第6話:世界の生存者を我が家へ
イオデグランゾーラの胸元から、青白い光があふれた。
私は振り上げた刀を、そのまま振り下ろす。
ギィンッ!
刃が黒い亀裂を捉えた。
邪神の身体が後方へ押され、放たれかけた光が上空へ逸れる。
次の瞬間、雲が一列に吹き飛んだ。
遅れて海面が激しく揺れ、空を裂くような音が響く。
『……貴様』
邪神が顔を上げた。
私は刀を引き、距離を取る。
《全能力強化》を使っているからこそ、今の一撃を合わせられた。
だが、胸の亀裂はすぐに白い光で埋まっていく。
……まだ、倒しきれない。
そのとき、視界の端に新しい着信が浮かんだ。
『《映像通話》着信』
発信者は、各国へ派遣した黒髪のホムンクルスの一人。
さっきとは、別の場所だ。
私は邪神の動きを見ながら通話を開いた。
「どうした?」
『リアリス様。守備区域の一部が突破されました』
画面に、崩れた建物と土煙が映る。
黒髪の子は息を乱していなかった。
しかし、背後にいる住民たちの表情は、明らかに追い詰められている。
『魔獣が急に増えました。周囲の部隊と合流して退路を確保しておりますが、このままでは……』
「分かった。討伐より避難を優先して。怪我人も置いていかないで」
『承知いたしました』
通信が切れた。
その直後、二件。
さらに三件。
着信表示が、視界の端に次々と並んでいく。
私は身体を横へ倒した。
邪神の光が、背後の海へ突き刺さる。
衝撃波を抜け、もう一度画面を開いた。
『リアリス様、こちらも防衛線が――』
『魔獣が城門を突破しました!』
『負傷者の搬送が追いつきません』
どれも、各地で戦っている黒髪の子たちからだった。
画面越しに、見知らぬ町の広場が映る。
崩れた城壁。
横倒しになった馬車。
泣いている子供を抱えて走る人。
そして、道を埋め尽くす魔獣の群れ。
……同時に、ここまで。
私は邪神へ向き直った。
イオデグランゾーラの胸には、まだ淡い光が集まっている。
あの姿になってから、各地の魔獣が強くなった。
私がこの海上で相手をしていても、ほかの場所で被害が広がっていく。
私は左へ回り込み、邪神の肩を斬りつけた。
ガンッ!
身体が傾く。
追撃の腕を避け、そのまま距離を開ける。
……このまま戦い続けたら。
倒すまでに、あと何人が犠牲になる?
私は刀を握り直した。
必要なのは、もっと強い攻撃だけじゃない。
邪神を倒すまで、人々が生きていられる場所だ。
◇
私は邪神から十分に距離を取り、《映像通話》で巴さんを呼び出した。
すぐに、見慣れた姿が映る。
『リアリス様』
巴さんは、メイド長の顔をしていた。
背景はシルク王国邸の居間。
その後ろでは、家族が忙しく動いている。
「巴さん。王国邸の様子は?」
『王国邸、王都学校、リアリス孤児院の三施設とも、防衛態勢を維持しております。家族全員の所在も確認済みです』
「ありがとう。……急だけど、避難者を受け入れたい」
巴さんの表情が引き締まった。
『何名でしょうか』
「まだ正確には分からない。でも、世界中の生き残った人たちを、全員」
ほんの一瞬だけ、巴さんの目が見開かれた。
だが、返事に迷いはなかった。
『承知いたしました。王国邸の既存の《結界》内ですね』
「うん。あの半径一キロの範囲に、できるだけ安全に集めたい」
『施設の外も使用いたしますか』
「もちろん。庭も草原も、使える場所は全部。ただし、通路と怪我人の場所は確保して」
『かしこまりました』
私は邪神の放った閃光を避け、画面へ目を戻した。
「王国邸だけじゃ入りきらない。学校と孤児院も使ってほしい。今いる子供たちと家族の安全を最優先にして、無理に部屋を空けたりしなくていいから」
『心得ております。三施設を一括して受け入れ場所に指定し、空間の確保を始めます』
「……あと、外の防衛も厳しくなると思う」
『既存のフラワーズは全員、配備済みです』
「うん。各国の黒髪の子たちも、避難が終わったらそちらへ帰すつもり」
『承知いたしました。帰還後の指揮はこちらで引き受けます』
言葉が短い。
それなのに、必要なことが次々と決まっていく。
巴さんが王国邸をまとめてくれている。
その事実が、今は何より心強かった。
「頼んだよ、巴さん」
『はい。リアリス様は、どうか邪神への対処に集中なさってください』
私は頷いた。
そのとき、画面の端に銀色の髪が見えた。
桜花ではない。
遠方で待機する桜花は、今も北の海にいる。
居間を横切っていたのは、家族の一人だった。
『巴様、王都学校への連絡がつきました』
『ありがとう。通路の確保を優先してもらってください。負傷者を運ぶ人が行き来できる幅は、必ず残すように』
『はい』
私は画面を閉じた。
王国邸の準備は、巴さんに任せられる。
ならば、次は各国の状況だ。
◇
邪神は、こちらを見ていた。
『……どうした。逃げ回るばかりか』
「……少し、やることが増えまして」
『……下等な者どものことか』
邪神の胸元から、また白い光が広がる。
私は速度を上げ、身体の正面へ踏み込んだ。
黒い亀裂へ、刀を振るう。
ギィンッ!
