にゃーが守るにゃー!」
頼もしいねぇ。
晴斗君が、ふっと笑った。
「ありがとう。僕も、ルナを守れるくらい強くなるよ」
「楽しみにしてるにゃー!」
いいね。
これから、二人でいろんな経験をしていくんだろうな。
冒険者として、少しずつ強くなって。
困っている人がいたら助けて。
危険なことがあったら、支え合って。
……ああ。
何だか、私まで楽しみになってきた。
その横で、モフ太が小さく咳払いした。
「……ご主人様」
「うん?」
「今後とも、カトレアの護衛は私にお任せください」
「もちろん。いつも頼りにしてるよ」
「ありがとうございます」
モフ太が、満足そうに頭を下げた。
……おお。よかった。
今度こそ、本当にいつものモフ太だ。
カトレアが、その背中を優しく撫でている。
「モフ太、これからもよろしくね」
「はい、カトレア」
……うん。
二匹とも、それぞれ大切な相棒がいる。
……ああ。
いい組み合わせだねぇ。
私は木製の扉へ手をかけた。
「それじゃあ、そろそろ帰ろうか。巴さんの夕食に遅れちゃう」
「はい!」
「かしこまりました」
「……うん」
「にゃーも帰るにゃー!」
みんなの声が重なった。
……おっ。
何だか、賑やかでいいね。
私は扉を開き、家族と一緒に庭へ戻った。
◇
屋敷へ戻ると、ちょうど夕食の支度が整うところだった。
廊下には、おいしそうな香りが漂っている。
……ああ。
いい匂い。
さっきまで地面が割れるほどの戦いを見ていたのに、お腹はちゃんと空くんだねぇ。
食堂へ向かう前に、私たちは巴さんのところへ顔を出した。
「ただいま、巴さん!」
「あら、リアリスちゃん。おかえりなさい」
巴さんが、にっこり笑った。
その目が、足元の二匹に向く。
「……あら?」
……おっ。
気づいたかな。
「そちらが、さっき話していた猫ちゃん?」
「そう! この子がルナだよ!」
ルナが、ぴんと耳を立てた。
「初めましてにゃー!」
巴さんが、少しだけ驚いた顔をした。
それから、ふわりと笑った。
「あらあら。お話もできるのね。よろしくね、ルナちゃん」
「よろしくにゃー!」
……おお。
すごい。
巴さん、あっさり受け入れた。
……いや。
さっき、家族が増えることはちゃんと話したからね。
心の準備をしてくれてたんだろう。
「晴斗さんの相棒になったそうね」
「はい! ルナって名前を付けさせてもらいました」
晴斗君が、嬉しそうに答える。
巴さんは、優しく頷いた。
「素敵なお名前ね。これから二人で頑張ってね」
「ありがとうございます!」
「任せるにゃー!」
……ああ。
いいねぇ。
こんなふうに迎えてもらえると、ルナも安心するだろう。
私は、ほっと息をついた。
……と思った、そのとき。
「ところで、リアリスちゃん」
「……はい?」
巴さんが、にっこり笑った。
……おや。
何だろう。
「皆さん、お外で何をしていたの?」
……あっ。
聞かれた。
どう説明しよう。
Sランクの熊と虎が、亜空間で大決戦してましたって?
……言いにくいなぁ。
私は、少し考えてから答えた。
「……ちょっと、ルナの実力を見てもらおうと思って……」
「そうだったの」
「うん。亜空間でね。安全には、ちゃんと気をつけたよ!」
巴さんは、一度だけ頷いた。
「それならよかったわ。でも、夕食前にあまり無茶をしないでね」
「……はい」
……うん。
何とか、怒られずに済んだ。
いや、少しだけ注意されたけど。
……それはそうだよね。
帰ってきたばかりで、また騒ぎを起こしたんだから。
「さあ、もうすぐご飯よ。手を洗って、食堂へいらっしゃい」
「はーい!」
……おお。
いつもの巴さんだ。
よかったぁ。
私は、晴斗君とカトレアに声をかけ、食堂へ向かった。
桜花も、ルナを優しく抱き上げてついてくる。
モフ太は、カトレアの隣を歩いていた。
……うん。
今日も、無事に夕食を迎えられそうだ。
◇
食卓には、温かい料理が並んでいた。
みんなの楽しそうな話し声。
おいしい匂い。
窓の向こうには、少しずつ暗くなる庭。
……ああ。
やっぱり、こういう時間が一番落ち着くね。
晴斗君は、食事の途中でも時々ルナの方へ目を向けていた。
気になるよねぇ。
新しい相棒ができたんだから。
ルナは食堂の邪魔にならない場所で、巴さんが用意してくれた食事をおとなしく食べている。
……うん。
いい子だ。
さっきまで「けだまぁぁぁ!」って叫んでたとは、思えない。
その横では、モフ太も普段どおり。
……ああ。
やっと平和が戻ってきたね。
「晴斗君、今日は驚いたでしょう?」
私が尋ねると、晴斗君は苦笑した。
「……驚きました。たぶん、今までで一番かもしれません」
「そんなに?」
「はい。猫が突然喋ったと思ったら、僕の相棒になって……そのあと、五メートルに大きくなって……」
晴斗君は、少し遠い目をした。
「……国が三つなくなりそうな戦いまで見ましたし……」
……あっ。そこ、覚えてたんだ。
私も、ちょっと言い方が大げさだったかもしれないねぇ。
「でも、ルナがいれば心強いでしょう?」
「はい。それは、本当にそう思います」
晴斗君が、嬉しそうに笑った。
「僕も、早く一緒に依頼へ行けるようになりたいです」
「うん。楽しみだね!」
こうやって、少しずつ前向きになってくれるのが嬉しい。
日本から突然この世界へ来て、最初は不安ばかりだったはずだ。
それが今は、自分から冒険者になると決めて。
新しい相棒までできた。
大きな一歩だと思う。
食事が終わる頃には、晴斗君もすっかり笑顔になっていた。
……よかった。
私は紅茶をひと口飲み、食卓を囲む家族を見渡した。
今日も賑やかだねぇ。
そして、これからはルナも一緒。
……うん。
ますます賑やかになりそうだ。
◇
夕食のあと。
私たちは、ルナの寝る場所を用意することにした。
場所は、二階。
モフ太が普段使っている寝床の反対側だ。
近くにしておけば、二匹とも安心できると思うんだ。
さっきの様子を見ると、ちょっと心配でもあるけどね。
私は、巴さんと相談して用意した新しい寝床を床に置いた。
柔らかな敷物。
体を丸めても十分な広さ。
小さな枕代わりの布も添えてある。
なかなかいい感じだ。
「ルナ、どうかな?」
「ふかふかにゃー!」
ルナが、さっそく上に乗った。
くるりと一回転。
それから、ちょこんと座る。
気に入ってくれたみたいだ。
晴斗君も、嬉しそうに笑った。
「よかったね、ルナ」
「気に入ったにゃー!」
これなら、今夜から安心して眠れるね。
モフ太は、自分の寝床の方で静かに座っていた。
私は、そちらへ目を向けた。
「モフ太も、よろしくね」
「承知いたしました。新しい家族として、きちんと迎え入れる所存でございます」
……おお。
立派なお返事!
