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図書室での不思議(後編)

 数分後、桐生も呼んで、そこで起きた一連の出来事を説明する。出てきた結論は、高い確率で腕の人物こそが、この空間を作り上げた張本人である。


「『穴』の向こう側ってことは、単純に考えて、いま犯人は俺たちが住んでいた世界にいるってことだよな」


「うん。でも、あれだけ鮮やかに『穴』を出現させて消したりしたんだ、どこにでも出入りして、いまはこの世界の別のところに潜んでいるとも限らないよ」


「この世界が、そいつが作った世界で『穴』も自由自在なら、お前が言うこともありえない話じゃないな。腕が出てきたタイミングから考えて、おそらく相手はどこかで俺たちのことを監視しているに違いない。いま、この状況も含めてな。そうなると、ここで『穴』の出現を待っても、この辺りを調べても、あまり意味がないということになる。それにしても、子供の腕とはね…」


「うん、小学生くらいの… でも、極端に細い腕をした女の人ということも考えられなくもないかなぁ」


「はっきりしないな。まあ、子供がこんな世界を作れるとも信じがたいから、その女性っていう考え方のほうが、可能性が高いかもしれないな。どちらにしても、いまの俺たちには追いようがないけどね」


「ごめん。『穴』が出るなら誠司を待ってから本を置けばよかったね」


「まあ、それは仕方ない。さっきから言っているけど、相手は俺たちの行動を監視しているはずなんだ。俺が側にいたら、『穴』を出現させてまで、その本を取りにきたかどうか疑わしいよ。お前らだったから、ということも十分にありうる。敵は相当に頭がいいし、俺たちの力量も把握しつつあるだろうしね。ただ、ロボットのコクピットから大勢逃がせた点から考えて、ムラがあるというか、気まぐれというか、とにかく常にこの世界のすべてを監視しているとも考えにくい」


「相手は一人なのかな?」


「さあね。宗田とかいうロボットの少年のように協力者がいるくらいだ、一概に一人とも言えないけど、この世界を仕切っているのはそいつ一人のような気がするね」


「この世界はいったい何のために作られたんだろう? 僕にはいまいち、そのあたりがわからない」


 呟くように言って滋は物憂げに首を斜めに傾ける。


「やっぱり、ゲーム感覚なんじゃないんですか? 自分の世代をこういうのもアレですけど、俺たちの年頃には現実とヴァーチャルとの境界があやふやな人間は多いですからね」


 深沢が答えると、これには安川が頭を振って、


「ゲームにしてはちょっと趣味が悪い気がする。命がかかったゲームをただのゲーム感覚で、ただの享楽だけで作ったっていうなら幼稚よ」と言う。


「やっぱり、あの腕は子供のものだったのかなぁ?」


 言うだけ言うものの三人の疑念は結局晴れない。


「そんなものは犯人を捕まえて聞き出せば一発だろう。そのためにもさっさとこの世界から脱出するぞ」


 そう冷笑する桐生の顔こそが生意気な子供のように見える。老練幼稚の境は不思議である。



続きます

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