光が途切れた。
邪神の長い腕が、横から伸びてくる。
私はその下へ潜り、逆側へ抜ける。
すれ違いざまに、もう一撃。
白い破片が、少しだけ散った。
『……邪魔をするな!』
「それは、こっちの台詞です」
私は邪神を北の海へ押し戻すように、位置を変えた。
こちらを狙わせている間だけでも、少しは時間を稼げる。
しかし、時間を稼ぐだけでは足りない。
私は次の着信を開いた。
『リアリス様。報告いたします』
黒髪の子の背後では、何人もの人が傷ついて倒れていた。
今すぐ駆けつけて治療してあげたい。
だが、目の前の邪神を放置するわけにもいかない。
私は状況を尋ねた。
「今、守れている人は何人いる?」
『現地の確認では、負傷者を含めて百人に満たない状況です』
「……分かった。全員、そこで守っていて」
『承知いたしました』
別の子へつなぐ。
さらに、別の子。
シルク王国。
ローズ帝国。
フォーサイド魔法国。
オリミス聖国。
魔族、エルフ、ドワーフ、獣人たちの暮らす地域。
各地の防衛ホムンクルスが、確認できた生存者の情報を次々と伝えてきた。
どの国でも、守れた場所はほんの僅かだった。
大きな町からの連絡が途絶え、小さな集落からも返事が来ない。
私は画面に表示される報告を、順番に確認した。
数字が、少しずつまとまっていく。
……少ない。
初めは、見落としている地域があるのだと思った。
でも、報告が揃っても数字は増えなかった。
各地の子たちが今も保護している人々。
報告が途切れた場所を含め、すべてを確認しようとした結果。
ステラ全域で、今この瞬間に生き残っている住民は、およそ一万人。
私たちの家族を除いて、たったそれだけ。
私は、画面を見つめた。
……一万人。
邪神が復活して、まだ三日目なのに。
世界中で、これだけの人しか残っていない。
拳を握る。
怒りで震えそうになった手を、刀の柄へ戻した。
この数字を嘆くのは、後でいい。
まず、残っている一万人を守る。
それを、今すぐに。
◇
私は、もう一度巴さんへ連絡した。
『リアリス様。受け入れ場所の確保を進めております』
「巴さん。人数が分かった」
『お伺いいたします』
「……約一万人」
画面の向こうで、巴さんが一度だけ息を止めた。
けれど、すぐに頷く。
『承知いたしました』
「無理、かな」
『簡単ではございません』
巴さんは、そこだけははっきりと言った。
『王国邸の本館には、すでに家族がおります。学校と孤児院にも、元から暮らす子供たちがおります。約一万人となれば、建物の中だけで受け入れることは不可能です』
「……うん」
『庭と草原を含めた《結界》内の屋外を使用いたします。ただし、負傷者の搬送路と三施設への出入り口は確保しなければなりません』
「通路を塞いで怪我人を運べなくなったら、本末転倒だもんね」
『おっしゃるとおりです』
巴さんの後ろで、別の家族が駆け寄った。
『巴様。学校側の通路を確保しました。孤児院からも受け入れ準備が整いつつあると連絡が来ております』
『ありがとうございます。庭の中央は負傷者の移動に使います。避難者の待機場所は端から順に確保してください』
『はい』
巴さんは再び私を見た。
『リアリス様。避難の際、人が重ならないようにできますか』
「できる。地面に立てる人は屋外の空き場所へ。自分で動けない人は、寝かせられる場所へ。建物の中にも、使える場所を分けて転移させるよ」
『それなら、受け入れられます』
「……本当に?」
『時間をかけずに整然と暮らしていただくのは難しいでしょう。ですが、ここは長期の生活場所ではなく、命を守るための緊急避難所です』
その言葉に、私は頷いた。
……そうだね。
今は、快適かどうかより、生きていられるかどうかだ。
『ご決断ください。わたくしたちは、いつでも受け入れます』
「……ありがとう。お願い」
『かしこまりました』
私は通話を切った。
続けて、桜花を呼び出す。
『リアリス様』
画面に映った桜花は、北の海の上空で待機していた。
約束どおり、邪神の攻撃が届かない距離を保っている。
「桜花。世界中の生存者を、王国邸へ集めることにした」
『承知いたしました』
「今から少し、避難の魔法に集中する。邪神が動いたら、すぐ教えて」
