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トロッコで一気に塔へ(前編)

 十両編成のトロッコに生徒たちは前から順に乗り込んでいく。先頭車両の最前に陣取ると思われた羽田は、七両目にいる。そこで黙って前方を睨み付けている。騒がしくすることがないと、それはそれで島田には歯応えがなく、振り返って寂しく見つめてしまう。


 トロッコはそのうちに先頭の滋の手によって発車される。スイッチ一つで、電車のように動き出す。次第速度を増して髪も靡く。屋根もなければシートベルトもない、イスすらない箱の中の生徒たちは身を屈めて互いにしがみ付き合う。叫ぶ女子もいる。乗り心地の悪さは誰も同じである。余裕でいられるのは最後尾の桐生のみ。ブスッとしていた羽田もどこかに掴まっていなければ立ってもいられない。桐生が手放しで腕組などをしているのを目にすると、ここでようやく彼らしく対抗意識を燃やしてそれを真似しようとするが、残念なことに上手くできない。自分に歯痒くなると、また黙って隠れるように座りだす。


 滋は先頭車両で結界を張ってトロッコの上部を覆うように後方に伸ばしていく。四両目上部にまで伸び、丁度その車両に乗っていた深沢と生徒会の安川の頭の上で切れる。その切り目を見上げて安川は、興味本位で結界に指先を触れようとする。それを見ていた深沢はスッと腕を伸ばして、彼女の手を握ってやめさせる。代わって彼が指を立てて結界に触れてみる。人差し指の先端の薄皮に触れたところで電気が肘を伝って肩まで走る。すぐに指を引っ込め、手扇を煽いで、やめたほうがいいと教えてやると、安川は「うん」と頷きながらも好奇心が勝って深沢と同じく指先で優しく結界に触れている。もちろん等しく痺れて驚いて、にもかかわらずニヤニヤとする。同じ体験をした者同士、深沢もまたニンマリとする。


「あの人たち、やっぱり凄いね」と安川は唐突に言う。


「うん。俺たちとは根本的に何かが違うね。本人たちは一緒だって言っているけど、やっぱり違うと思う」


「深沢君はああいう才能、羨ましいって思う?」


「どうかなぁ。ああいう超能力みたいなことができると、それはそれで色々と苦労も多そうだからね。その力そのものを羨ましいとはなかなか… ただ、自分の才能を知っていて、それを開花させて仕事で使っているっていう点では本当に羨ましいなって思うかな。努力もしているみたいだし。努力ができるっていうのは羨ましいよ」


「私、あの滋さんって人、どう見ても女の子にしか見えないから事務係みたいなものかと思っていたけど、こんな力を持っているんだから人は見た目では判断できないよね。深沢君はそういえば部活もどこにも入っていないんだよね? 何か目標にしていることってあるの?」


 安川は急に話を変える。深沢は笑っているが、その色は少し困っている。


「その質問をされるのが一番返答に悩むんだよなぁ。目標かぁ… 何か持たないといけないと思いながら持てずにいるっていうのが現状なんだよね。何が自分に合っているのかなってね」


「ふ~ん。でも、運動神経も悪そうに見えないし、あのロボットを操って、でっかい怪獣を二人でやっつけたんだから機械にも詳しそうだし、何か勿体無い気もするけど」


「いや、あれはたまたま上手くやれただけのことで。操作もテレビゲームと変わらなかったから」


「ねえ、私も入っているんだけど、バドミントン部でも入ってみる? あ、生徒会も結構面白いよ」


 「う~ん」と唸って首を傾けて考える仕草をするが、深沢の腹の九割は自分には不相応だと決めつけている。


「安川さんって、見た目以上にアクティブな人だよね。そのバイタリティはちょっと尊敬するよ。バドミントンに生徒会か、俺には共に未踏の領域だな。でも、まあ、どちらにしても、この世界から上手く脱出できて、学校も元に戻ったら、の話になるんだけどね」



続きます

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