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首謀者の名前(前編)

 観念してもう逃げようとはしないが、宗田は怯えて震え出して、今にも嘔吐しそうである。知っていることを白状するにはまだ少し気持ちを落ち着かせる必要があると見ると、ヴァイスは「あちら側」における彼の事務所の事務を担当するルイという名の黒猫に電話を掛ける。猫は猫でも博識、喋る、手足を器用に使える、おまけに能力も使えてと普通ではないその猫に一通りの報告を済ます。

「つまりそういうことなので、その方面から当たってもらえると助かるよ。仮にそれが外れたとしても、俺の考えではやはり別に協力者がいると思う。あの世界はそれぐらい珍しいものだった。どういう意図で作られたのかもわからないしね。これは勘だけど、初めて作ったようにも感じたよ。これを機にその能力の悪用が始まるようなら、やはりここで止めておいたほうがいいと俺は思う。仮に作った本人にそのつもりがなくても、レアな能力者に目をつける輩は多い。国家規模で戦争利用でもされても面倒だよ」


 こう言えば、電話の向こうで一言、二言返されて、


「確かにそうだね。まるでUWのようなことをやっているね。でも、俺たちの仕事もあいつらと根本的には何も変わらないだろ。では、そういうことで、よろしく」


 と、電話を片付ける。さて宗田を見下ろすが、この少年は膝を抱えて座り込んで、やはり震えるばかりである。歯軋りも激しい。


「君にいくつか質問をするよ。難しくない質問だと思うから、君も素直に答えてほしい。とりあえず、あの世界を作ったのは、君かい?」


 と、それでもヴァイスは問いかける。宗田はメガネの奥で血走った目をしてヴァイスを見上げる。そうして顔の筋を痙攣させながら小さく速く首を横に振る。


「僕じゃない、僕じゃないんです…」


「うん、多分そうだと思ってた。それじゃ、誰が作ったって言うんだい?」


「そ… それは… 僕も、詳しく知らなくて… 直接会った訳でも… ない、ですから…」


「会ったことがない? それはつまり、声だけで指示されたと、電話のように声だけで話したことがあると、もしくはメールやチャットだけでやり取りしたことがあると、そういうことかい?」


 宗田の首が今度は激しく幾度も縦に振られる。


「さ… 最初は、最初の接点は、ネットでの、書き込みからでした。メールを交換して、さ… 最終的には、で… 電話で、は、は、話すように…」


「姿は見ていないのかい?」


「は… はい、一度も… あ、でも、子供、子供でした、声が、子供のものでした」


「子供? 君も俺からすれば子供だと思うが…」


「いえ! 本当に、小学生くらいの、高い、男の子の声でした!」


 ここは声を張り上げて訴える。


「子供か… 子供ねぇ」



続きます

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