『かしこまりました。ですが、どうかご無理はなさらず……』
「大丈夫。邪神を見失うつもりはないよ」
『はい。リアリス様』
桜花の画面は、邪神の様子を確認できる位置に残しておいた。
そして、私は世界各地の黒髪の子たちへ《映像通話》をつないだ。
呼びかけると、一人ずつ返事が返ってくる。
数は、決して少なくない。
けれど、その子たちのいる場所は、もう限られていた。
「みんな、聞いてほしい」
画面の向こうで、黒髪の子たちが動きを止めずに耳を傾ける。
「これから、世界中の生存者をシルク王国の私の家へ一斉に《転移》させる」
『……一斉に、でございますか』
「うん。今いる場所から突然いなくなるけど、危険なことじゃない。できる範囲で、周りの人たちに伝えてほしい」
『承知いたしました』
「転移が始まるまでは、守備を続けて。みんなも、近くにいる人を守ることを優先してね」
『はい』
「それと、避難が終わったら黒髪の子たちも全員帰ってきて。もう、各国には残らなくていい」
画面が少しだけ静かになった。
私は、言葉を続けた。
「ここまで守ってくれて、ありがとう。最後はみんなで、家を守ろう」
『……かしこまりました、リアリス様』
複数の声が重なった。
私は一つずつ頷き、通信を切った。
その間にも、邪神は白い光を放ち続けている。
私は《全能力強化》の効いた身体で、一本目をかわした。
二本目は、刀で軌道を逸らす。
背後で海面が弾けた。
邪神が腕を振り下ろす。
私はその外側を抜け、一太刀だけ返した。
……時間がない。
今すぐ、避難させる。
◇
私は、一度だけ目を閉じた。
頭の中に、シルク王国邸の光景を思い浮かべる。
屋敷の本館。
王都学校。
リアリス孤児院。
庭と、その周囲に広がる草原。
すべて、すでにある半径一キロの《結界》の内側だ。
各国にあるほかの屋敷は使わない。
あちらは、もう守備の家族がいない。
全員を集める場所は、一か所にする。
次に、何もない場所へ人が押し寄せたときのことを考えた。
屋敷の廊下まで人で埋まってしまえば、誰も動けなくなる。
怪我をした人を寝かせる場所も必要だ。
子供や高齢の人には、できるだけ負担の少ない場所を使いたい。
だから、転移の結果を細かく決める。
既存の家族と、学校や孤児院の子供たちがいる位置は動かさない。
避難する人たち同士も、絶対に重ねない。
屋外の草原を中心に、歩ける通路を残す。
怪我人と動けない人を安全な場所へ。
それから、各国の王族と宰相、教皇や将軍といった重鎮たちは、巴さんのすぐ近くの空き場所へまとめて送る。話を通すなら、その方が早い。
もちろん、人が重ならないように距離は確保しておく。
さらに、そこへ必要なだけの余白を作る。
……これなら。
私は視線を上げた。
これから実行するのは、ただの移動だ。
《転移》は、ずっと使ってきた魔法。
どんな場所から、どこへ移すか。
それを、想像すればいい。
今この瞬間、ステラのどこかで生きている人々。
人間も、エルフも、獣人も、ドワーフも、魔族も。
どの国の住人かなんて、関係ない。
王国邸にいる家族と、すでに安全な場所にいる人たちはそのまま。
魔獣は、一匹も連れてこない。
ただ、生き残っている人たちを、全員。
私は、広い空へ片手を伸ばした。
「《転移》!」
次の瞬間。
世界中で、光が生まれた。
◇
シルク王国邸。
その既存の《結界》の内側で、無数の人影が現れた。
草原の上に。
庭の端に。
巴さんの近くには、各国の王族や宰相たちが。
学校の前に。
孤児院のそばにも。
魔法が作った光が次々と消え、代わりに人が立っていた。
大人。
子供。
老人。
兵士の鎧を着た者。
旅の途中だったらしい服装の者。
腕に怪我をしている者もいれば、誰かの肩を借りている者もいる。
住む国も、種族も違う。
全員が、さっきまで別々の場所で必死に生きていた人たちだ。
それが今、一つの《結界》の中に集まっている。
転移の瞬間は、安全に成功した。
だが。
「……ここは、どこだ?」
「さっきまで、魔獣が……」
「お母さん! お母さん、どこ!?」
「待ってくれ、どうなったんだ!」
叫び声が、あちこちから上がった。
無理もない。
破壊された町から、何の前触れもなく草原へ移されたのだから。
