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屋上の「穴」から自分たちの世界へ(後編)

 桐生は刀を回収してズイッと歩み寄る。その迫力で居場所を教える以外の選択肢を許さない。


「ムゥ、制御室にいるはずだが、地下にあるから、どのみち一階の敵を倒してからでないと辿り着けまい」


「なるほど。それじゃついでだから、その地下まで案内してもらおうかな」


「何を言う。我々は我々で帰らせてもらう。これ以上、君たちと関わる必要もないだろう」


「そんな都合は通らないだろう。お宅らだって今回の関係者なんだ。いろいろと調べてからに決まっているだろう。帰すか、帰さないかはその後だ。それに、お宅らだって頼みに行かなくっちゃいけないんだろ? それともほかに出口があるとか? もしくは地下までいかなくても『穴』を作ってもらえるとか?」


「ムゥ、妙に鋭いから嫌な奴だ」


「いまもう連絡がつくなら、ここで下の敵を止めさせるように言ってくれると助かるんだけどな」


 すると何事か良からぬことを閃いたのか、赤髪の顔が一変して明るくなる。


「よし、いいだろう。頼んでみよう」


 と、気味悪いほど易々と了解して、瞳を閉じて何事か念じ始めた。


「よし!」


 次の瞬間には部屋の外側の壁が突然ぶち抜かれ、塔の屋上で見かけたあのワイバーンが顔を出す。部屋の中にいた桐生は壁が破壊されたその衝撃で吹き飛ばされると、脆くなった内側の壁を突き破って部屋の外まで放り出された。


「ちょっと、大丈夫?」と弥生は聞く。


 すぐに跳ね上がる桐生だが、部屋の中を睨んだときには、すでに赤髪たちがワイバーンの背に跨っている。


「さらば!」


 結局空へと逃げられてしまう。どうにか撃ち落としてやろうと一度は刀を投げる構えを取るが、


「誠司、壁の亀裂が増えてる。急がないと!」


 弥生に窘められ、舌打ち一つ。すぐに諦め、滋たちの救出を優先させて、一階へと駆け出した。崩れた階段を飛び下り、一階に踊りでて、結界で敵を壁に押し付けている滋の姿を確認する。押さえつけられる敵は眩しく全身を光らせ、姿形はよく見えない。膨らむエネルギーを滋の結界で押さえつけている為に、敵が力むたびに壁を振動させ、一階が揺れている。


「よし、滋、よく押さえていた」


「あれ! 誠司!? 弥生さんも!」


「おう、やっと合流だ。とりあえず一度結界を解け。こいつのせいで塔が揺れる。解いた瞬間に俺が攻撃するから、タイミングを合わせろ」


 あたふたとするが、言われるままに滋は結界を解いた。それに合わせて桐生が猛然と走り出して刀で突きに掛かる。ところが、解放された敵も腕を大きく横に払って、どういう腕力か、それとも魔法か、ただそれだけで突風が吹いて接近した桐生を吹き飛ばしてしまう。その隙に力を込める敵はさらに太陽の如く輝きだす。一瞬、目も開けられないほど眩しくなったと思えば、次にはその光も萎みだす。目が慣れて敵の姿形がはっきりとしてくると、巨大でマッチョなご老人が出来上がっている。


「誠司… 変身しちゃったじゃない…」


「…だね。ドーピングした悪い魔法使いみたいな顔だな。いかにも魔王。そんでもって、なんでもありの攻撃をしてきそうな気がする…」


 魔王が薄気味悪く笑ったと思うと、


「我ヲ倒サズシテ、コノ世界カラハ逃ゲラレン…」なんてことを言う。


 戦ったほうが易いか、地下にいるという管理者を押さえてプログラミングで消去してもらうのが易いか、桐生はさてどうしたものかと悩んだ。


「誠司、深沢君がいない」


 部屋を見回す弥生がようやくそれに気付く。


「そうだ、深沢君、そこの穴に落ちたんだ」


 滋が指差す先は魔王の足元である。見れば確かに床下貯蔵庫のような口が開いている。


「どっちにしても、あいつと戦わないといけないわけね…」



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