表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
66/74

屋上の「穴」から自分たちの世界へ(前編)

 意識が戻ったと思えば痛みに悶え、再び気を失って静かになったと思えばまた悶えと、気絶していても落ち着かない羽田を抱えて、桐生は最上階まで上る。屋上中央に大きな「穴」が見え、その隣にはワイバーンが座している。また敵かと舌打ちをし、抜刀の構えを取ると、ところが拍子抜けにも途端に竜は奇声を上げて翼を広げ、争うことなく飛び去っていった。ただの見張りのようである。桐生も追うことはせずに「穴」へと急ぐ。中を覗きこんでみると、昼の日差しが眩しく差し込んで、眼前に見晴らしよく自分たちの住む町並みが広がる。どうやら屋根の上である。さらに一歩踏み込んで「穴」を抜けてみると、先刻ヴァイスと送電線云々で登った、羽田たちの学校の屋根の上である。校舎もすでに「こちら側」に戻っている。すぐに屋根から飛び降り、田中たち一般隊員と合流する。


「おお、隊長! 脱出できたんですね!」


「なんとか。でも話は後。この子を急いで病院に連れて行ってください。残りの生徒たちもいまから続々と脱出してきます。出口はあの屋根の上にあるから、フォローをお願いします。俺はもう一度戻ります」


 羽田を田中たちに託して桐生はすぐまた壁を蹴って屋根へと上って「穴」を抜ける。丁度先頭を走っていた男子生徒がこの屋上に辿り着いたところで、そこがゴールと「穴」へと誘導してやる。彼らは、赤い髪をした男と白い髪をした男を追っていたつもりであったが、途中で見失ったと言う。桐生も、そう言えば見かけなかったと思い出す。どこに逃げたか、何を企んでいるのか薄気味悪い。しかし、人命優先、脱出優先。ひとまずその話は置いておいて、続々と上がってくる生徒たちを順に「穴」へと逃がしていく。そのうち先生方の姿も見えると、後は任せて桐生はまた塔の内部へ引き返すことにする。その際、深沢が残っているはずと教えられ、何とか助け出すよう頼まれた。


「了解です。彼は俺たちと脱出させますから、彼のことは数えずに、それ以外の生徒たちが全員出たら、先生方もこの世界から逃げてください。お願いします」


 桐生は階下へと下りる途中、すれ違う生徒たちに声をかけ、最上階まで上がれば脱出できると励ました。励ましながら何人すれ違ったか数える。計算上、深沢を抜いてあと二人となったところで、島田先生と安川と対面する。屋上にて脱出可能を説明して、やはり深沢を助けてくれと頼まれる。深く了解して駆ける速度はさらに上る。二階へと下る階段の途中で、等しく階下へ下る弥生を見つけた。声を掛けると敵と勘違いされ、火球を投げられた。二人は口喧嘩をしながら下り、二階の「あちら側」へと繋がる「穴」のあった部屋の前に辿り着くと、そこで赤い髪、白い髪の二人組の姿を見つける。


「ああ! あんたたち!」


 振り返る赤髪、白髪は桐生たちとわかると血相を変えて「穴」のある部屋へと逃げた。


「こうなった以上は君たちとも関わってはいられない。さらば!」


 「穴」へ飛び込もうとするその手前で、しかし桐生が得物をぶん投げて、「穴」の真下のノートパソコンに命中させた。「穴」も瞬時に消滅してしまう。


「ああ! なんてことをする!」


 叫んだところでどうにもならない。相手が桐生なら腕力でも勝てないので、歯痒く睨み上げるのが精一杯である。


「お宅ら、どこかに隠れていたな? 隙を見て逃げ出そうとして、ズルイったらない。こうなった以上はお宅らも脱出するにはここの首謀者に頼むしかなくなったわけだが、それじゃ、その首謀者がいまどこにいるのか教えてもらおうか」



続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