その上、周りにいるのは見知らぬ人ばかり。
安心するより先に、混乱するのも当然だった。
けれど、誰も、ほかの人と重なっていない。
通路も、確保できている。
建物の入り口を塞ぐような転移もない。
……よかった。
私は、《映像通話》でその様子を確認した。
画面の向こうでは、巴さんがすでに動いていた。
『皆様、落ち着いてください! ここはシルク王国のリアリス邸、その《結界》の内側です!』
よく通る声だった。
『ここへいる間は、魔獣から守られています! 走らず、まず周囲の方と距離を取ってください!』
家族が、避難者の間へ入っていく。
戸惑っている人へ、今いる場所を説明する。
歩けない人へ手を貸し、怪我人を空いている場所へ案内する。
泣いている子供へ、目線を合わせて話しかける。
学校の入り口では、教えることに慣れた家族が子供たちを落ち着かせていた。
孤児院の前でも、互いに手を握った子供たちが並んでいる。
ただ人数が多すぎた。
草原は、あっという間に人で埋まった。
建物の周囲も、次々と新しい避難者の列ができる。
道は残っている。
しかし、一人が座れば、その横を通る人は身体を横にしなければならない。
傷ついた人を寝かせるために場所を空ければ、別の人たちは少しずつ詰めて座るしかなかった。
屋敷の中も、学校も、孤児院も、最初から家族と子供たちがいる。
全員を建物の中へ入れるなんて、とてもできない。
……ギリギリだ。
半径一キロの《結界》。
数字だけ見れば広い。
けれど、使える場所のどこにでも人を置いていいわけじゃない。
移動の道。
怪我人を休ませる場所。
家族が動き回る余地。
そして、何かあったときに避難できる余裕。
それらを残したまま、約一万人を安全に集める。
巴さんが、私に向かって報告した。
『リアリス様。避難者の受け入れを確認いたしました』
「……全員、大丈夫?」
『転移による事故はございません。ただし、重傷者が多数おります。現在、家族で手分けして対応しております』
「……うん。ありがとう」
『ですが、これ以上の人数が増えれば、移動と治療に支障が出ます』
私は画面の中を見つめた。
何人もの人が、身を寄せ合って座っている。
庭の向こうでは、荷物を失ったらしい老人が、手のひらだけを握りしめていた。
その姿を見て、胸の奥が痛んだ。
それでも。
今、生きている。
生きているから、まだできることがある。
「巴さん。怪我人の治療を優先して。食事や水のことは、その次でもいい。まずは一人でも多く助けてほしい」
『かしこまりました』
「……お願い」
『お任せください、リアリス様』
私は通話を切ろうとして、ふと手を止めた。
「巴さん。もう一つ、お願いしてもいい?」
『何でしょうか』
「避難させた王族や宰相たち、巴さんの近くにいるよね?」
『はい。先ほど、皆様がすぐそばへ転移してこられました』
よかった。さっき転移先を決めるとき、そうなるようにしておいたんだ。
国も種族も違う人たちが一万人。家族だけで案内するには人数が多すぎる。
「王族や宰相たちにも協力してもらおう。自分の国の人なら、声をかけやすいと思う」
『承知いたしました』
「避難所の指揮は巴さんにお願い。ここでは国王も皇帝も関係なく、全員に巴さんの指示で動いてもらいたい」
『かしこまりました。皆様へご説明いたします』
画面が少し動く。
巴さんの近くに、見知った顔が集まっていた。
シルク王国のカバディ国王とミキサー宰相。
ローズ帝国のヴァリロッサ皇帝とガラント宰相。
フォーサイド魔法国のキリア法師長とモース宰相。
ドルステン魔王とグリンヒルダ宰相。その後ろには、将軍のゴリアテもいる。
獣人国のライオネス王とラビリンス宰相。
さらに、エルフ国のライノーラ森王、ドワーフの王族たち、オリミス聖国のパーシー教皇もいた。
豪華な服を土で汚した人も、応急手当の跡が残る人もいる。
誰も、普段の謁見で見せるような顔をしていなかった。
……でも、みんな生きている。
それが分かっただけでも、少し安心した。
巴さんが一礼する。
『皆様。お集まりいただきありがとうございます。今は避難者の治療と誘導を最優先にしております。皆様のお力をお貸しください』
カバディ国王が頷いた。
『当然だ。リアリス殿に命を救われたのだ。できることは何でもしよう』
