気負うほど活躍できない
島田の説得の甲斐あって羽田たち自分勝手な連中も桐生たち一行と共に塔へと向うことになる。だが数人、特に羽田は頑なに滋の結界の中へ入ることを拒み、武器も借りて桐生と同じように周囲に注意を払って、我こそが結界の中の生徒たちを守らんと意気込んでいる。プライドの高さとはいえ、これが分隊で羽田がその隊長で自分が部下なら、早死の覚悟をしなければならないと深沢は一人呆れた。そしてそう気を張っているときこそ、何事も羽田本人に都合よくいかないもので、弁慶人形の橋を去ってからは敵らしい敵が出てこない。羽田の睨みが利いて敵が怖気づいていると思うのは、さすがの本人でもありはしない。戦闘もなく四十人を引き連れての移動は課外授業と似たもので、この状態は彼には退屈仕切り。その機嫌もよくなる気配がなく、いっそう邪険になる。
こう敵も出てこず静かなものだと、桐生や滋には気が楽でスイスイと目的地まで歩を進められる。後にどんな面倒が負い被さってくるのか少し不安だが、分かれ道に差し掛かっても、選んだ道は蛇の道とはならず、これまた敵の気配すら感じずに容易く進めてしまう。そのうち塔へと一直線に繋がるトロッコを発見する。どうやら一行の運気は高いと見える。これを不運と思って不機嫌なのは羽田一人である。トロッコに乗るに当たり、一応番人としてモンスターが現れる。八つの首を持った高さ十メートルを超す大蛇である。このような巨大な相手では、羽田の活躍もほとんどない。放つ矢も俄か剣術も悉く通用しない。むしろ足手まといになって、危ういところを深沢の乗るロボットに助けられている。
「余計なお世話だ!」
「ああ、そう。そいつは失礼」
深沢のロボットは大蛇との格闘でも活躍する。桐生との連携も上手くこなし、滋の結界と共に防御の面でも一役買う。結界ごと潰そうと巨大な敵が跳ね上がって圧しかかって来た時には、機体で敵に体当たりをして阻止している。相手が火炎を吐いても身を挺し、トロッコを守った。その際にロボットは各所故障をして、機能不全となる。最後は桐生が大蛇にトドメを刺してしまうが、深沢の活躍を皆が称賛した。一人面白くない羽田は、
「俺が乗っていれば壊すこともなかった」
と、負け惜しみを言う。コクピットから降りてきた深沢は、
「俺一人で倒したわけじゃないから」
と、チラリと羽田を目にして、すぐにトロッコの発車準備を手伝いに先頭車両へと走って行った。
続きます




