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ヴァイス、宗田を追う(後編)

「なんじゃ、あいつらは?」


「ヴァイス君、一から説明してもらえると有り難いんだけど…」


「一からはちょっと面倒ですね。村田さん、とりあえずはあなたの推測どおりで間違いないですよ」


「新しい空間を作る… それはやはり能力者によるものなのかい?」


「おそらく。ただ、確証もないですけどね。仕組みも不明。それを調べるために宮下さんはさっきから五月蠅かったわけで、いまも勝手に去っていたわけだけど、あなた方もこの件の調査をするなら、あの二人を追いかけていったほうが早いと思いますよ。ここにいてもしばらくは何も出てこないはず。もしくは、先ほど宮下さんが探していて、俺も探している、ある生徒の行方を追うか、ですね」


「その生徒というのは、能力者なのかい?」


「いや、見た限りその気配はなかったですね。首謀者に新しい世界の運営の一部を任されていた、といった感じです」


「宮下さんたちはどこへいったのか、見当はついているのかい?」


「ついています。使われていない学校のはずですよ。そこにパソコンがおいてあって、そこから発生した『穴』で俺たちはその新しい世界へと入りましたからね」


「う~ん、どちらも重要だね」


「俺は生徒のほうを追いますよ。彼の顔を一度見ていますから」


 村田は頭を垂れて自分たちはどうすべきか思案する。


「その生徒の追跡のほうは任せていいのかい?」


「はなから、そのつもりですよ」


「それで、誠司たちは無事なのかい?」


「無事ですね。彼らは彼らなりにあの世界からの脱出を試みていますよ。まだ、生徒も四十人くらい残っていますしね」


「よし、わかった。穂高さん、この場は田中さんたちに任せて、俺たちは宮下さんたちを追いかけましょう。そのパソコンを解析して誠司たちを救い出せるかもしれませんから」


「そうやな、あいつらに任せると人命救助もおろそかにして研究だけに走りそうやからな」


 村田たちは走って宮下を追いかける。それを見送って、ヴァイスはその場に屈むと、無数の足跡から、学校の裏手の山へと向う一つの足跡に注目する。


「田中さんたちも、一人だけ先に出てきた男子生徒を目にしていないんですよね?」


 と、迷彩服を着た田中に訊ねた。


「ええ、自分たちは生徒たちが一度に帰ってくるまで正門の辺りにいましたから」


「わかりました。ありがとうございます」


「手がかりが見つかったんですか?」


「ええ、一応。これから追います」


「我々も手伝いますか?」


「いえ、いまのところはこの場の対応と処理をお願いします。ただ、メガネをかけたひ弱そうな男子生徒が一人だけウロウロとしていた場合は確保しておいてください」


「わかりました。では、お気をつけて」


 田中と鈴木はヴァイスに敬礼して見送る。ヴァイスもまた一礼して静かに山の方へと駆け急ぐ。


 その足跡は山の奥まで続いている。奥へと入れば入るほど、くっきり残っている。山はそう高くなく、登ったと思えばすぐ下り、下りに入ると舗装道路に出る。山の土を拾ってアスファルトの道上にもしばらくは足跡が残っている。次第薄くなってそのうち目視不可能となると、ヴァイスは一つ全速力で坂を駆け下る。道中、欅の延びた枝の陰の下、側溝の蓋の上で蹲る男子生徒の姿を見つける。


「やあ、宗田君」


 名前を呼ばれて咄嗟に顔を上げたそいつは、やはり先ほどのロボットの彼である。前髪は汗で額に張り付いて、顔色が殊更青白い。


「あ… あなたは、ど… どうして…」


「逃げるならもっと遠くに逃げるんだったね。『穴』がすぐに塞がると思ったら大間違いだよ」


「ひぃぃぃ! こ、殺される!」


 宗田は悍ましさに顔を歪ませ、腰も抜けたか立ち上がることもできずに四つん這いで逃げようとする。容赦もなく前に立ち塞がるヴァイスは、


「さて、色々と詳しく聞かせてもらおうか」


 優しく問いかけるが、余計に宗田には恐ろしい。



続きます

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