『ありがとうございます。ただ、一つだけお願いがございます』
巴さんは、一同を見回した。
『この場所の全体指揮は、わたくしが執ります。国ごとに別の指示が出れば、通路が塞がれ、怪我人を運ぶこともできなくなります。どうか、わたくしの指示に従ってください』
国王も皇帝も魔王もいる前で、はっきり言い切った。
普通なら、とんでもない光景だ。
けれど、反発する人はいなかった。
『異存はない』
先に答えたのは、ヴァリロッサ皇帝だった。
『ガラント、民の誘導を任せる。巴殿の指示をよく聞いてくれ』
『承知しました、陛下』
ガラント宰相が片眼鏡を直した。
『ミキサー。シルクの者たちへの説明を頼む』
カバディ国王の言葉に、ミキサー宰相が頷く。
『はい。重傷者の通り道も確保いたします』
『グリンヒルダ。魔族の者たちには、そなたから話してほしい』
『御意』
ドルステン魔王の指示を受け、グリンヒルダ宰相も前へ出る。
『ラビリンス、獣人たちを頼む』
ライオネス王が言うと、ラビリンス宰相はすぐに巴さんへ向き直った。
『巴殿、負傷者の搬送先をご教示ください』
『学校側の通路をお使いください。入り口は塞がないようお願いいたします』
『分かりました』
キリア法師長とモース宰相は魔法国の住民へ、ライノーラ森王はエルフたちへ、ドワーフの王族たちは自国の人々へ声をかけることになった。
パーシー教皇は、胸に手を当てて尋ねる。
『我々には回復魔法を使える者がおります。治療の場所をお教えいただけますか』
『ありがとうございます。重傷者が集まっている場所へご案内いたします』
そこへ、シルベスターさんとリリーナさんも駆けつけた。
『巴殿、俺たちも手伝う。避難者の安全確保と医療班の補助なら任せてくれ』
『私もお手伝いします。負傷者の搬送など、できることは何でも!』
『ありがとうございます。では、お二人にも誘導と医療班の支援をお願いいたします』
巴さんは次々と役割を決めていった。
そして、四人を見た。
『ヴァリロッサ陛下、ドルステン陛下、ゴリアテ様、ライオネス陛下。皆様には別のお願いがございます』
ヴァリロッサ皇帝が顔を上げた。
『ほう。何だ?』
『皆様には、《結界》の内側の防衛をお願いいたします。王国邸の庭には、リアリス様の家族であるモフ太がおります。あの赤いリボンをつけた大きな熊です』
……ああ、なるほど。
住民の誘導は、宰相たちに任せる。
こちらの四人は、そもそも前線で戦う方が性に合っている人たちだ。
『外へ出て、魔獣を討てということか?』
ヴァリロッサ皇帝が問う。
『いいえ。外周の迎撃はフラワーズとセバスが担当いたします。皆様には結界の内側を守っていただきます。避難者の間へ魔獣を近づけないための、最後の備えです』
『……なるほど。吾輩たちは、内側を守ればよいのだな』
ドルステン魔王が頷いた。
『はい。わたくしの指示があるまで、結界の外へは出ないでください』
『承知した』
ライオネス王が、力強く胸を叩く。
『民を守る役なら、喜んで引き受けよう』
『俺も戦う方が分かりやすい!』
ゴリアテが大きな声を上げた。
……うん。
確かに、あの四人に書類や誘導経路の整理を任せるより、ずっと頼りになりそうだ。
巴さんは軽く頷いた。
『では、庭のモフ太と合流してください。ただし、通路を塞がず、子供たちや負傷者を驚かせないようにお願いいたします』
四人が返事をし、それぞれ庭へ向かった。
その背中を見送ると、今度は宰相たちが動き始める。
帝国の住民には、ガラント宰相の声が届いた。
『皆さん、こちらです! 歩ける方は通路の端へ。怪我をされた方を先に通してください!』
魔族の人々にはグリンヒルダ宰相が、獣人たちにはラビリンス宰相が説明している。
自国の重鎮を見つけて、泣き崩れる人もいた。
逆に、ようやく安心したように座り込む人もいる。
国を失いかけても、目の前に守るべき人たちは残っている。
あの人たちも、それを分かっているんだろう。
私は画面へ声をかけた。
「巴さん、みんなのこと、お願い」
『はい。ご安心ください、リアリス様』
カバディ国王も、こちらへ顔を向けた。
『リアリス殿。こちらは我々に任せてくれ。まだ生きている民がいるのだからな』