……さっきのあれは、もう忘れていいかな。
……うん。
きっと、大丈夫。
……そのとき。
「毛……」
ルナが、何か言いかけた。
「……ルナ?」
私が名前を呼ぶと、ルナははっとして口を閉じた。
ちゃんと覚えてたね。
「……よろしくにゃー、モフ太!」
……今度は、ちゃんと名前で呼んだ!
モフ太も、一度だけ頷いた。
「……よろしくお願いいたします、ルナ」
よかった。
二匹とも、少しずつ仲良くなれそうだ。
カトレアも、ほっとしたように笑っていた。
これで、寝床も決まった。
今夜は、ゆっくり休めるね。
私は、晴斗君へ向き直った。
「晴斗君、明日からも稽古を頑張ろうね」
「はい! ルナと一緒に、頑張ります!」
「にゃーも頑張るにゃー!」
……いいねぇ。
やる気満々だ。
楓が、静かに頷いた。
……おっ。
先生も、やる気みたいだね。
……晴斗君。
明日も、なかなか大変そうだ。
でも、きっと楽しい一日になるでしょう。
◇
夜。
居間には、私と桜花だけが残っていた。
テーブルには、温かい紅茶。
窓の外には、月の光に照らされた庭が広がっている。
ようやく、静かな時間だね。
私は、椅子に深く腰を下ろした。
「……ふぅ」
思わず、息が漏れる。
今日は、本当にいろんなことがあった。
獣人国へ行って。
Sランクの魔獣を保護して。
王様に通行許可をもらって。
ギルドでシルベスターさんを驚かせて。
巴さんに叱られて。
晴斗君に新しい相棒ができた。
そして最後には、怪獣大決戦。
振り返ると、なかなか濃い一日だったねぇ。
「桜花」
「はい、リアリス様」
「ルナ、晴斗君のいい相棒になってくれそうだね」
「左様でございますね」
桜花が、静かに微笑んだ。
「晴斗様も、とてもお喜びでございました」
「うん。あんな顔を見られて、よかったよ」
私は紅茶をひと口飲んだ。
温かい。
……落ち着くなぁ。
思い返せば、晴斗君が屋敷へ来たときは、何も分からない世界で途方に暮れていた。
それから、少しずつこの世界のことを学んで。
自分の進む道を考えるようになった。
冒険者になりたい。
そう口にしたときの、あの真剣な目。
今でも、よく覚えてる。
「これで、晴斗君が町の外で採取の依頼を受けることになっても、少しは安心できるね」
「はい。ルナが同行すれば、危険な魔獣から晴斗様を守ることができるかと存じます」
……そうだね。
もちろん、晴斗君自身も、もっと強くなってもらわないと。
でも、一人で全部を背負う必要はない。
誰かと一緒に歩くことも、冒険者として大切なことだと思う。
……私にだって、桜花がいるんだから。
「桜花」
「はい」
「いつもありがとうね」
桜花が、少しだけ驚いた顔をした。
それから、優しく微笑む。
「……わたくしこそ。リアリス様とご一緒できて、幸せでございます」
そう言ってもらえると、嬉しいな。
私は窓の外へ目を向けた。
月明かりが、庭の花を照らしている。
どこかで風が吹き、葉が小さく揺れた。
今日は、何だかいい一日だったね。
……まあ。
モフ太の「アレックスーーーー!!」だけは、しばらく忘れられそうにないけど。
私は、思い出して少し笑った。
「リアリス様?」
「……ううん。何でもないよ」
「ふふっ。さようでございますか」
……桜花。
絶対、何を思い出したか分かってるよね。
……まあ、いいか。
私は、もう一度紅茶を飲んだ。
これから晴斗君は、どんな冒険をするんだろう。
ルナと一緒に、どんな景色を見て。
どんな出会いをして。
どんなふうに成長していくんだろうね。
……楽しみだなぁ。
この世界へ、突然一人でやってきた少年。
その隣に、頼れる相棒ができた。
これから、晴斗君の冒険者生活が始まるんだね。
私は、桜花と並んで、静かな夜の庭を眺めた。
明日も、みんなが笑って過ごせますように。
そんなことを思いながら、残りの紅茶をゆっくり味わった。