「……お願いします」
私は頭を下げた。
あの人たちが力を貸してくれるなら、心強い。
私は一度、目を閉じた。
……これで。
少なくとも、世界中で生き残っていた人たちを、同じ場所へ集められた。
失われた家や町は、今すぐどうにかできない。
それでも、人まで失わせるわけにはいかない。
まずは、生き残った人たちを守る。
世界を元に戻す方法は、その後で考えればいい。
◇
世界中の黒髪の子たちから、避難完了の報告が届き始めた。
『担当区域内に、生存者はおりません』
『全員の移動を確認いたしました』
『こちらも、残っている住民はございません』
聞こえてくる声は、みんな落ち着いている。
でも、その報告の意味は重かった。
この子たちが守ってきた町には、もう人がいない。
……戻る理由も、ないんだね。
私は邪神が放った光を避けながら、通信を開いた。
「みんな、よく頑張ったね」
画面の向こうで、黒髪の子たちが静かに頭を下げた。
「もう、そこに残らなくていいよ。今から全員、王国邸へ帰す」
『かしこまりました』
「王国邸に着いたら、巴さんの指示に従って。向こうには家族も、避難してきた人たちも大勢いるから」
『承知いたしました、リアリス様』
私は帰還させる子たちの位置を思い描いた。
王国邸の《結界》内。
外周の防衛に使える、避難者のいない場所。
すでに帰ってきているフラワーズ八人とは、別の集団だ。
だが、これからは全員で同じ場所を守る。
「《転移》」
世界各地の黒髪の子たちが、一斉に姿を消した。
画面を切り替える。
王国邸の草原の一角に、見慣れた黒髪の子たちが並んでいた。
顔も背丈も似ている。
総数を確かめるより先に、全員無事に帰ったことを喜びたかった。
生まれたばかりの子もいるし、すでに何度も魔獣と戦った子もいる。
けれど、全員が私の家族だ。
帰ってきてくれて、よかった。
巴さんが、黒髪の子たちの前に立った。
『皆さん。お帰りなさい』
その声は、穏やかだった。
けれど次の瞬間、表情が変わる。
『今から全員、わたくしの指示で動いていただきます。よろしいですね』
『はい!』
揃った返事が、画面の向こうから聞こえてきた。
私は、少しだけ息を吐いた。
これで各国に残っている家族はいない。
前に帰還させたみんなも、すでに王国邸側にいる。
守る場所は、一つになった。
◇
私は、もう一度王国邸の全景を思い浮かべた。
既存の《結界》は、今も半径一キロの範囲を守っている。
そこに、さらに備えを重ねる。
避難者が暮らす屋敷の中だけでは足りない。
学校も、孤児院も。
庭も、屋外の草原も。
今、人がいる場所のすべて。
それらを一つ残らず守るために。
私は、すでに使い慣れた《絶対防御》を、避難区域全体に重ねることを想像した。
新しい《結界》を作るわけではない。
既存の外周《結界》は、そのまま残す。
その内側に、念のための守りを重ねておく。
出入りする家族の動きを邪魔せず、魔獣の攻撃だけを防ぐ。
「《絶対防御》」
一重目。
避難区域を包む守りが、静かに成立した。
「《絶対防御》」
二重目。
さらに、その内側へ。
「《絶対防御》」
三重目。
王国邸、学校、孤児院、庭、草原。
すべての避難区域が、三重の《絶対防御》に包まれた。
既存の外側の《結界》と合わせれば、簡単に破られることはないはずだ。
少なくとも、魔獣から避難者を守るための備えとしては十分だろう。
邪神の攻撃が王都まで届くようなことは、今のところ考えていない。
私は巴さんへ報告した。
「巴さん。避難区域全体に三重の《絶対防御》をつけたよ。元からある《結界》は、そのまま残してある」
『ありがとうございます。こちらでも確認いたしました』
「これで、外から魔獣が来ても――」
その言葉を言い終える前に、画面の向こうで大きな音がした。
ドンッ!
続いて、別の方向からも。
ドンッ! ドドンッ!
私は画面へ目を向けた。
王国邸の《結界》の外側に、大きな影が幾つも現れている。
魔獣だ。
それも、一匹や二匹じゃない。
草原の向こうから、次々と集まってくる。
牙をむき出した四足の魔獣。
大きな翼で空を覆う魔獣。
人間よりずっと大きな身体を引きずる魔獣。
それらが、既存の《結界》へ一斉に突っ込んでいた。
ドンッ!
衝撃が、外周へ広がる。
《結界》に傷はつかない。
それでも、外側で何が起きているかは見えてしまう。
避難者たちが、ざわめき始めた。
「……魔獣だ!」
「追ってきたのか!?」
「こ、ここは安全なんじゃないのか!」
誰かの悲鳴をきっかけに、周囲の人たちまで立ち上がった。
通路へ走り出そうとする者もいる。
立ち上がれない人が、その場で身体を縮めた。
さっきまで必死に逃げてきた魔獣が、今度は目の前にいるのだ。
《結界》が安全だと説明されても、簡単に信じられるはずがない。
私は、画面の向こうで揺れる人の列を見た。
……まずい。
結界が破られる心配より、避難者が怖がって押し合いになる方が危険かもしれない。
だが、次の瞬間。
画面の中で、巴さんが一歩前に出た。
『皆様、落ち着いてください!』
声が、はっきりと響いた。
『外の《結界》は破られておりません。どうか走らないでください! 怪我をしている方と、小さな子供たちを先に守ってください!』
その指示を受けて、各国の宰相や王族たちも動いた。
ガラント宰相とミキサー宰相が通路を守り、グリンヒルダ宰相とラビリンス宰相が住民を落ち着かせる。キリア法師長たちも、自国の住民へ声をかけていた。
悲鳴はすぐには消えない。それでも、見知った人の声に足を止める避難者が増えていった。
その背後で、フラワーズたちが動き始める。
楓。
藤。
杏子。
蘭。
牡丹。
撫子。
菖蒲。
朝顔。
すでに王国邸へ戻っていた八人だ。
そして、今帰ってきた黒髪の子たちが、その後ろに並んだ。
誰も、勝手に結界の外へ出ようとはしない。
全員が、巴さんの次の言葉を待っている。
◇
巴さんは、目の前の魔獣の群れを見た。
『……これ以上、皆様を怯えさせるわけにはまいりませんね』
普段の巴さんなら、屋敷で温かい食事を作り、家族の体調を気遣ってくれる。
でも今は、違う。
王国邸を守る全員の指揮官だ。
その声に、迷いはなかった。
『フラワーズ全員に命じます』
黒髪の子たちまで、一斉に姿勢を正した。
『結界の外周に集まっている魔獣を、殲滅しなさい』
『承知いたしました!』
返事が重なる。
ただし、巴さんはすぐに言葉を続けた。
『最も重要なのは、魔獣を倒すことではありません。家族と、ここへ避難してきた皆様を守ることです』
その一言で、黒髪の子たちの視線が引き締まった。
『結界の外へ出ることを許可します。ただし、必ず、いつでも結界内へ戻れる距離を維持すること』
巴さんは、一人ずつを見回した。
『追撃は禁止。深追いも禁止。魔獣が逃げたとしても、決して遠くまで追いかけてはなりません』
そして、もう一つ。
『三施設の守備を、手薄にしないこと。全員が同時に外へ出るのではなく、配置を分けてください。必ず交代で警戒を続けるように』
『はい!』
楓が短く頷く。
『……承知』
その隣で、ほかのフラワーズも静かに頭を下げた。
私は画面を見つめた。
巴さんの言うとおりだ。
たとえ外の魔獣を全部倒せても、その間に避難者を守れなければ意味がない。
それが、今の最優先事項。
巴さんは、すでに分かっている。
そのとき、画面の端に黒い燕尾服が現れた。
『巴さん』
セバスだった。
いつものように背筋を伸ばし、落ち着いた表情をしている。
『私も、外周の迎撃に加わらせていただきます』
巴さんが、セバスへ向き直った。
『承知しました。セバスも同じ命令に従ってください。結界から離れず、深追いはせず、施設の守りを優先すること』
『心得ております』
セバスは丁寧に一礼した。
……そうか。
各国との連絡調整は、もう必要ない。
生き残った人たちは、今ここに集まっている。
ならば、セバスも守る側に回れる。
私は画面へ向かって声をかけた。
「セバス。無理はしないでね」
『ご心配には及びません、旦那様』
いつもどおりの穏やかな声だった。
『巴さんの指揮に従い、皆様の安全をお守りいたします』
「……うん。お願い」
巴さんが、最後に全員へ告げた。
『それでは、配置についてください。わたくしの指示で、迎撃を開始します』
『はい!』
まず、外周を担当するフラワーズたちが動いた。
そのほかの子たちは、学校と孤児院の周囲、それに屋敷側へ残る。
セバスも、迎撃側に加わった。
全員が一斉に飛び出すのではない。
必要な場所を守る人を残し、結界のすぐ外で戦う。
そのための配置だった。
私は、ようやく息を吐いた。
……ああ。
こういうとき、巴さんに任せられるのは本当にありがたい。
◇
巴さんの命令が届くと、最初に出撃したフラワーズたちが外周へ向かった。
《結界》の向こうでは、魔獣の群れがなおも突進を繰り返している。
大きな角を持った魔獣が、何度も透明な壁へ身体をぶつけた。
その横では、翼を持つ魔獣が上空から降下してくる。
ドンッ!
また、鈍い音が響いた。
しかし、次の瞬間。
外へ出たフラワーズの一人が、飛び込んできた魔獣を横から打ち倒した。
続けて別の黒髪の子が動く。
こちらへ近づいた魔獣だけを迎撃し、倒した後はすぐに《結界》のそばへ戻る。
その動きに合わせて、別の子が前へ出た。
早い。
でも、誰も深追いしていない。
結界から遠ざかろうとする魔獣を、わざわざ追っていく子はいなかった。
戦闘は、必要な場所でだけ行われている。
セバスも、黒い燕尾服のまま外へ出ていた。
背の高い魔獣が迫ると、静かに身体をかわして迎え撃つ。
その後ろには、別のフラワーズが控えている。
互いの位置を確かめ、守るべき場所を空けない。
巴さんの指示どおりだった。
……本当に、すごいな。
さっきまで《結界》に殺到していた魔獣の数が、目に見えて減っていく。
もちろん、外の群れが全部消えたわけじゃない。
草原の向こうからは、まだ次々と近づいている。
けれど、結界へ体当たりする魔獣は少なくなった。
私は《映像通話》の画面を少し広げた。
避難者たちの反応も、変わり始めている。
「……あの子たち、魔獣と戦ってるのか?」
「すごい……」
「助かった、のか……?」
まだ怖がっている人もいる。
でも、今度は逃げようとせず、その場で様子を見守る人が増えていた。
守ってくれる人がいる。
それが、少しずつ伝わっている。
◇
別の画面に切り替えると、王国邸の庭が映った。
人の通る道を避けた庭の端に、大きな熊が座っている。
全長五メートルの、見慣れた巨体。
首には、ひときわ大きな赤いリボン。
……モフ太だ。
そして、その少し後ろには四人の姿があった。
ヴァリロッサ皇帝、ドルステン魔王、ゴリアテ将軍、ライオネス王。
巴さんに結界内の防衛を任された四人だ。
人の通り道を空けて、それぞれ周囲を警戒している。
……うん。あの人たちは、やっぱりこうしている方が頼もしい。
外の魔獣を倒しに出ていくわけじゃない。もしものときに避難者を守る、最後の壁になってくれるんだ。
モフ太も身体を縮めた普段の姿とは、まるで違う。
だけど、赤いリボンをつけた大きな熊なんて、そう何匹もいるわけじゃない。
避難してきた人たちにも、目印にはなっているはずだ。
実際、モフ太の方を指差している子供がいた。
「あ、あの熊も魔獣じゃないの!?」
近くにいた大人が、慌てて子供を抱き寄せる。
……ああ。
うん。初めて見たら怖いよね。
そのとき、モフ太のそばに小さな人影が近づいた。
カトレアだった。
すでに家族が安全な距離を確保している庭で、モフ太の前に立つ。
カトレアは熊の大きな脚に、両手を添えた。
「大丈夫だよ。モフ太は、うちの家族だから」
その声が、近くの人たちにも届いた。
「ほら、赤いリボン。私がつけたんだよ」
カトレアが少し笑うと、モフ太は大きな頭をゆっくり下げた。
「ご安心ください。皆様の安全は、私がお守りいたします」
……うん。
熊がしゃべった。
初めて見た人には、そっちの方が驚きかもしれない。
案の定、子供は口を開けたまま固まっていた。
けれど、少しして。
「……くまさん、しゃべった」
その一言に、そばにいた人たちの表情がほんの少し緩んだ。
カトレアは、もう一度モフ太を撫でた。
「お父さんが帰ってくるまで、よろしくね」
「お任せください、カトレア」
モフ太はゆっくりと身体を起こし、庭の向こうへ顔を向けた。
赤いリボンが揺れる。
どれほど大きな魔獣が外にいても、あの子はここを離れない。
カトレアを守るという約束も、変わらない。
私は、画面を見つめた。
……みんな、本当にありがとう。
だけど。
今、礼を言っている場合じゃない。
私は画面を元に戻した。
◇
邪神イオデグランゾーラは、まだ目の前にいた。
『……随分と、余所見をするではないか』
私は刀を構え直す。
「……そう見えるなら、イオデグランゾーラの攻撃が遅いんじゃないですか」
返事を終えるより先に、白い光が飛んできた。
私は左へ避ける。
続いて、邪神の巨大な腕が伸びてきた。
その下へ潜り、反対側へ抜ける。
腕の付け根を斬りつけると、白い光が散った。
『……貴様!』
邪神が振り返る。
私は距離を広げた。
《全能力強化》は、まだ続いている。
それでも、第二形態になった邪神は簡単には倒せない。
【一閃】も、《流星雨》も効いてはいる。
ただ、一撃で終わるほどではない。
……次の手が必要だ。
私は、遠くの海を見た。
《流星雨》で降らせた岩が沈んだ場所では、まだ大きな波が重なっている。
それを見て、一つだけ確信した。
邪神に直接作用する魔法は駄目でも、魔法で生み出した物がぶつかるなら効く。
だったら、やり方はほかにもあるはずだ。
邪神が、また両腕を広げた。
白い光が、その胸元へ集まっていく。
私は刀を握り直した。
もう、王国邸のことばかり気にしてはいられない。
巴さんたちは、約一万人の避難者を守っている。
フラワーズ全員も、セバスも、持ち場を守ってくれている。
モフ太は、ヴァリロッサ皇帝たち四人と庭を守りながら、カトレアのそばにいる。
桜花も、離れた場所で私を見ている。
――みんなが、自分の役目を果たしている。
ならば、私も。
やることは、一つだけ。
私は邪神の正面に出た。
胸元に集まった光が、一気に膨らむ。
私は横へ動き、次の攻撃の射線を外した。
白い閃光が海を照らす。
遠くで水柱が立ち上がった。
私は、その脇を抜けて邪神へ近づく。
もう一度、刀を構える。
この世界を、終わらせないために。
ここで必ず、イオデグランゾーラを倒す。




